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私設心理相談オフィスの始め方(私の開業臨床)

こんにちは。心理臨床オフィスinemuriのつゆきです。いつもとは違い、同業者の方向けに文章を書きます。
動機のひとつは、今(2021年12月)、ツイッターの心理業界まわりで話題になっている「倫理」について思うところがあった、ということです。倫理は、心理療法が心理療法であるための大切なものですし、なによりも、クライアントさんたちを傷つけないために専門職として譲れないものです。

そして、私設心理相談という領域は、心理師・士の倫理が、特に必要であり、試される場であると私は考えます。周りの目が届きにくいこと、1人~数人のみで臨床を続けるうちに独自の感覚(倫理的な感覚)が優勢になる可能性があることなどからです。

倫理については、中野カウンセリングオフィスさんのツイートをご参照いただければと思います。大変わかりやすい記事です(当然、良質です)。

倫理のことも踏まえ、私の開業について書いていきます。

このページを読まれている方は、ぶっちゃけ開業について「同業者からの批判はないのですか」「冷やかしのような申し込みはあるのか」などの質問をされたいかもしれません。これは、私の倫理観から、ここでは語りません。ただ、数年前とは、私設心理相談の様相は変わってきていると思います。誰もが開業ができるからこそ、今一度、倫理を振り返らなければと思います。
そして、多くの同業者はこの考えに賛同してくださるでしょう。

はじめに

私はいくつかの偶然と、きっかけがあり、開業することになりました。2018年に開業し、3年半継続しています。
2021年12月現在、小さなオフィスを更に縮小経営しています。これには、COVID-19以外にも、理由があります。それは、「インボイス制」に関わることです。導入は決定していますが、反対運動などもあり、ぎりぎりまでどうなるかわからないと言われています。インボイス制が実際に始まれば、当オフィスのような小さな機関への影響がどの程度になのか、まだ想像しきれないところがあります。そのため、縮小したまま見守っている状態です。

最初に行ったこと

最初に行ったのは情報収集です。いくつかの私設心理相談機関に行き、お話を聞いてきました。
相談や個人SVのような形でお話を聞くこともありましたし、NPOなどの場合は会員になることで説明をしていただけることもありました。

そして、その後に、税理士さんに開業について相談をしました。

開業するために行ったこと・行わなかったこと

情報収集の結果、行ったことと行わなかったことがあります。

税理士さんに聞いたこと

(行ったこと)
・開業届を出す
・青色申告承認申告書を出す
・場所は2路線以上が交差する駅近くにする
・「児童専門」などの売り、独自性を作る
・無料で良いのでコーポレートサイトを作る

私設心理相談機関で聞いたこと

(行ったこと)
・最初に地域向けのセミナーを行う
・オフィス名義の口座を作る(信頼感の問題)

(行わなかったこと)
・オフィス名を商標登録する(後からでも良いと思ったため)
・SEO対策をする(少し行って力尽きました)
・EAP機関と提携する

あるコンサルタントの方に聞いたこと

2名の方に会ってお話を聞きました。

(行ったこと)
・ブログを書くこと
・独自性を出すこと(児童専門ということで、出したことにします)

(行わなかったこと)
・チケット制にする(5回来たら1回無料など)
・LINEなどのSNSで、相談を受ける
(チェック機能などがある行政のSNS相談などは大切なもので、あった方がよいと思いますが、小さな私設心理相談では難しいと思いました)
・カウンセラーのこれまでの人生について書く(何かを克服した等)
・申し込みボタンをamazonや楽天と同じ色にする
・お客様の声を載せる

上記については、心理師・士の専門性と倫理の観点から行いませんでした。お客様の声については、時代の流れを考えて検討をし続けていますが、載せていません。

あるWebデザイナーの友人に聞いたこと

(行ったこと)
・駅からオフィスまでの道順を、写真で見れるようにした
・申し込み後の流れをフローチャートにした

(話合いの結果、なしにしたこと)
・サイトに挨拶の動画を載せること。「こんにちは。心理師・士の○○です」のような10秒~20秒程度のもの。

迷いながら進めたこと

サイトの写真について

心理師・士の写真の掲載について。悩んだ末、トップページではないページに1枚だけ載せることにしました。

場所について

当オフィスのトップページに書きましたが、現在は、2つのレンタルスペースを借りて行っています。
私には元々、生活臨床の経歴があること、保育園・幼稚園に在籍しているけれども通所は難しいお子さんのプレイセラピーを園の1室を借りて行ったり、子育て支援拠点の1室で子育て相談を行ったりなどのアウトリーチ活動の経歴があること、児童相談所時代は各施設の1室を借りて措置児童の面接をさせていただいていた経歴があることなどから、固定オフィスを持たないことについての抵抗は少なかったです。今は、訪問医療に心理師・士が同行することもあると思います。

ただ、固定オフィスがないと、安全な心理療法が難しいクライアントの方も、いらっしゃいます。問い合わせの時点、初回の時点で、他機関などの紹介・案内を適切に行うことも専門性の1つと考えています。

また、私はあまり腕力に自信がありません。そのため、今後、固定オフィスを借りる場合も、マンションの1室ではなく、シェアオフィス(2人用オフィスなど)を使いたいと思っています。例えば、クライアントの方が体調不良になられた、災害が起きたなどの緊急時、ドアを開けたら誰かに声が届く場所で面接を行うことが、クライアントの方の安全を守ることになるのではと思うからです。

もしも、もう1度、「1から始める」となったら、数人で1部屋(シェアオフィス等)を借りて交代で使う、などの方法を取ったかもしれません。
現在、お子さんとの面接のときは、描画セットや粘土、玩具などを担いで移動することがあります。固定オフィスがあれば、プレイセラピーも実施できることは魅力です。
数人で交代に使えば、部屋が空いてしまう時間も最小限で済みます。昼はコーヒー屋さんで夜はBARのような営業体系は理に適っているように思うからです。

お客様の声の代わりに

クライアントさんではないけれど、心理師・士としての私の一面を知っている方に、紹介文を書いてもらいました。これは、今後、増やしていけれたらと思っています。もしも、書いて下さる方がいらっしゃればですが。

料金について

スーパーバイザーの提案を参考に決めました。
スライド制にしており、対面での面接の場合は、初回時にクライアントの方と相談しながら決めています。

開業した後に

「集客はしましたか」と質問をいただくことがあります。
開業した当初は、
・ブログを書く
・SNSを毎日更新する
などは、周知(集客)の方法のひとつとして行っていました。

近隣のクリニック、行政機関、療育機関、子育て支援機関、NPO、幼稚園、保育園、などに開業のお知らせは郵送しています。
また、開業のお知らせとともに、一般の方向けセミナーのお知らせも同封しました。

元々のつながりがない地域で開業をする場合、
営業を更にするのであれば、
・お手紙だけではなく、実際に挨拶まわりをする
・地域のイベントに参加する(実行委員などに立候補する)
なども、行って良いだろうと思います。

広告なども、特に打っていません。
facebook広告なども良いなと思うのですが、facebookページのいいねの数や更新頻度によっては、あまりクリックにつながらないと聞き、試さないまま3年が過ぎました。

パンフレットも作成していません。これは、いずれ作成したいと思っています。現在は、名刺のようなショップカードと呼ばれるカードのみ持っています。これも、ココナラというサービスで作成してもらいました。

細々したこと

・freee
という会計ソフトを使って、心理師・士自身で経理業務や確定申告などをしています。有料登録をすると、小さな質問をチャットですることができますので、確定申告の時期にはとても助かります。

また、サーバーは、
・エックスサーバー
を使っています。
初心者にもわかりやすいサーバーです。
info @ xxxx.com のようなメールアドレスの取得も可能になります。 

開業をしてみて

ここまで書いてきた、開業の初歩については、あくまでもinemuriについてです。規模、立場や経歴、土地、近隣機関との関係性などが違えば、また違ってくると思います。少しでも参考になれば幸いです。
また、オンラインカウンセリングについてなどは今回は省略しました。また機会があれば書いていこうと思います。

私設心理相談の魅力は多くあると思っています。そこでなければ出会えなかったクライアントの方、依頼される仕事などがあります。私設心理相談機関には、トラウマのセラピーが今後求められていくとも聞いています。そのように、私設心理相談だからこそ力を発揮できる分野もあると思います。

日本臨床心理士会のサイトには、私設心理相談について以下のように書かれています。

臨床心理士が、個人または組織で運営している心理相談機関です。自分のこと、家庭のこと、学校や職場のことなど、種々の心理的な悩みや課題の解決に向けてクライエントとともに取り組み、その人間的成長を支援します。
メールカウンセリング・訪問カウンセリングなどを実施しているところもあります。

一般社団法人 日本臨床心理士会 https://www.jsccp.jp/

私設心理相談は、支援をする機関です。
しかし、SNSにしろ、サイト運営にしろ、心理師・士のひとつひとつの決断が、クライアントの方を傷つけてしまう可能性を秘めています。
まずは、inemuriの心理師・士がというところではありますが、ひとりひとりが倫理を遵守し、支援のための私設心理相談を行っていけるように、同業者のみんなで支え合えたらと思っています。

差し出がましいようで、大変恐縮ですが。

多様な私設心理相談機関が開かれていることが、クライアントの方々の利益になりますように。開業をしたい同業のみなさんと連帯していけますように。願いを込めて。

サポート頂いたお金は、オフィスの維持に使っています。 ありがとうございます。