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【新刊試し読み】『ぶらり大阪 味な店めぐり』〈わたしの旅ブックス39〉|井上 理津子

関西出身のノンフィクションライター井上理津子さんの最新刊『ぶらり大阪 味な店めぐり』が4月13日(水)発売されたことを記念して、はじめにを公開します。


本書について

関西出身のノンフィクションライターである著者が、自ら歩き回って見つけたお気に入りの味な店を紹介。店主へのインタビューを通じて、その店の人気の秘密に迫る。
大阪を中心に、兵庫、京都、滋賀、奈良の67店舗を掲載。朝日新聞大阪本社版夕刊の人気連載『味な人』の中から、著者取材分をまとめた1冊。


試し読み

はじめに

 この本には、大阪を中心に、京都、滋賀、奈良、兵庫と関西各地をめぐり歩いて見つけた「おいしい」「安い」「感じいい」の拍子がそろった個人経営の小さな飲食店軒と、それぞれの名物メニューを紹介しています。すべて地元の人たちに愛されている店であり、メニューであり、いわゆるグルメガイドには載っていないものが多いのが特徴です。手にとってくださった人は、あら? それなのに、各店の扉ページに料理や店の写真がなく、なぜ人物写真なの? と思うんじゃないかなと思います。
 はい、この本は、敢えてそういう作りです。なぜなら、店もメニューも、作り手の心が宿ったものだから。良店にこの人あり。なぜなら、店もメニューも、作り手の心が宿ったものだから。良店にこの人あり。店に全力投球する人たちにスポットをあてて店探訪をした一人称の「味紀行」です。
  私は、かれこれ四半世紀、大阪でライターをしていました。下町酒場巡りや名物紹介の本も書いてきました。諸事情あって2010年にメイン拠点を東京に移しましたが、そうすると、大阪にどっぷりいた頃はさほど特別なことと思わなかった大阪もとい関西の魅力に気づくことになったのだから、勝手なものです。その一つが「おいしい」「安い」「感じいい」の店の多さです。生意気な言い方をすれば、場当たり的に入った店に「はずれ」が非常に少ない。東京の悪口は言いたくないですが、やはりそう思います。
 そのような中にあって、「もっと、もっと」と3拍子そろった店を見つけたくなってしまう。折も折、朝日新聞大阪本社版に「味な人」と題した欄を書かないかとお声かけいただいたのは2013年のことです。16年春の掲載分までは『関西かくし味』(ミシマ社)にまとまりましたので、この本は「人・店・味」紹介本の第2弾となります。
今回、さて本にと動き出したとき、新型コロナ禍となりました。とりわけ大阪が非常に厳しい状況に陥り、飲食店が大打撃を受けた時期が長かったのは、ご承知のとおりです。取材させていただいたあの店この店、大丈夫だろうかと気をもみましたが、問い合わせると「できることを精一杯やってがんばっているよー」「お客さんに励まされているよー」とおっしゃる店の多かったこと。負けてたまるか精神は、命をかけて培ってきた味への深い愛と、ある意味同義だと伝わるに十分でした。
 がんばれ大阪、負けるな関西。この本は、ウィズ・コロナの時代、そして(願わくば)アフター・コロナの時代を歩む飲食店への応援本であると同時に、多くの人たちに、関西の食文化を担う市井の味と料理人の心を知ってもらいたくて上梓します。
 このようなご時世だからこそ、近くのおいしい店でほっこりした時間を過ごそうじゃないですか(→関西の人へ)。関西に来たなら関西人の魂がめいっぱい篭った味を楽しもうじゃないですか(→他地の人へ)。
  この本を片手に、関西エリアの味をめぐる小さな旅にぜひともお出かけください。



目次

Ⅰやっぱ大阪はめちゃめちゃおいしい! 大阪編

ネスパ─コロペット(大阪市北区)/CHINA BISTRO imose─麻婆豆腐(大阪市北区)/入道─甘鯛の酒むし(大阪市北区)/らーめん伊藝本店─ラーメン(大阪市北区)/うなぎじん田─うな重(大阪市北区)/角打ち料理立ち呑み百足家─魚料理(大阪市北区)/中華食堂膳途洋々─中華粥(大阪市北区)/鮨処利久─寿司(大阪市北区)/山口の地酒ヤムヤム─長州鶏の粕汁鍋(大阪市北区)/みやび亭─鉄板料理・種盛り(大阪市北区)

コラム①青春のうどん

ボクらのキッチンーガーリックシュリンプ(大阪市西区)/まごころ料理 鷲見ー岐阜郷土料理・きのこ鍋(大阪市西区)/Dai!!ーパスタランチ(大阪市西区)/佳酒地鶏 辻田ー焼き鳥(大阪市西区)/う玄武 北店ーうなぎ・おひつむし(大阪市中央区)/欧風料理とワイン ル・アルジャンーニョッキ(大阪市中央区)/わら焼 宿酔ーカツオのタタキ(大阪市中央区)/かみなり亭ーかも鍋(大阪市中央区)/イタリア亭tappaー炙り明太子のしそベーゼ(大阪市浪速区)/フランス料理 大西亭ーフランス料理(大阪市福島区)

コラム②美味しい店の共通項

げんき食堂─天然海老入りげんきカレー(大阪市都島区)/サレガマ─カレー・シェフにおまかせセット(大阪市大正区)/グーニーズ─タコライス(大阪市天王寺区)/創作ローカーボダイニング凛─クラウドブレッドのピザ(大阪市天王寺区)/おばんざいはこべら─はこべら弁当(大阪市阿倍野区)/talo coffee─厚焼きたまごサンド(大阪市城東区)/ラテン居酒屋ソルーナ─ペルー料理・豚スペアリブの素揚げ(大阪市平野区)/お菓子のアトリエハンブルグ十三本店─ザッハトルテ(大阪市淀川区)/旨いもんやおるそ─フリット(大阪市西淀川区)/中華ダイニング茶々─五目あんかけ焼きそば(大阪市東淀川区)

コラム③よろしゅうおあがり

Organic Kitchen Anatelierーカラダに優しい7品のランチプレート(吹田市)/Sakura grillー緑黄色野菜のこだわりサラダ(豊中市)/焼肉たか橋─焼肉・極みランチ(豊中市)/かき峰─かきコース(池田市)/5+─イタリアン・おまかせランチコース(箕面市)/Rose Bleuーパンとピザ(箕面市)/味幸坊みなみ─のどぐろ煮付け(茨木市)/あした葉なかや─鴨うどん(高槻市)/オーガニック畑キッチン結─オーガニック料理・結御膳(堺市)

Ⅱ大阪以外にもおいしいもんあちこちにありま〜す!

京都・滋賀・奈良・兵庫編

京都
殿田食堂─たぬきうどん(京都市南区)/LA BARAKAービーフタジン(京都市下京区)/フレンチレストランブラン・ピエール─ハンバーグ(京都市中京区)/えいじ─カレーうどん(京都市左京区)/駱駝ー麻婆豆腐(京都市左京区)/㐂み家/豆かん(京都市左京区)/チャイナキッチン餃子王─水餃子(京都市山科区)/味亭─鮎御膳(京都市山科区)

滋賀
喜兵衛─近江郷土料理・喜兵衛膳(近江八幡市)/納屋孫─ステーキ重(東近江市)

奈良
創士庵ーきのこフルコース(生駒市)/大和薬食処 ならやま茶館ー薬膳・おまかせ御膳(奈良市)/和廣飯店ー餃子(奈良市)/Lunch & Afternoon Tea Hanaー一汁三菜ランチ(橿原市)/あすかの食卓─おまかせランチコース(明日香村)/奥明日香さらら─さらら膳(明日香村)

コラム④老夫婦の小さな旅

兵庫
焼肉のリッチ─焼肉定食(尼崎市)/CASARECCIOー平めんパスタ・キノコと自家製ソーセージのクリームソース(尼崎市)/お好み焼き ぼくのやーお好み焼き・ミックス大(西宮市)/清左衛門─おにぎり(西宮市)/シチニア食堂─おまかせコース(宝塚市)/シェヴー─フランス料理・ランチコース(芦屋市)/芦屋らーめん庵─もと醬油らーめん(芦屋市)/大西商店─かき氷・クリーム入り宇治ミルク金時(神戸市東灘区)/Café licht─スコーン(神戸市中央区)/みどり食堂─鯛のあら煮(明石市)/潯陽楼─麦とろセット(篠山市)/如月庵─デカンショうどん(篠山市)

おわりに
初出一覧


著者紹介

井上 理津子
1955年奈良市生まれ。フリーライター。長く暮らした大阪から2010年に東京に引っ越すも、大阪贔屓は揺るがない。人と町、および両者が織りなす文化を主テーマに執筆。著書に『さいごの色街 飛田』(筑摩書房/新潮文庫)、『葬送の仕事師たち』(新潮文庫)、『旅情酒場をゆく』(ちくま文庫)、『関西かくし味』(ミシマ社)、『絶滅危惧個人商店』(筑摩書房)などがある。

『ぶらり大阪 味な店めぐり』著/井上 理津子
【シリーズ】わたしの旅ブックス
【判型】B6変型判(173×114mm)
【ページ数】240ページ
【定価】本体1,320円(税込)
【ISBN】978-4-86311-331-2


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「わたしの旅ブックス」とは

“ 読む旅” という愉しみを提供する、がコンセプトの読み物シリーズ。さまざまな分野で活躍する方々が、自身の旅体験や旅スタイルを紹介し、人生を豊かに彩る旅の魅力を一人でも多くの人に伝えることをめざしている。ジャンルは紀行、エッセイ、ノンフィクションなど。