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【パリオリンピック2024】柔道モンゴル代表メンバー紹介

いよいよあと1ヶ月に迫ったパリオリンピック。僕は柔道モンゴル代表チームでトレーナーとして活動しており、このチームからは男女5名ずつ計10名の選手が出場します。そこで、この記事では少しでもみなさんに興味を持っていただけるようにざっと彼らの紹介をしていきます。

なお、2020年からこのチームに所属して選手たちと関わってきたものの、柔道経験としては素人同然です。選手たちについて「どの技が得意なのか」「どのような特徴を持っているのか」などは語ることができません。一方、この5年間公私をともに過ごしてきたので試合で見せる表情とは違った素性をお伝えし「コアな柔道ファンがよりその選手を応援したくなるような」また、「柔道をあまり知らない人がちょっと見てみようかな」と感じられるようなきっかけになれば幸いです。

本題前のプチ情報

モンゴル人の名前

ちなみに、モンゴル人の名前は姓にあたる部分が父親の名前となっています。たとえば有名な相撲選手の朝青龍さん、彼の名前は「ドルゴルスレン ダグワドルジ」であり、「ドルゴルスレン」は父の名で「ダグワドルジ」が彼の名です。したがって、朝青龍さんの子供は「ダグワドルジ 〇〇〇〇〇〇」となります。
国際大会では父親の名前が表記されるので、柔道をよく見ている人からしたらそちらの方が馴染み深いでしょう。しかし、彼らは基本的には下の名前で呼び合うため、この記事でも本人の名前やあだ名(呼称)も載せておきます。応援する時や実際に会った時はあだ名を呼んであげると彼らも喜ぶと思います。

過去の主な成績

-100kg ナイダン ツブシンバヤル
 2008年 北京オリンピック 金
 2012年 ロンドンオリンピック 銀

https://www.isee.mn/n/12406より引用

-57kg ドルゴルスレン スミヤ
 2016年 リオオリンピック 銀

https://ikon.mn/n/swuより引用

-81kg サイード モラエイ
 2021年 東京オリンピック 銀

https://x.gd/H1vR3より引用

-66kg ハシュバータル ツァガーンバータル
 2004年 アテネオリンピック 銅

https://news.mn/r/15277/より引用

-48kg ムンフバット ウランツェツェグ
 2021年 東京オリンピック 銅

https://news.mn/r/2480706/より引用

-73kg ツェンドオチル ツォグトバータル
 2021年 東京オリンピック 銅

https://itoim.mn/article/Qce47/29551より引用

女子メンバー

-48kg Bavuudorj Baasankhuu

バブードルジ バーサンフー(呼称 バスカ) 24歳

IJF公式サイトより引用 https://www.ijf.org/judoka/65319

ムルンと呼ばれるモンゴル北西の田舎出身。そこの町道場で柔道を習い始め、ずっと田舎暮らしをしていたそう。2020年のモンゴル全国大会で突如として頭角を表し、2021年10月のパリグランドスラムが彼女の国際大会デビュー戦。

特筆すべきは、今年4月と5月。2ヶ月の間にモンゴル全国大会、アジア選手権、ドゥシャンベグランドスラム、アブダビ世界選手権の4大会に出場し、その全てで優勝。モンゴル人で6人目の世界チャンピオンとなりました。今まさに勢いに乗っていて、このオリンピックでも最もメダルに期待がかかっている選手の一人。

そんな彼女は陽気なおしゃべり者で、田舎出身者ならではのあどけない言動が特徴的。ちなみに、彼氏は81kg級のGereltuya Bolor-Ochir。残念ながら、彼はオリンピック出場権を獲得できませんでしたが、彼の想いも背負って臨むことでしょう。

IJFの公式サイトに彼女のインタビュー記事(英語)が掲載されているので、興味がある方はそちらも見てみてください。

-52kg Lhagvasuren Sosorbaram

ラグワスレン ソソルバラム(呼称 ソスコ) 23歳

IJF公式サイトより引用 https://www.ijf.org/judoka/16819

多くモンゴル人はテキトーで雑な性格を持つ印象が強いですが、彼女はとても真面目なキャラ。普段の練習ではほとんどの選手が開始10分前とかに道場に現れ、練習後はすぐに着替えて帰ります。彼女はいつも30分以上前には着替えを済ませて一人で黙々とアップをし、練習後も残って打ち込みやトレーニングに勤しんでいます。

過去の代表的な成績としては2019年の世界ジュニア選手権で優勝し、その後も何度かグランドスラムでメダルを獲得。前回の東京オリンピックに続き、2回目のオリンピック出場となります。とても強豪が多い階級ですが、はたしてどうなるのか…

-57kg Lhhgvatogoo Enkhriilen

ラグワトゴー エンヘリーレン(呼称 エンキ) 25歳

IJF公式サイトより引用 https://www.ijf.org/judoka/25493

いつもヘラヘラしていて、自由奔放な性格。虫の死骸を見つけたら、それを拾って後輩を追いかけ回し、ケラケラと爆笑している光景をよくみます。

そんな彼女は世界選手権で過去に2度の銅メダルを獲得していて、今大会も期待大。減量失敗して大会に出られないことが何度かあったので、今回もそこが少し懸念されます…

-78kg Otgonbayar Khuslen

オトゴンバヤル フスレン(呼称 ジェニファー) 19歳

https://www.ijf.org/judoka/56520

両親はモンゴル人ですが、アメリカで生まれて高校生からは日本に柔道留学。そして、現在も日本の大学に在籍しているため、英語と日本語がペラペラ。チームのみんなからは通訳者としても重宝されている存在です。どうでもいい情報ですが、誕生日は僕と同じ10月26日で同じく酉年。

グランドスラムではまだ一度しか入賞していませんが、まだ若き19歳のさらなる飛躍に期待。

+78kg Amarsaikhan Adiyasuren

アマルサイハン アディヤスレン(呼称 アディヤ) 24歳

https://www.ijf.org/judoka/54432

音楽と踊りが大好きで、ダンス動画をSNSによく載せている彼女。いつもスピーカーを持ち歩いていて、練習時や遠征の移動時は爆音で音楽を流しているファンキーな人。

グランドスラムとアジア選手権ではそれぞれ2度の銀メダルを獲得。同階級の他国の選手と比べたらそこまで大きくないですが、どんな相手にも強気で真っ向からぶつかっていくのが特徴的。

男子メンバー

-60kg Enkhtaivan Ariunbold

エンフタイワン アリウンボルド(呼称 アリウカ)28歳

https://www.ijf.org/judoka/27365

面倒見がよくて、みんなの兄貴的存在。怪我の影響で東京オリンピックには出られず、若手に混じって地味できついトレーニングを率先して行い、声を張り上げてチームのみんなを鼓舞する姿は印象深かったです。

グランドスラムでは一度しかメダルを獲得したことがないですが、2022年の世界選手権と2023年マスターズで銀メダルを獲得した経験があり、ここぞという大舞台で魅せてくれる彼です。

-66kg Yondonperenrei Baskhuu

ヨンドンペレンレイ バスフー(呼称 バスフー) 30歳

https://www.ijf.org/judoka/16709

みんな大好きヨンドン。日本人の柔道ファンから最も愛されているモンゴル柔道家の一人。いつもおちゃらけていて、周りのみんなを笑わせているムードメーカーです。彼がいるといないでは、チーム全体の雰囲気が雲泥の差。

そんなキャラとは裏腹に、大会に出るとほぼ必ず決勝か3位決定戦まで勝ち残っている実力派。前回の東京オリンピックでは、阿部一二三選手と早い段階であたってしまい敢えなく予選敗退してしまいましたが、今回はシードで阿部選手とは別の山になることがほぼ確定。モンゴル男子勢の中で最も期待のかかっている選手です。

余談ですが、彼の名前である「バスフー」は日本語に訳すと「また息子」。その名前の由来を彼に聞いたところ、彼の家庭にはすでに2人の兄がいて、両親は娘が欲しかったのにまた男の子が生まれてしまったからそう名付けられたとのこと(実話)。

-73kg Batzaya Erdenebayar

バトザヤ エルデネバヤル(呼称 エリカ) 24歳

https://www.ijf.org/judoka/62445

運動センスが抜群で、バスケやサッカーなどの球技も得意とユーティリティープレーヤー。綺麗な肉体を持っており、上裸の写真をSNSによく載せています。本来はツェンドオチル ツォグトバータルが大陸枠での出場権を獲得していましたが、怪我を理由に参加辞退。それにより、エリカにその機会が巡ってきました。

2023年のトビリシグランドスラムではオリンピックチャンピオンかつ当時世界ランク1位であったジョージアのラシャ選手を準々決勝で破り、その勢いのまま優勝。ツェンドオチルが託したたすきを持って挑む彼に注目。

-100kg Batkhuyag Gonchigsuren

バトフヤグ ゴンチグスレン(呼称 ゴンチゴ) 24歳

https://www.ijf.org/judoka/45440

彼に対する個人の勝手なイメージは「ヒトの心を宿した怪物」。僕は仕事として数多くの選手たちを触ってきた中で、彼の肌や筋肉の質が最もいいと感じています。本人曰く、手入れは何もしていないとのことですが、すべすべもちもちの触感。

国際大会の成績としてはグランドスラムで金1・銀1・銅2つを獲得し、モンゴル国内ではモンゴル相撲の選手としても名を挙げています。ある意味、二刀流選手として期待されていて、個人的にも推しの一人。

+100kg Odkhuu Tsetsentsengel

オドフー ツェツェンツェンゲル(呼称 ボンボー) 24歳

https://www.ijf.org/judoka/16817

天理大学出身で日本語堪能。身体・態度ともに大きいやんちゃ坊主ですが、ときおり礼儀正しい姿も見られます。彼の父はかつてモンゴル相撲で名を馳せた選手であり、彼もまたその血を引き継いでいるのが窺えます。

グランドスラムで3度の金メダル獲得経験があるものの、ここ最近は不調気味。堂々とした態度とは裏腹に意外と緊張しい彼ですが、はたして今回は…

最後に

さて、今大会は7月27日~8月2日にかけて個人戦、8月3日に団体戦が行われます。

大会日程
7月27日(土) 女子-48kg 男子-60kg
7月28日(日) 女子-52kg 男子-66kg
7月29日(月) 女子-57kg 男子-73kg
7月30日(火) 女子-63kg 男子-81kg
7月31日(水) 女子-70kg 男子-90kg
8月1日(木) 女子-78kg 男子-100kg
8月2日(金) 女子+78kg 男子+100kg
8月3日(土) 男女混合団体戦(女子-57kg -70kg +70kg 男子-73kg -90kg +90kg)

現地に応援に行かれる方はもちろんのこと、日本でもテレビ中継があると思うので、その際はぜひモンゴルの選手たちも気にかけていただけると幸いです。

パリオリンピック内定選手公式発表時の集合写真(2024.06.28)

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。モンゴルの現地情報やトレーナー活動の記録を他のnote記事にもまとめているので、そちらも見てみてください。


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