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本友

私は本を読むのが好きなのですが、
学生時分に大いにハマったのが有川ひろ(有川浩)作品。

初めて読んだのは、たしか、『塩の街』。

本を読む人の多い家庭で生まれた私。我が家には、1人1つ本棚があり、私と姉の本棚は廊下で隣り合わせに並んでいた。金欠なときや、積読がないときは、決まって姉の本棚から拝借していた私は、その日も姉の本棚を開き、なんとなく『塩の街』を手に取った。それが私と有川ひろさんとの出会い。


『塩の街』は、有川さんの自衛隊3部作のうちの1つで、大きな塩の塊が日本に落ちてきて、それを見た人は身体が塩化していき、塩の柱となって死んでいくという塩害で荒廃した日本が舞台。

なんだこの世界観。
最初は、自分の頭でイメージされている世界が、著者の描こうとしているものと一致しているのか不安を抱きながら読み進めた。

そして、気づけば貪るようにページをめくっていた。

なにしろ作中のメインキャラクターである元陸上自衛隊員の秋庭という男性がかっこよすぎたのだ。

そう、有川ひろ作品に出てくる男性は、とにかく素敵。

思春期の私は、有川ひろ作品にどハマりすることとなる。

クラスメイトたちが少女漫画を貸し借りしている中、私は無我夢中で有川ひろ作品を追いかけた。マンガと小説。形は違えど、年頃の女の子はその手のときめきに強い憧れを持つものなのである。

私は、お小遣いをやりくりしながら、時におじいちゃんに図書カードをおねだりしたりしながら、黙々とたった1人有川ひろさんの世界に沈んでいった。

そんななか、大学に進学して転機が訪れる。

サークル仲間の中に、私のように、有川ひろ作品をこよなく愛している女の子を発見したのだ。

それからというもの、私がまだ読んでいない作品を、彼女に勧められて読んだり、また逆に、私が彼女におすすめの作品を紹介したりするようになる。

休みの日や放課後、2人でおしゃれなカフェでランチをしたり、代々木公園でピクニックや昼寝をしたりしたあとは、決まって書店に立ち寄る私たち。

この本この前読んだ!結構よかったよ。
これ気になってる!
私も!
この作家さんの本読んだことある?
最近流行ってるよね
直木賞だって!
この小説、映画化するなら誰キャスティングする?
(ちなみに『塩の街』の秋庭はオダギリジョーだよね、という話で当時は大いに盛り上がった)

ひとしきり本にまつわる話をながら、店内をうろうろ歩き回り、本を買う日もあれば、買わない日もあった。



彼女とは、今でも1番の仲良しだ。
歳を重ねて私たちが読む本はうねうねと変化してきたけれど、彼女から勧められる本はやっぱり面白い。

ここ数年の私たちの中での大大大ヒットは
『傲慢と善良』(辻村深月)
『正欲』(朝井リョウ)

読んでから数年経った今でも、話している節々で、この2作の話が出てくる。

今Netflixで「ボーイフレンド」っていうゲイの人たちの恋愛リアリティ番組が流行ってて見てるんだけど、これもマイノリティの中のマジョリティなんだよね。

というように。


そういう繊細でディープなトピックを同じ目線で話してくれる彼女の存在は、間違いなく私を支えている。


人生のステージが変わってゆくごとに、友達もふるいにかけられてしまうけれど、彼女との読書談義だけは、守り抜いていきたい。


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