行動する国、フランス
https://jp.reuters.com/article/france-protests-poll-idJPKBN1O30S0
そういえば、フランスという国に興味をもったきっかけはデモだった。
初めての海外一人旅。憧れの南仏と、落ちこぼれの第二外国語と。
3月のコートダジュールは曇り。
閑散期の静けさと、グレーの海に拍子ぬけ。
そろそろ進められる、旅の歩み。
ニースを拠点に各駅停車の電車で、周辺の村を回る。
何も起こらないけど、一人異国にいるというだけで、相当ナーバスになる。今は何とかなるということを知っているけど、言葉が通じないということが、あの時は本当にこわかった。
何日目かにイタリアとの国境の街、マントンにふらりと宿泊する。
ようやく旅に馴染んできた体、緩んできた心。
夕食を終え、ホテルの部屋で何気なくテレビをつけて、絶句した。
パリで暴徒化する市民。叩き割られる電話ボックス、燃やされる車。
2000年代当初はまだ、携帯電話もインターネットも置いて旅する人も多かった。一人で地味な珍道中をやっている間、世の中では何が起こっていたのだろう。
帰国後に調べてみると、どうやらCPEという、若者の解雇を容易にする法案へ反対するデモだったらしい。
フランスではこうやって、自分たちの生活が脅かされかねない法案が持ち上がると、デモで意思表示をする。労働関連の要求ではスト。
ストは長引けば、実生活に支障が出るし、デモも大規模なものになれば、便乗して暴れだす者が現れたりする(私がテレビで目にしたのもそういう類い)。
でも概ね、社会の問題は自分たちの問題で、流されるままにせず、声をあげるべきと考えている。
仕事はほどほど、プライベート重視、夏冬二週間ずつのバカンスが元気の源。
フランス人はデモやらストやらで自分たちのライフスタイルを守ってきた。
一方、慢性的な高い失業率は社会不安の種でもある。
雇用創出のため、海外企業の誘致に力を入れる自治体は多い。
とある地方の首長は積極的に日本へ売り込みをかける。対する日本側はそっけない。
「フランス人は働かないし、規制が厳しいから、現地法人作るのにはハードルが高いんや」
週三十五時間労働、有給、その他労働者の権利もろもろのことを言っているのだろう。
「ええ、ですから大統領(マクロン)は規制緩和のために動いておられます」
国際的な競争力をつけるために、フランスでの働き方も世界標準に合わせていかねば、という考えが政治や産業界にはあるようだ。
しかし多くの市民は、そんな生活へのシフトチェンジは望んでいない。
そもそもパン屋に大工、医者弁護士、それに大統領だって夏冬二週間のバカンスで育ってきたのだから、日本みたく休みは盆と正月だけ、なんて働き方、誰もできないだろう。
では我々はどうだろうか?
声をあげないでいると、不況を言い訳にどんどん不利な方向へ追いやられる。
フルタイムで働いているのに楽にならない生活。成果は組織の利益にとって代わる。あってないような契約、不公平な取り決め…
そして、それよりも更に劣悪な状況で働かされるために、輸入されようとしている労働力。
その他生活の問題、環境問題、社会問題…
声を上げず、大人しくしていれば、誰かがいい方向へ導いてくれる、という時代はとっくに終わってしまった。
代表はもはや我々の代表でなく、彼ら自身の富の代表なのだ。
我々も、自分たちの生活のために、もっと主張してもいい気もするのだが。
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