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【あいち2022】赤い森と青い雲@一宮市

(写真:旧一宮市立中央看護専門学校のエレベーター)

国際芸術祭あいち2022

7/30から10/10まで愛知県の県立美術館、一宮市、常滑市、名古屋市の有松地区を中心に開催される現代アートのイベント。様々なアーティストの作品がSTILL ALIVE(まだ生きている・生存している)《今、を生き抜くアートの力》をテーマに構成されており、中には愛知県各地で展開されたリサーチ活動の成果物として、愛知の文化や産業、歴史も踏まえた作品・アートプロジェクトの記録が公開されている。

8/19~22の4日間、県内各地の展示を見てきたので、つらつらと思ったこと、学んだことを書いてみる。

小杉大介
赤い森と青い雲

展示会場は一宮市内の旧一宮市立中央看護専門学校の校舎。その中の5階にある看護実習室。休場日は月曜日。

この会場は旧看護学校の建物をすべて使い、5階から順に降りていく形での鑑賞をお勧めされる。

8台ほどのベッドが置かれ、カーテンでゆるく仕切られている。ベッドのそばにはスピーカーが立てられ、人物の会話が聞こえる。液晶テレビも置かれ、聞こえてくる会話が英訳され映されている。
それぞれのスピーカーからは、それぞれ独立した内容が流れている。

という展示会場。

実は、この会場で初めて芸術祭ボランティアの方に声をかけられた。それはこの部屋の鑑賞を終えて作品キャプションを読んでいた時のこと。

「どうでしたか?この作品」

対話型の鑑賞を推奨している芸術祭らしく、気軽にスタッフに話しかけることもできるし、こうして話しかけられることもある。

正直難しかったので「難しいですね」と正直に伝えたが、それと同時に頭がぐるぐると回り、より作品について考えるモードに。なるほどこれが対話型鑑賞。

我々鑑賞者は、部屋のあちこちから聞こえる会話を認識しているが、どれも適度に耳に入らない。まぁまぁ心地よい距離感である。しかし、自らベッドに足を運んでそれぞれの会話を聞きに行くことになる。つまり、自分とあまり関係のない話をわざわざ覗き聞きしているということ。自分事にしようとしていること。他者の人生に関わろうとしていること。

病院を模した場所でカーテンをめくり、人と会いに行くという行為をするのは、看護師や医者である。その場にいる限り互いに関わるが、薄いカーテンで仕切られた向こうには個々の人生や生活がある。そこに入っていこうとするときに少し感じる申し訳なさのようなものは、これから看護師を目指す人がこの場で学んだ時にやはり感じるものなのだろうか。

彼は「痛みは(他者に)伝達可能か」という問いを立てて様々な手法で探求しているとのこと。(作品キャプションより)
医療従事者らのそうした心的な痛みや、広くは、容易に他者と関わることができるようになった一方で生じるプライベートエリアへの介入を、鑑賞者自らが動く仕組みを作ることで体験させ、気づかせる作品であると感じた。


ざっくりとそんなこと(もっと雑然とした内容)をスタッフの方にお話ししたら
「いい気付きですね」と。

ただ美しいだけではない現代アートは、作者のメッセージ性が特に強いと思う。展示室で黙って耽って見るだけではなく気付きを口に出し認識を深め、自分の目や頭(右脳も左脳も)を鍛えてゆくことが大事であると実感した時間だった。

国際芸術祭あいち2022リンク↓

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