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エッセイ

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#パリ

ノートルダム再建

2019年に火災にあったパリのノートルダム大聖堂の屋根組の再建工事が進んでいる、というニュースをみた。 ノートルダムといえば、石作りというイメージだったが、屋根の骨組みは約1200本の木材が使用されているというこで、意外。工法も800年前と同じ技術が使用されており、中世の技術が今にまで伝わっていたんだ、と感動してしまった。例えば接合は現代のような金属ボルトでなく、輪っか状の留め具に木の杭をうちこんでしめていく。日本の宮大工の技術みたいでおもしろい。(こちらのリンクからビデオ

鷗外とその家族① 鷗外の妻・志けは本当に悪妻だったのか?

鷗外の二番目の妻である志けは、明治の悪妻と呼ばれ、その娘の茉莉は大正・昭和の悪妻と世間に囁かれていた。 気性が大変激しく、鷗外の生家の人々、特に姑と対立することが多かった志けは、その気の強さがたたって、鷗外の死後は世間から孤立してしまう。悪評が広まったのはそのためかと思いきや、真相は、鷗外が自身の結婚生活を下敷きにし、嫁・姑の確執を描いた小説「半日」を発表、世間の人が鷗外夫人に対して悪妻のイメージを持ってしまった、というのがそもそもの原因らしい。 確かによく考えれば、いく

マルジェラを巡る冒険 #5

「マルジェラの社員はフランス料理店でマナー研修をうける」 就活中、色々な会社研究をしている時期に聞いた話で、真偽のほどや、本店での話なのか日本でもそうなのか等定かではないが、あながち嘘ではないのかもしれない… 相手との会話のうちにそんな風に思った。 どんな研修がなされているかはさておき、 販売達は非常によく教育されている。 それが率直な感想だ。 もしかしたら、研修制度などまるでなく、販売員達は初日から売り場に放置されていて、今回の対応も一個人の判断だったのかもしれな

マルジェラを巡る冒険 #4

電話で対応して下さった方を訪ねて、百貨店のマルジェラ売り場を訪れた。 私はずたぼろになった靴を見せながら、大変恐縮し、無理ならそのまま持ち帰りますので、と何度も告げた。応じてくれたのはまだ若い感じのよい女性で、「こんなに大切にご愛用いただいて」と、私の注文を熱心に聞いて、書き留めて下さった。 私は、デザインで一部パーツが始めからめくれていることを告げ、今後のダメージを防ぐため、元のデザインから変わることになるが、縫い合わせてほしいこと、その他修理の方から見て、補強や交換が必

マルジェラを巡る冒険 #3

もしその靴を年に数回はくだけの、超秘蔵っ子いっちょうら靴に留めておけば、今でも美品の状態が保たれていたのかもしれない。 でも靴は履いて歩くべき道具であり、人生の相棒なのだ。 それに何より、この靴はどんなスタイルにもとてもよく合う。 メンズシューズを基調にしているので、パンツススーツにはもちろんはバッチリだし、ジーパンを履いてもカジュアルになりすぎず、ピリリと決まる。そして甲のところがきゅっとしまってスラッとしたフォームをしているから、意外にもブラックドレスなどのフェミニンな

マルジェラを巡る冒険 #2

それは本当に美しい靴だった。 単に形がきれいとか、デザインがかわいいとかなら、他にも沢山あると思うのだが、それは流麗なフォルムと細やかな作りが見事に調和して、一粒のダイヤみたいな輝きを放っていた。 ドキドキしながら年が明けるのを待って、セールで半額近くになってから購入した。 箱から取り出し、改めてまじまじ眺めると、その仕事の細かさに息を飲み、どぎまぎさせられた。 元になっているメンズシューズの細かい技術や製法のことはわからないが、おそらくきちんとした靴はパーツも行程も多

マルジェラを巡る冒険 #1

それは完全なる一目ぼれだった。 吸い寄せられるようにしてその場へ向かっていったのだから、ほとんど運命といってもいいのかもしれない。 2008年か9年頃、長い電車通勤に疲れ果てていた。シックだけど重たいウールのコートから軽いダウンへ替え、足元もヒールではなく楽な靴を選ぶようになっていた。 まだ地震の起こる前、ヘルシーなスポーツテイストやアスレジャースタイルが、本格上陸する前夜だったから、靴下のまま履けるきれいめの、フラットな靴を探していた。 別にファッション愛好家でも、

フランソワーズのこと / 南青山児童相談所問題

季節の風が吹いた時、家で料理をしている時。 何かの拍子にふと何かの記憶が蘇ってきて、そこらをふわふわ舞っている。 そうやって、泡のように浮かび上がっては消えて行く、記憶と共に生きている。 昨日ふと思い出したのは、フランソワーズのこと。 南青山の児童相談所反対運動のニュースをネットで見た後、料理をしている最中。 フランソワーズのことは何度もエッセイで描こうとして、上手く描けたためしがない。彼女の他にも、フランスにいた時影響を受け、今でも仲良くしている女性が何人かいて、いつか

パリ 始発まえ、

去年の夏、朝イチでパリからマルセイユへ向かうため、始発のメトロを待っていた。 前の日に駅へ時刻を調べに行って、確か5:30過ぎが始発だったように思う。少し早く着いて5:00過ぎ、すると、電光掲示板には始発より早い5 :10と5:20の表示が。 構内には列車を待っている人がちらほら。 私は少し離れたところから、アフリカ系の若い男の三人組を見やった。アフリカ系といっても色々いる。彼らは、ヒョロっと背が高いタイプ。引き締まった筋肉がチョコレートブラウニーのように黒光りし、美しい