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社長、社史なら漫画にしませんか?

僕はその当時知らないのだが、昭和の半ば頃、会社を大きくした経営者たちはこぞって社史を編纂した。共に会社を大きくした仲間たちと苦労を共有する上でも、新しく入ってきた社員に「会社の歴史(ストーリー)」を共有する上でも社史はとても機能したのだと思う。

最近、社史や創業者の自伝をあまり見なくなったのはバブル以降続いているどんよりと曇った空のような景気のせいと、最近の経営者がそもそも「社史の威力」を知らないせいではないかな?

ところで、僕は趣味のようにいろんな企業の「漫画の使い方」を収集している。その中で一番好きなのが「漫画でつくった社史」だ。どこがいいって、主人公(いまは偉くなった社長本人!)が漫画の中では未熟でイケてないのだ(笑)。想像してみてほしい。このnoteを読んでいる方は士業や経営者が多いので「かつての上司」「ご両親」を思い浮かべてほしい。その方の幼いイケてない時代を。簡単に想像できないのでは? だって、そんな時代の話、聞かされたことがないだろうから。

ところが「漫画でつくった社史」ではイケてない、社長になる前の未熟な青年に会えるのだ。彼が失敗を繰り返し、その結果つかんだ成功法則を漫画のストーリーの中で知ることができる。まるで疑似体験しているようなのだ。ある会社では不況に襲われたときの大量リストラまで隠さず描いていた。そのストーリーは入社を検討している大学生にどう映るだろう? この会社はリストラしてしまう会社と見えるだろうか? 否、きっと同じ過ちを繰り返してはいけないという宣言に映るだろうと僕は感じた。そこまで隠さず伝えてくれる会社なんだと好印象を持った。

漫画で描かれる青年は「現在の社長」と違い、大学生たちや若い従業員にとって「同世代の人間」だ。だから、しっかり言葉が心に届く。どんなに朝礼で平易に話しても、それは自分とは地続きではない「うちの偉い社長の話」だ。どんなに望んでも社長は若い頃に戻ることはできない。唯一残された方法が漫画の中にタイムスリップすることなのだ。

かくいう僕自身、自分のストーリーを漫画にしている。自己紹介代わりの短い漫画だが。だが、たった8ページの漫画でも「よく新保さんのことがわかりました」と言ってくださる。漫画恐るべし!

ちなみに、また身の回りの事例で恐縮だが、クライアントでかれこれ300ページ近くまで続いている「現在進行中の社史(←もはや歴史ではない。笑)を漫画」にしている会社がある。日本とアジアで展開する企業なので日本語と英語の2バージョンの漫画を毎月「発信」している。「発信」と書いたのは漫画を紙に印刷して配っていないからだ。その会社はデジタルブックで毎月「配信」している。

いまはテレビCMで漫画アプリを宣伝する時代なのだ。企業の漫画もデジタルで配信すればいい。ホームページにリンクを貼っておけば御社に就職したい学生が気軽にその社史を読んでくれる。人は物語を介して距離を縮める。そう「漫画でできた社史」は御社のファンを増やす武器になるのだ。

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