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オランダのSDGs

先日、日本の友人・同業者(展示会主催)が、

「日本ではSDGsって企業目標として取り上げられたり話題だけど、すごく硬い印象で、面白くなさそう。自分たちの展示会でもテーマとして取り上げてるけど、なんだかインスピレーションわかない。」

と語っていました。

オランダに住んでると、SDGs的な社会の動きは以前からすでに存在し、意識が広く浸透していく速度は増していたので、大きなシフトチェンジは感じませんでした。

様々な規制は確かに厳しくなっています。高速道路の最高速度はオフィスアワーには時速が130kmから100kmになったり(騒音が理由、テスラがバンバン走り、欧州の流通拠点のこの国で、これは結構な足かせになる)、建築でも2020年7月1日から、ほとんどエネルギーに依存しない建物しか新築は不可、環境に配慮した材料使用の徹底など、様々な取り組みは規制という形でも具体化しています。

同時にオランダ政府は「グリーンな経済成長」を支援しており、サステイナブルなソリューションを提案するような開発には、補助金制度などもありサポートしています。そんなわけで、実際この国は面白い会社がいっぱい生まれたりしていて、SDGs時代でも生き生き元気な人が多いのです。

インフラやイノベーションのセクションは好調(SDG 9)で世界のトップ3に入っていますし、水や衛生の分野も(SDG 6)も強い分野です。先ほど行われたラスベガスのスタートアップの世界的なイベントCES 2020では、50のスタートアップが出展し良い成果を出しました。Hydraloopというフィルターなしで家庭からの排水をリサイクルできるシステムを開発した会社は、今回のBest of Innovation Awardを受賞しています。

オランダには小さなデザインオフィスも多いのですが、2019年のデザインウィークでは、サステイナビリティーを大きく掲げたフラッグが立ち並び、時代のフォーカスが、もはや「トレンド感のある新製品の発表」より「いかにサステイナブルでサーキュラーな社会貢献のできる商品や仕組みを生み出すか」に、完全にフォーカスしている感じがありました。オランダ人のデザイナーたちかたはは「新製品を生み出し続けるデザイナーは悪だ、という雰囲気すら感じる」というコメントを耳にすることもあります。

そんな背景から、素材開発(SDG 12)はデザイナーが積極的に取り組んでいる分野です。

国土が小さく資源も少ないオランダは、もともと「色々と持ってない国」です。しかしだからこそ、干拓で国土を広げたり、言語を学び、他者を受け入れ、情報を集め、イノベーションを生み出す素地を作ってきた。

だから今のオランダにとっては、SDGsは企業努力的なものではなく、世界や社会全体がよくなるための目標であり、このことで生まれた多々の規制は厳しいが、大変なビジネスチャンスもある、と理解されています。

古くは多くの異教徒らが逃げ込んできて共存した「人権の国*」ですから、SDGsの掲げる17目標とは、あらかじめ親和性が高いんですね!

*人権の国と言いつつも奴隷貿易で栄えた背景もあります。奴隷貿易や植民地支配の過去に関しても、ここ数年国内で盛んに議論されているトピックです。
(トップの写真はオランダのスマートアグリ、トマト農家)


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