姿勢の発達を逃したら

武術研究家のモノノフです。姿勢を研究していくと最終的にぶつかるのが子育てです。そもそも姿勢を作っていくところから大事だからです。大人になってしまうと材料が出揃ってしまうので、今あるものの中で答えを見つけていかないといけません。子供だと材料から作ることができるのです。

ここで一つ問題が出てきます。姿勢の発育には妊娠期、子供目線で言うと胎児期の成長から意識しないといけません。それが過ぎている場合はどうするのか?と言うことです。大人では今ある身体をどう使うのかという問題になりますが、子供の場合はどうするのか。それは

発達をやり直す

のです。胎児期はお母さんが腹圧をかけて丸まらないといけませんでした。しかし、腹圧が弱く楕円な子宮で育った子供は腹直筋の左右が癒合していない状態で生まれたりします。これは取り返しがつかないのかというとそういうわけではありません。以前の投稿にも書いたようにお雛巻きをすればいいのです。後からでも丸まればいいのです。現代の子供はハイハイを飛ばすことが多いと言われています。それならハイハイをする遊びをすればいいのです。昔は雑巾掛けというハイハイを代償する運動がありましたが、最近はそういうことをしなくなりました。便利になって子供が動かなくなったのです。

武道も今と昔では最初にすることは違うと思います。まず、武道をするに差し支えのない身体を手に入れてから武道をしないといけないのです。スポーツもそうです。いきなり競技をさせるのではなく、スポーツをしていい身体を作ってからしていかないといけません。武道でもスポーツでも理にかなった身体の使い方をできるようになってからしないと、必ずケガをします。今風に言うとコーディネーショントレーニングと言うのでしょうが、本来はそれを小さい頃の遊びの中でしていかないといけないのです。

武道武術を推している僕ですが、子供にいい運動というのは個人的には『バレエ』だと思っています。バレーボールの方ではなくダンスの方の『バレエ』です。極真空手を創った大山倍達さんも『ダンサーとは喧嘩するな』と言っていたほどです。まぁ実際はバレエは戦うために鍛えているわけではないので、相手が相当やる気でない限り遅れを取ることはないとは思いますが、現代でダンサーはそれほど身体能力が高いのです。

さて、ダンサーの中でも僕はなぜ『バレエ』に注目したのでしょうか。それは『軸』の存在です。かなり明確に身体操作に組み込まれている上に、『軸』ができていないと次のステップに進めないようになっているのです。武道においても『軸』は大事なのですが、それを『バレエ』ほど明確に教えてはくれません。天才が意識せずできているか、練習の中で自分で気がつくしかないのです。武道は才能のないひとはある程度捨てていくシステムになっているのです。
『バレエ』は誰でもある程度できるようにプログラムが組まれていて、才能のあるものだけが、さらに上を目指せるようなシステムになっているのです。

さらに『バレエ』には鏡の前で延々と同じ行動を繰り返すということをするのです。これが非常に大事です。自分の身体は自分が思ったようには動いていません。僕自身かなり誤差があったように思います。『バレエ』はそれを徹底的に直すのです。自分の手がどこになるのか立ち方はどうなのかを延々と鏡の前でするのです。非常にいいことです。この誤差がなくなれば、どのスポーツをしても天才と言われるプレーヤーになれるでしょう。

僕が日本拳法をしていた頃、元Vリーガー(プロのバレーボール選手)だった方がおられました。身長は190cmオーバー、体格には非常に恵まれた方でした。しかし、格闘技は素人ですので、他のひとにも僕にもいいようにやられていました。僕はもったいないなぁこれだけの体格があったら無敵だろうと思っていたんですが、イマイチ上手く使えていませんでした。有志でやっているような道場でしたので、ちゃんと誰かが教えてくれるというのもなかったのも良くなかったと思います。
格闘技経験のある方はわかると思いますが、蹴りが棒蹴りというか全然スナップの効いていない蹴りだったのです。身長があり、筋肉も最上級でついているようなひとだったので、蹴りに対してアドバイスをしました。蹴り一つできればそこそこ戦えるだろうと。
「こうして、こうして、こういうところに意識してやってみてください。」と。「えっ?そうなの?」とか言いながらサンドバックを2、3発蹴ったんです。そうしたら「あっ!こういうことか!」とか「わかってきた。」とか言ったんです。そうするとサンドバックを蹴る音が最初は「ポス」とかぐらいだったのに「ドン!」とか「ドカン!」とか道場中のひとが振り返るような音を出すようになったのです。僕は真っ青になりました。『この2、3発でコツを掴んだの?』って思いました。これは僕の教え方が良かったのではありません。そのひとが圧倒的なセンスを持っていたのです。ちなみに僕が見た感じですが、僕が同じぐらい蹴れるようになるのに2、3ヶ月はサンドバックを蹴っていたように思います。僕の才能のなさも否めないですが、そのひとの才能も圧倒的だったと思います。多分バレーボールをしていたからバレーボールでプロだっただけで、仮に他のスポーツをしたとしてもトップクラスの結果を残していたでしょう。センスとか才能とはそういうものです。僕が自分の才能のなさにクラクラした出来事でした。

同じことをするにも感覚がしっかりしていると短期間で結果が出るのです。その方が効率がいいでしょう。子供にはそういう身体を持って欲しいと思います。

モノノフ




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