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#055. 「トップガン」から学ぶ、職場で大切なこと.

(1) はじめに.

映画「トップガン マーヴェリック」を観てきました。

ネタバレしますと、飛行機で敵を倒したいけれど
いったいどう実現しようか、を表現した映画です。ストーリは、
直線的で分かりやすく、オーディエンスが「映画トップガン」に
求めているものや期待している内容を、そのまま形にした作品です。

作品中に描かれている要素に、ビジネスパーソンやビジネスシーン、
特にソフトウェア開発の現場に活用できる事例が
沢山ありましたので紹介いたします。


(2) プロジェクトのゴールを定義する.

会社組織には、大きな目標があります。多くの場合、売り上げや
収益、OIのような数値になるでしょう。目標を実現するために
一段階~二段階、具体化した単位が「プロジェクト」になります。

作中の例にしますと「3週間以内に敵施設を破壊する」が
プロジェクトのゴールになります。

まず業務ですので明確な期限を定めることが重要です。
また、その期限の設定が商業的に合理的であることが重要です。

もし作中で「明日までに敵施設を破壊しろ」の期日設定だったら
彼らは、真摯にプロジェクトに取り組むでしょうか。答えはNoです。
現実的ではない期日を設定することは、チームメンバーの
モチベーションや 達成意欲を阻害する要因になります。

モチベーションコントロールは、組織が取り組む永遠の課題の
一つと云えます。期日の設定が遠すぎると、本来ならもっと早く
対処完了な案件でも先延ばしされる。期限が近すぎると
そもそも無理!となってしまい、出来るものも出来なくなる。
多くのプロジェクトリーダが悩んでいると思います。


(3) ゴールを共有する.

プロジェクトに関わるチームメンバーの間にて
ゴールを共通認識できていることが重要になります。

作中、選抜メンバーは、「3週間以内に敵施設を破壊する」を
共通のゴールとして認識できています。

規模の大きなソフトウェア開発になると「自分が担当する機能」や
「自分が担当するコンポーネント」のことしか見ないメンバーや
時には、そういった中間管理職すら発生します。そのような
中間管理職は、存在意義がありませんので、可能早期に
プロジェクトから外れていただくことが重要になります。

「自分が管理職にいること」に固執する人間が、会社には、
一定数いるものです。しかしトキシック・パーソンを放置すると
他のメンバーに悪影響をもたらしますので、勇気を持って
外れていただきましょう。これは、上司の仕事になります。

また。ゴールを共有しただけでは、ダメです。全員が
ゴールについて納得していること、腹おちしていることが
重要になります。

映画ですと、敵施設を破壊するゴールに対して
・施設破壊ではなく、輸送ルートを封鎖すべき。
・施設破壊の前に、敵の武装の無力化をすべき。
・爆撃ではなく、中距離弾道ミサイルを撃ち込むべき。
・飛行機ではなく、地上から侵入して爆破すべき。
など、別のゴールや別手法も考えられます。

そういった状況でもメンバーは、敵施設の破壊を共有のゴールに
認識し、それを実現する方法として戦闘機で出撃する案に
合意しています。もし中距離弾道ミサイル案を主張するメンバーが
いれば、納得いくまで話し合います。この「話し合い」の
プロセスを放置するリーダや管理職は、思いのほか、多いものです。

話あっても合意頂けない場合はプロジェクトから外れて
いただく形になるかと考えます。場合によっては、退職です。

ただ、Yesパーソンだけのチームになってしまうもの危険です。
レビューの際に、建設的な指摘が出てこなくなる可能性が
高まるためです。ポジティブなリスク指摘や、代替案を提案して
くれるメンバーは、必要な存在です。また、査定の際に
印象だけでネガティブな評価を付与しないことが重要になります。

なんにせよ、ソフトウェア開発においても、ゴールの共通理解が
ブレると時間が進むにつれ、その乖離がどんどん大きくなります。
一定の閾値を超えるといわゆる「炎上」という状態になります。

初期段階で位相を合わせるや、新メンバーが加入したら
しっかり説明することが大切です。


(4) 保守期間の明確化.

ゴールの明確化の一部、とも言えます。ゴールを達成したあと
「いつまでこのプロジェクトが継続するか?」を明確にして、
チームメンバーの共通理解にしておくことが重要です。

今回は、敵施設の破壊がゴールですけれども、実際に出撃すれば
・成功する
・失敗する
のどちらかになります。成功するまでやり続けるのか、
失敗しても 一旦それでプロジェクトをいったんCloseするのか、
この点を明確にしないでスタートするプロジェクトが
ソフトウェア開発の現場では、実際、かなり多いと考えます。

セブンペイのようにリリース後、問題がみつかり、
潔くCloseしたような事例は、なかなか多くないです。

経営層がサンクコストと割り切れず、パッチを当てれば
どうにかなるだろう、と考え(≒思いたくて)場当たり的な処置を
進めた結果、経営観点だと利益もでない、
開発現場の観点だと終わりが無い、とlose-loseの状況に陥ります。

作品中ですと、成功しても、失敗しても、いったんプロジェクト
としては完了ですし、チームも解散になることがメンバーの
共通理解になっています。終点が明確だからこそ、人間は、
その終点までならやりきろう、とモチベーションを
維持することができるのです。
終わりを明確にするのは、プロジェクトに重要な項目です。


(5) トレーニング.

選抜メンバーは、業務の遂行にあたり十分な技術を持って
いません。そのため、技術習得のためにトレーニングを
受けられます。トレーニングの中で、発生しうるリスクの理解や、
バードストライクのような「想定内の想定外」に
対処する訓練も受ける形になります。

ソフトウェア開発の現場ですと、十分なトレーニングを
受けられない状態のまま、日々、業務に就かされるケースが
あります。昨今の開発現場は、希望退職などの施策を重ねた結果、
ベテラン層がいなくなっており、若手不足も深刻ながら
若手をレクチャできるレイヤーの不足も深刻になっています。

技術と経験が不足している……その理想と現実のギャップを
「問題」として しっかり受け止める。「問題」を解決するために
「トレーニングで身につける」の課題に変換し
素直に実行することは、職場としてありたい姿です。


(6) 実現性の明示.

困難なプロジェクトになると、「本当に実現できるのか?」と
メンバーは、不安になるものです。モチベーションが続かなそうになります。

山本五十六の有名な言葉に

「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、
 ほめてやらねば、人は動かじ。 話し合い、耳を傾け、
 承認し、任せてやらねば、人は育たず。」

があります。作中でマーヴェリックが見せた2分15秒の軌道は、
まさに「やってみせ」を体現したモデルケースにあたります。

「あぁ、本当にできるんだ」と納得すると人間は、沈みかけていた
自己効力感を再確認します。結果、困難な任務にもチャレンジし、
チャレンジしたからこその成功体験も得ることが出来ます。

単価が高くても、高いスキルを持つソフトウェアエンジニアを
プロジェクトに、数名、投入しておく意味や価値は、
こういった無形の部分に繋がります。

単位時間の単価にばかりとらわれ、経験のある優秀なエンジニアを
希望退職で切り捨て、単価の低い海外にソフトウェア開発を
外注してゆくことは、ソフトウェア開発において
必ずしも正解とならないのです。

また。本番を実行に移すにあたり、可能性を示した後のブリーフィングの
カットで示されているのは、「責任は、上司が取ります。」を
明確にすることの重要性です。

日本のソフトウェア開発ですと責任を取りたがらない管理職ばかりで
中間管理職の間で なすりつけあう、ボールを投げ合うだけで、
何も話が進まない場面に遭遇することが多々あります。
見習っていただきたいものです。

別の映画ですと「自分の上司が煉獄さんのような人ならいいのに」
と感じたビジネスパースンは、多数いらっしゃると思います。


(7) 業務から離れる時間の重要性.

メンバーが浜辺でレクリエーションのシーンがあります。
モニカ・バルバロの水着!(鼻息)のためのカットですけれども
本稿では、いったん横に置かせていただきます。

上官の一人は、「訓練が順調じゃないのに、すなわち、プロジェクトが
順調ではないのに 遊んでいる場合なのかね?」のニュアンスで
苦言を呈するワケです。

これは、ソフトウェア開発でいうと
「進捗が芳しくないから休日出勤でもするべきところだろ。
 まして、なんで進捗しないレクリエーションなんてするのか?」
というシチュエーションと合致します。

このシーンにおけるメッセージは、
 「Yes Sir。レクリエーションを中止して訓練をします」
の選択は、絶対ダメですヨ、ということです。

メンバーが、メンバーの持つ実力を100%発揮するコンディションを
維持するためには、適切な休息が必要になります。
進捗が遅延した状況なら仕事しろ、の考え方は、NGなのです。

また、メンバーは、この業務から離れたレクリエーションの
時間にて、相互の心理的安全性を高めることに成功しています。

心理的安全性と生産性との関係は、Googleの
プロジェクト・アリストテレスが有名です。心理的安全性や、
プロジェクト・アリストテレスといったキーワードにて
ネット検索いただけると沢山の事例がヒットするかと思いますので
ご興味持っていただけた場合、お手数ながらお調べください。


(8) リスペクトと多様性.

選抜チームは、男女混成で人種も様々です。そして誰一人
完全な人間は、いません。メンバーは、お互いの長所や
実績を知りつつ、同時に、お互いの短所も指摘しあいます。

短所を見てみぬフリをするのではなく、お互いがお互いに
不完全であることを初期段階から認めっていて、同時に、
同じ場所にいることと、同じプロジェクトに参加することを
容認しているのです。一人では、プロジェクトを完遂することが
できないと、全員が理解しているからです。

企業は、「リーダーシップのある人材」を求める傾向にあります。
しかし、各シーンでリーダシップを発揮するは、一人の方が
望ましいことが多々あることも表現されています。
役割が競合するとチームが分裂するのです。

重要なのは、「リーダが優れていて、フォロワーが劣っている」
ではないことです。リーダもマネージャも「役割」の一つでしか
ないのです。状況によって、フォロワーのポジションに
身を置き、その役割に徹することもチームとして任務を成すうえで
重要であることが描かれています。


(9) 結び.

本稿では、映画「トップガン マーヴェリック」を題材に
ビジネスシーンにおいても活用できたるスキルや
職場として大切にしたいことを 紹介させて頂きました。

私がお伝えさせていただきたかったことは、
ビジネスの世界で 今後もご活躍いただくに、
このような記事に惑わされることが無いようにして頂きたいこと、
そして ご自身の内なる意志や価値観に耳を傾けて
ご自身の人生を生きていただきたいこと、の2点になります。

最後まで お読みいただき ありがとうございます。

有限の人生のお時間をいただき, ありがとうございます. サポート頂けると 望外の僥倖にございます. いつの日も ご自愛くださいますよう.