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【短編小説】妖艶 2

#短編小説 #現代小説 #妖艶 #ファンタジー #未来 #ルーン文字 #魔法 #ラノベ #量子力学 #双子 #姉弟 #魔法

毎月1日は小説の日という事で、
9月分は8月の「妖艶」の続編です。
仕事は相変わらず忙しく、
1週間は家事もやってたので、へとへと
と・・毎回書けない理由を並べている
完全な「へたれ」でございます。
前回のお話は

未来から来たパートナー<イメルダ>は
未来に帰ってどうなったのか?
無事に出産できたのか?
子供たちは成長できたのか?
その辺がポイントだったりしますかね。

今回のお話は約5000文字です。
本当は2,000文字か、
多くても3,000文字にする予定でしたが。
余計な事を書き過ぎたり。
説明が足りなかったり。
伝えるという事は、難しいですね。
今回もお時間のある時にお読みください。

今回のテーマ曲はなんとなくこれですね。
昔何かのアニメのテーマだったような・・
ではまた後程、
小説の世界へ行ってらっしゃいませ。

妖艶2

迷走

カフェ・ソルティガは公園の中に
隠れるように建っていた。
古民家を改造したカフェとして、
公園の一部であるかのように、
ひっそりと、しかし不思議な存在感を
発していた。
夜にはバーとして、お酒の提供もしている
ようだった。
表に出ている看板には、
魔女がほうきに乗ったイラストに
カフェ&バー
<カフェ・ソルティガ>
と書かれていた。
カフェ&バーの表示に、カフェ・ソルティガと
カフェを強調している所をみると
元々はカフェオンリーだったのかもしれない。

リチャードは研究室へ通う途中
たまたま立ち寄った公園でこの古民家を見つけた。
朝も昼も時間がないので、夜は時々
カフェ・ソルティガに寄るようになっていた。

「いらっしゃいませ」

明るい声が店に響いていた。

「あ、いつも来てくださる髭の・・」

店の店員はリチャードの顔は覚えているが
名前までは記憶できていないようだった。
顔と言うより、髭もじゃの外国人という
認識のようだった。

「リチャードさんどうも」

高根マスターが、すかさずフォローを入れて
カウンターを進めた。

夜の9時を回っているが、今日はお客さんが
あまりいなかった。
奥のテーブルに一組カップルが座っていた。

リチャードはジントニックのオーダーをした。

高根マスターは

「タンカレーしかないけどいいかね」

そう訪ねてきた。
リチャードは静かにうなづいた。
高根マスターは手慣れた手つきで
ジントニックを作った。

「めずらしいですね、ジントニックなんて」

「研究がうまくいかなくてね」

リチャードはポツリと言った。

「リチャードさん、お食事はもうすませましたか」

女性の店員が聞いてきた。
よく見ると、目がくりくりっとした
ツインテールの少女は、どこか妖艶な光を
放っていた。
けれど瞳の奥には、何か意味深いものを
感じていた。
それがまた、
彼女の妖艶さを引き出しているようにも見えた。

「夜も食事ができるのかい」

「ハイ、今日はオムライスならできます」

女性の店員は、そういうと明るく笑った。

「じゃーもらおうかな」

「かしこまりました・・・昭夫君オムライス一丁」

女性の店員がカウンターの奥にある厨房に声をかけた
この店には専門のコックがいるのかもしれない。


リチャードはジントニックを
ミストスタイルのボウモアに変えていた。
やがてオムライスが運ばれてきた。
中身はケチャップライスではないようだった。

シーフードのバターライスに
フワトロの卵焼きが食欲をそそる。
女性の定員は、自慢げにリチャードの前に
オムライスをセットした。

女性の店員は、大きな丸い目を輝かせて
リチャードを見ていた。
リチャードは一口オムライスをほうばった。

「うまいなこれ」

女性の店員は厨房へ向かって

「昭夫君美味しいって」

そうおおきな声で言った。
高根マスターもどこかほほ笑んでいるようだった。

気が付くと奥のテーブルにいたお客は帰っていた。

夜の11時

「浩子・・外の看板をCloseにしてくれ」

リチャードは店の店員がヒロコという
名前である事を知った。

「マスター、店じまいですよね?」

リチャードが聞くと

「いいさ、ゆっくり召し上がれ」

そう言ってほほ笑んだ。

リチャードはミストスタイルの
ボウモアを飲みながら
急いでオムライスをほうばった。

リチャードが食べ終えると、
高根マスターは、
ジンのロックを作って一口飲んだ。
そして厨房に

「昭夫、おまえもこっち来て飲もう」

そういった。

リチャードは気まずくなって席を立とうとした。
そんなリチャードを高根マスターは制した。
そして

「何か聞きたい事があるんだろ」

そうリチャードに向き直った。

リチャードはびっくりして、高根マスターを見た。

「なんで・・」

口からもれるような言葉に

「なんでだろうな、感みたいなものかな」

浩子と昭夫は奥のテーブルに座って
ビールを飲んでいた。
ちょうと2mはある額の前のテーブルに居た。
そこにはマリア像のポスターが貼ってあった。
裏はただのべニアのようだった。

リチャードは高根マスターに向き直った。
そして

「信じてもらえないかもしれないですけど」

そう前置きして話し出した。
なぜイメルダとの出来事を話す気になったのか
リチャードも不思議だった。
やがて少しずつ、記憶をたどるように話し出した。

量子力学の研究をしている事
未来からイメルダが来た事
子供を宿して未来へ帰った事
その時イメルダが残したルーン文字が刻まれた
黒水晶の事
水晶は肌身離さず持っている事
話終えると、ルーン文字を刻んだ3つの
黒水晶をカウンターの上に置いた。

気が付くと、浩子と昭夫もそれを覗き込んでいた。

「あ。フェイヒュー/スリザリス/サガスだ」

浩子がそこに刻まれた文字を呼んだ
リチャードはびっくりして浩子を見た。

浩子はニコニコしながら、2mはある額の方を指さして

「あそこにも刻まれているわ」

そういった。

2mの額の周りには、
ヒエログリフとルーン文字が刻まれている事に。
リチャードは気が付いていてた。
それを高根マスターに聞こうと思っていたところ
逆に聞かれてしまった形になった。

「リチャードさん、あれが気になっていたんですよね」

高根マスターがそう言って、浩子を見た。
浩子は少しうなづいた。
そして高根マスターは話し出した。

「リチャードさんが不思議だと思っている話を
 私達は不思議だとは思っていません。」


そういうと、今度は高根マスターが、
自分と浩子の話しをはじめた。
元々は300年前の魔族で、
浩子は魔女族のクイーンであった事。
ヒエログリフとルーン文字が刻まれた額は、
元々は鏡になっていて、
過去と現在を結ぶゲートになっていた事。
鏡は浩子が一度戻る時に割れてしまった事。
浩子を愛していた昭夫の想いが浩子を再びこの世に
蘇らせた事など。
マスターは、ジンのロックを飲みながら
ゆっくりと話した。

リチャードはこの不思議な空間の意味が
わかったような気がした。

「マスター、未来へは行けるのかな?」

そういうリチャードに

「過去の連続が今で、今の連続が未来だとすれば
 私達が300年前から現世に来れたように
 また現世から未来へ飛ぶこともできるかもしれない」


またジンを一口

「ただ、未来へいく術を私はしらないのだよ
 昭夫君が愛の力で浩子を引き寄せたように
 見えない力は働いているのかもしれないね
 リチャードさんがイメルダさんを思う気持ちが
 強ければ強い程、未来はすぐそこにあるのかも
 しれないね」

そう言って、浩子と昭夫を見た。

「確かな事は言えないけど、
 イメルダさんがルーン文字の詠唱で
 未来へ帰れたのなら、
 何か秘密があるかもしれないわね
 それと貴方の研究とも
 関係があるかもしれない」

浩子が口を挟んだ

高根マスターは目を閉じじっと考えている。

リチャードも何か懸命に考えている。
そして浩子のほうを向いて話し出した。

「確かに私が研究している量子力学は
 0は1であり0であり、1は0でありでもある。
 また0でも1でもないという事でもある。
 それはもしかすると、4次元空間を作り
 4次元空間から何処へでも飛べるという事も
 ありうるかもしれない」


「その0や1は、もしかすると魔法の詠唱に
 似ているのかもしれない。
 魔法陣が4次元空間だとすると納得がいくわ」


浩子が言った。

「マスターなんか古文書とかないの?
 ルーン文字で書かれた古文書」

「そんなものがあったら、とっくに見せているだろう」

たからかと高根マスターは笑った。

双子の姉弟

リチャードは相変わらず研究に没頭していた。
時々おとずれる、カフェ・ソルティガで
高根マスターや浩子や昭夫と話をするのが
心の救いだった。
秘密の情報を共有しているという特別感もあった。

その傍ら、ルーン文字についても調べていた。
24文字とブランクを組み合わせた25文字で
表現する事を考えれば、
アルファベットみたいなもので、
何かの呪文的要素、力学的要素が
成り立つのでないかと、
非科学的な発想もしていた時だった。
このルーン文字の水晶に
量子力学の0と1を組み合わせれば
何かが起きるかもしれないと、
試行錯誤を繰り返していた。
頭の中はいつもそんな計算式で
埋め尽くされていった。

リチャードはいつものように、寝るためだけに
自分の部屋に戻ってきた。
相変わらずベッドしかない部屋は、
殺風景のままだった。

リチャードが、ルーン文字の名前を
口に出して確認している時だった。

ベッドが突然光り出し
男女二人の若者が現れた。

年としては17歳か18歳くらいに見えた。
左右の目の色が違うオッドアイの二人もまた、
妖艶な眼差しをもっていた。

リチャードがそんな二人を見て
きょとんとしていると

「なんだ、おやじまだここに住んでいるんだな」

そういうとちょっと、だけ嬉しそうに笑った。
女性の方が男性を制して

「初めまして、おとうさん、私はアイ、そして
 こっちがルイ、貴方の子供達です。
 母がお世話になりました。」

そう言って、アイが頭を下げた。

「私の子供たち、アイとルイ」

「はい二人は二卵性の双子です」

アイが答えた。

感動の対面というやつとは程遠い
淡々としたあいさつだった。
それでも、リチャードは二人を抱きしめながら
涙が止まらなかった。
とめどなく流れる涙をどうする事もできす。
ただただ二人を抱きしめた。
やがて少しおちつきを取り戻したリチャードは

「イメルダはどうした」

そういうリチャードに

「イメルダ? あ、お母さんの事ね」

そういうとアイがまた説明を始めた。
イメルダは偽名である事。
同じ時代に自分が存在しても大丈夫なように、
こっちの世界にいる時は、
イメルダを名乗っていた事。
本当の名前は本庄麻衣子である事。
リチャードを気遣っての行動である事に、
リチャードはまた泣けてきた。

「おかあさんは捕まったは」

アイが続けて言った。

「おやじが死んで、研究を隠蔽したとして
 公安が連れていった。
 生きているかどうかわからない。
 俺たちをこっちに逃がすために、
 捕まったともいえる」

ルイもまた、淡々と状況を説明して、
まっすぐリチャードを見た。

リチャードもまっすぐ二人を見た。
二人の目は、イメルダとリチャードの
それぞれの目の色を
受け継いでいるかのように見えた。

「確認させてほしい、ルイとアイは
 あっちへ帰る術を持っているのか?」

「何回使えるかわからないけど、
 お母さんが最後に渡してくれた、
 この石があれば、多分帰れる。
 ただ同じ場所が限定。
 こちに来れたのは、
 たまたまお父さんが
 まだここに住んでいたから、
 向こうのアパートが
 取り壊されていたり、
 荒らされていたら、
 時空の狭間を彷徨う事になるわ」

アイきりりとした目でリチャードへ言った。

「わかった、おかあさんの所へ助けにいこう」

そう言うとアイとルイの表情が明るくなった。

「ちょっと待っててくれ」

そう言うとリチャードは洗面所へ入っていった。

15分後
洗面所から出てきたリチャードには
ひげが無かった。

今度はぽかんと見ている二人に

「私は向こうの世界では死んでいるんだろ
 そこへリチャードのまま行ったら怪しまれる
 私は別人として向こうへ行こう。
 名前は・・本庄雅人だ」


そう言ってガッツポーズをした。

「さぁ行こう。アイ、呪文を頼む」

3人は円陣を組んだ
アイが、呪文を唱えた
しかし、何も変化は起こらなかった。

30分後
リチャード達は、カフェ・ソルティガに居た。
高根マスターは何も言わなかった。
2mの額の前
ルーン文字が刻まれた元鏡の前に居た。
リチャードは黒水晶を出した。
近くで浩子が見守っていた。

そして、ルーン文字が刻まれた黒水晶に
自分のロザリオを重ねた。
アンクのロザリオには、ブラックダイヤが
はめられていた。
月あかりが、ブラックダイヤを通して
黒水晶に力を与えているかのように見えた。

「アイ、もう一度だ」

アイはうなづくと

「フェイヒュー/スリザリス/サガス」

そう言った。
戻れないかもしれない。
リチャードは一瞬そう思ったが、脳裏に
麻衣子の顔が浮かんだ。
まだ生きている。そう確信したリチャードは
麻衣子の所へ自分を誘うように祈った。

2mの額のヒエログリフとルーン文字は
やがて光出し、3人を飲み込んでいった。

「マスター、本当に転送されちゃった」

浩子はおどけてはいるが、驚いてはいなかった。

「おまえだってそうだったじゃないか」

昭夫が口を挟んだ。

「3人が、いや4人が幸せであれば、
 どの時代で生きる事になったとしても
 問題はないさ」


高根マスターがポツリと言った。
それは自分の人生を
重ねているかのような言葉だった。

今日も空には大きな月が出ていた。

「あっちの世界にも同じ月が出ているのかな」

ステンドグラスから差し込む月の光の中で
3人はリチャードの無事を祈っていた。

終わり

あとがき

いよいよリチャードがあっちの世界に乗り込みます。
二人の子供たちが居れば安心ですよね。
今回は「次元寿命」に登場した3人が
リチャードを助ける形となります。

本当は双子が迎えに来るしか、
考えてなかったのですが、
次元寿命の話を思い出し、マスターと浩子と昭夫に
出演してもらいました。
出演料請求されちゃうかな(笑)

次はイメルダ=本庄麻衣子を助けられるか?
こっちの世界へ戻れるのか?
それとも、高根マスターの言うように、
何処にいても家族一緒に暮らせれば
幸せなのか?
真の幸せとは何か?
歴史を変えてしまった歪は、
どんな形で起こるのか?

その辺がカギとなりますよね、きっと・・・
あーー優秀な秘書に・・校閲してほしい所ですが
叶わぬ夢を追いかけてもしかたなないので
コツコツと積み上げます。

気が向いたら、体力が許せば、
また続きを書きましょう。

本日も長文最後まで読んでいただき
ありがとうございます。
皆様に感謝いたします。

サポートいただいた方へ、いつもありがとうございます。あなたが幸せになるよう最大限の応援をさせていただきます。