スペインのレストランで働く私のとある夏の一日〜料理して、耕して〜
いつの日か「2023年の夏ってスペインでどう過ごしてたんだっけ?」と思った時のために、今日というとある夏の一日のことを書き留めておこうと思う。
単にあれした、これした、というだけじゃなく、なんでもない一日にどんなことを思って生きていたのかを添えて。
10:00 働いている創作和食レストランに出勤
L'actic Forn(昔の/かつてのオーブン)という店名の通り、かつてはパン屋だった建物を改装したレストランだ。
この全く日本っぽくない店名と、都会でもない小さな町にあるということから初めて来るお客さんにはザ・スペイン料理の店と思われがちで、予約を取るときは「創作和食の店ですが大丈夫ですか?」と必ず聞かないといけない。
シェフ兼店長のセルジは毎朝大きなハグで迎えてくれる。基本キッチンはセルジと私、朝だけデザートの仕込みに来るパティシエ、イサの三人だ。
ハグの後には大体「これ食べてみて」とスプーンを差し出され、試作の試食が続く。今日の試作はわさびみそをかけた炙りうなぎ、茄子の焼き浸し添えだった。
"う、うまい・・・日本でご飯を食べてるみたいだ。よくぞ一度も日本に行ったことがないのにこのレベルに辿り着けるな。"と試食のたびに驚く。
試食の後は、どのお皿に盛るか、盛り方、どの薬味や葉っぱを添えるかを決めて、新作完成。納得しないときは、レシピを書き残して保留リストへ。
いざ今日の仕込みに取り掛かる。
・椎茸と昆布で出汁取り
・出汁とった後の椎茸昆布で佃煮作り
・魚の骨取り
・各種たれ作り
・お米炊き
・煎餅作り
・ふりかけ作り
などなど日によって様々だ。
仕込み中は大体作業がはかどるアップテンポな音楽を爆音で鳴らしている。ロック、パンク、ポップ、スカ、ファンクが多い。今日はロックの気分だったらしく、元バンドマンのセルジは手を止めてエアーギターをしながら頭を激しく振っている。
というのはよくある風景なので、その横で淡々とネギを切る。
今日は予約がいっぱいなので、フルスピードで準備。
昼12時、キッチンの仕込みが8割終わった頃、ホール担当のミケルがやってきた。お箸とスプーンをテーブルに並べていく。
13:30 ランチ営業スタート
スペインの一般的なランチタイムは14時〜16時と遅めだ。
今日はもう一人のホール担当ジョルディが休みなので、私もキッチンで料理を作りながらもホールに出て、オーダーを運ぶ。
レストランのメンバーはみんなカタルーニャ人、私が話せるのメンバーとの共通言語はスペイン語、たまに来る観光客用に英語も必要、そして自分用に日本語と4言語で食材やメニューを覚えて説明しないといけない。まぁとはいえ、コース料理の店なので覚える品数はまだ少ない方だ。
「3番テーブル、次は冷やし茶漬け4つ!6番は南蛮漬け3つ!」とホールがオーダーが叫ばれると、「Oido(オイド=確かに聞きました)!」と答えてお皿を完成させていく。
今日は帰り際にわざわざキッチンに立ち止まって、「どれも美味しかったよ!ありがとう!」と声をかけてくれた人が多く、嬉しいのと同時に安堵。
そして私自身もいつも味見をしながら本当においしいなと思っている。自分が心からおいしいと思えるレストランで働けているなんて幸せだ。
全てのオーダーを捌き終わったら、まかないの準備。今日はセルジが作ってくれたひよこ豆とトマトとメカジキのサラダ。私が作ったまかないの中では今のところ、唐揚げとチヂミが好評だ。
17:00 退勤、シエスタ
仕事を終えて店を出るとまさかの気温40度!先週からこじらせている風邪もあって、涼しくなる時間までおとなしく家で一休み。それにしてもここ数ヶ月毎月風邪を引いている・・・。
19:30 畑へ
今年は相方と住んでいる家の畑と、レストランの近所にあるセルジの父ちゃん宅の畑と二か所で畑をやっている。今日はセルジ父ちゃんの畑へ。
先週行けなかった間にトマトがジャングルと化している。草もボーボーだ・・・。
草抜きをしながらトマトジャングルを剪定(脇芽かき)。持ってきバジルの苗も植えた。
無心で作業していたらあっという間に2時間経っていて日が暮れていた。
かれこれここ8年くらい、自分で畑をしたり、農家さんのところへ週末お手伝いに行ったりと畑に関わってきたのだけれど、畑の手入れをしていると自然と"無心になれる、心が整ってゼロに戻れる"そんな部分があって続けているところが大きい。
昔誰かの言った「人間とばかり関わってると疲れるじゃん、だから自然とか畑に来るの」というそれにも当てはまるのかもしれない。
急いで赤くなったトマトと今年初の畑のきゅうりを収穫。
22:00 晩御飯
今日は一人ご飯なので、収穫したきゅうりでナムルと、さっとそうめんだけ。残ったきゅうりは明日レストランに持っていこう。
23:00 note書き
暑過ぎてほぼパンツ一丁でパソコンに向かっている。
なんで私、note書いてるんだろう?と最近よく思う。
きっと私の答えは二つ。
・その時その場所で思ったことを文字に残しておきたい
・私の暮らし、考えを読んで、「へぇ〜こんな奴もいるのか」とどこかの誰かの何かを始めてみる、変えてみるきっかけになったら嬉しいなと思うから
さてもう日付が変わろうとしているので、寝るとします。
明日も38度の猛暑のスペイン、セルベラより。
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