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「渋谷の星」 放送後記 #2


もう黒板とチョークの時代は終わった・・・
古い校舎の教室で、私は呆然と立ち尽くした・・・

7月15日(水)雨。

区報「しぶや区ニュース」の取材で渋谷区立笹塚中学校へ。コロナ禍で交通機関を避け、徒歩で訪問。玄関先で出迎えて下さった校長の駒﨑彰一(こまざき しょういち)先生は、とても和かで温かいお人柄。すぐさま2階の大教室に案内された。目の前には巨大なモニター画面があり、動画を観ながらICT教育のプレゼンテーション開始!取材と言うより、贅沢な授業だった。

ICT=Information and Communication Technology(情報通信技術)。

渋谷の区立小中学校では3年程前からICT教育を導入。生徒1人に付き1台のタブレットが与えられている。コロナ禍でオンライン授業が出来たのも、こうした下準備があったからだ。

タブレットで授業すると言う事は、紙の教科書が要らないに等しい。昭和生まれの私は「えっ?教科書に書き込めないじゃん!」と思うのだが、現代の中学生はどうしているのだろう?生徒会や学年集会もタブレットで。議題は全てその中に。ペーパーレス化、エコである。「おーい!紙回せ〜!」と叫んでいた時代が懐かしい。

他にもVR学習やドローンの授業も!


しかし、東京の全ての学校がそうなっている訳ではない。放送では区名を言えなかったが、1人1台のタブレットでオンライン授業を実践しているのは、渋谷区、千代田区、豊島区、文京区、港区、葛飾区の6区。1世帯1台のタブレットによるオンライン授業は、荒川区、江戸川区、北区、江東区、杉並区、台東区の6区が導入。他11区はオンライン授業自体が難しい(報道機関の調べによる)と言う現状だ。

8月4日・11日の「渋谷の星」は、このICT教育を特集。4日は笹塚中学校・駒﨑先生のプレゼンテーションを。ドローンの飛行音までお届けしている。ちなみに、駒﨑先生のお父様の職業はSE、お母様は教師だそう。「学びのイノベーター」と言われる由縁である。

11日は同校卒業生で渋谷区役所・広報コミュニケーション課職員、宇佐美 由衣(うさみ ゆい)さんをお迎えし、中学時代の思い出をたっぷりトーク。教育の進化に驚きを見せた。ちなみに宇佐美さんは、今年4月、一般企業から公務員に転職したばかり。その理由は「渋谷区が好きだから!」とキッパリ。放送中に伺うべきだったぁぁぁ!(反省)

放送直後に届いた駒﨑先生のメールには「素晴らしい編集をして頂きありがとうございます。今回の放送は生徒や保護者だけでなく、卒業生や地域の皆さんにもご恩返し出来たのではないかと感じます」と。素直に嬉しい。最高のご褒美を頂いた。ありがとうございます!!

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左)私 中)宇佐美 由衣さん 右)みりんちゃん



さて、放送では語れなかった思いをここに記す。

今回の特集番組には校歌が出て来る。宇佐美さんは懐かしそうに、誇らしげに歌っていた。私も小中学校の校歌を思い出してみた。が、中学はどうしても思い出せず、卒業アルバムをめくってみた。

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札幌市立信濃中学校、校歌。

おぉ!こんなのだったか(笑)。しかし、札幌の学校なのに、なぜ「信濃」?と当時から不思議に思っていたので、この機会に調べてみた。すると明治16年、長野県から開拓民が移住し、明治26年、同地に「信濃簡易教育所」を開所。その後、校名が変わり「信濃中」が誕生したようだ。

明治26年、信濃簡易教育所
明治29年、信濃尋常小学校
昭和22年、白石村信濃中学校
               (信濃小学校に併設)
昭和25年、札幌市立信濃中学校

校歌の「石狩の大地に立てば夢はるか」に開拓民の「夢」が垣間見える。「信濃にこめし父母の」とは、長野から移住した開拓民の事だったのだろう。当時は全く知らずに歌っていた(なぜ誰も教えてくれなかったのか!?)。ちなみに長野県には「信濃町立 信濃小中学校」が存在する。

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1980年頃の教室風景。当時のエピソードは、私がパーソナリティを務めるYouTube番組「Monochrome Rainbow」で。大好きだった先生を偲び語っている。


問題は小学校だ。
もう、ないのだ。
学校名も。
校歌も。
何もないのだ。

調べたところ、今年4月、統合され新設校「札幌市立 新札幌わかば小学校」に生まれ変わっていた。校歌は新曲に。120年の歴史が受け継がれていると言っても、学校名も校歌もない。私にとっては廃校同然である。卒業アルバムから校歌を・・・

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札幌市立上野幌小学校、校歌。

「サイロの屋根は美しく、牧場も近く牛の影」

この校歌を、今年の3月まで子供達が歌っていたとは!(苦笑)。いや、当時は見渡す限り草原で、牧場の牛がモーモーと鳴いていたのだ。しかし、既にあの頃の面影は全くない。どこまでも閑静な住宅地が広がっている。今の小学生はサイロを知っているだろうか?どんな屋根か解るだろうか?牧場はとっくに無くなり、牛や馬は1頭たりともいないのだ。この校歌を歌って母校の風景を、故郷を思い出せるだろうか?・・・そう思うと、校歌が新しくなるのも時流である。

1970年代、札幌市立上野幌小学校 正面玄関。

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時代は変わる。
街も変わる。
人も変わる。
教育も変わる。

駒﨑先生が仰った。「社会の常識に学校の常識が追い付き、追い越し、学校が社会の最先端の場であるよう学びの革新を引き起こしたい」と。

黒板とチョークのない時代が近い未来にやって来る。放課後の掃除当番はお掃除ロボに・・・黒板消しパンパン・・・あの懐かしい響きが消える日もそう遠くない。


渋谷のラジオ「渋谷の星」アーカイブ(試聴出来ます)ご利用下さい。



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