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心理カウンセラーが小説を書いてみた。(近いうちにも小説家になろうにアップしたい)

捲き上る砂嵐。
彼女に誰も近づけない。
「私は特別なの。私にひれ伏しなさい。」
それはまるで、無力の知り方を突きつけられたようだった。

僕たちはこんなにも穏やかな街を知らない。
微かに香る幸せな匂い、ただ日常を会話している人々、木漏れ日が綺麗な並木を形成していく。
僕たちはこんなにも穏やかな街を知らない。
そんな場所で僕たちは日々を描いていた。

1人の少女。
寝息を立てる毛糸の小さな獣。
ゆっくりと流れる時間の中で、時を知る。
彼女に言葉はない。
ただ通り過ぎる人や鳥、季節を眺めているだけ。
全てを知っているのに全てを得られないのだ。
「…」
空腹とそれに似た夢の後味に目が覚める。

セロプリスマ。
この街にはたった1つの知られざる光がある。
誰も触れること見ることもできないそれは街の由来にもなっている。

僕は物心ついた時から光を一目見ることが、人生であまりに小さくあまりに大きな夢だ。

古くから伝わる絵画にはただ1人、そこに辿り着いた者が残したとされる伝説が描かれている。

街では絵本や小説としても広く知れ渡り、誰もが少なからず憧れは抱いていた。

けれど、その場所は明記されていない。
過去には探しにいく猛者達が現れたが、雰囲気のある洞窟や山、海底や空に近い丘にさえ、その眩しさは姿を現さなかった。
もはや架空と揶揄する学者達も現れ、本気で信じる者はほとんどいなかった。

どうしたらセロプリスマに出会えるだろう。
あらゆる可能性について考えてはみるものの、とても見当もつかなかった。

「ライト・ブライアント!また、上の空ですか!早くこの数式を解きなさい!!」

現実に嫌気がさしながら、窓に映る太陽がセロプリスマならどんなに素敵だろうかと途方にくれる。

幼なじみのトリー・ルージュは僕の唯一の理解者であり共に計画を練る同士である。

トリー「私は必ず光への鍵を持つ存在や場所があると思うの!」

ライト「けど、その存在を見つけられないんじゃ、スタート地点にも立てないよ…」

いつも前向きなトリーと少し弱気な僕はいつも、答えのない議論を交わしていた。

僕らは真反対。だけど見るべき先は同じだ。
彼女に着いていくように山や川、少し離れた海や洞窟に小さな冒険(遊び)に出る毎日だった。

その冒険(遊び)そのものにも楽しさは感じてはいたものの、終わりのない第一歩に少し悲しくもなっていた。

今日は朝日がとても心地よい。
そんなことを思いながら図書館に行く準備をしていた。

陽気な空だからいつもとは違う、道草をしながら歩いていた。

「…」


何か聞こえた?
空耳かな。鳴き声のような音が聞こえた気がしたんだけど。

「…キューン」

いや、間違いない!
仔犬かな…少し寂しそうに聞こえる。
探してみよう。

近くにいる様子はなく、どこかに隠れているのかと、辺りを探しまわってみた。

すると、仔犬でもなく仔猫でもなく、小鳥でもなく。

見たことのない、鮮やかな白色の小さな獣。
耳は長く、尻尾は7色に枝分かれしていた。
とても不思議な生き物だ。

とてつもなく惹かれた。
弱っているように見えたので保護することにした。

図書館に行く予定は切り上げ、一目散に家に帰った。

トリー「なんなの?この生き物は。」

ライト「道端で見つけたんだ。何だかとても惹かれたんだ。」

トリー「来ないと思ったら道草してたのね。眠っているのに可哀想じゃない。」

僕は一緒に調べ物をする予定だったトリーを呼んで、この子をどうするか話し合おうとしていた。

そんな時、浅い寝息を立てていた小さな獣は、ふっと目を開けた。

蒼く光る目。
僕らを不思議そうに見つめた。

あまりに可愛らしい姿に僕らは心を奪われた。

トリー「何なのこの子!この世の生き物とは思えないほど可愛い!」

ライト「気持ちはわかるけど、あまり大きな声を出すなよ。ほら、びっくりしているじゃないか。」

首を傾げている蒼眼の生物は僕らの会話を理解していない。

「…キューン」

初めて聞いた泣き声より少し高めの声で、僕らに訴えかける。

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