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日本の公鋳貨幣

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日本が発行した「貨幣」の解説や、流通していた「貨幣」の歴史などをまとめた記事です。1から順に時系列順に解説しています。
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2021年12月の記事一覧

日本の公鋳貨幣30「室町幕府の撰銭令」

日本の公鋳貨幣30「室町幕府の撰銭令」

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自らの首を占める撰銭令を出した室町幕府

なんだかんだでこの記事も30本を超えてきました。今回から、16世紀の話へと本格的に移っていきます。

16世紀は、本格的な戦国時代に入った時代です。日本全土が一度バラバラとなり、そして新たな権力の誕生によって再統一されるまでの100年間と考えてよいでしょう。それまで東アジア間のみで行われていた日本の貿易のプレイヤーにヨーロッパ勢が加わってき

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日本の公鋳貨幣29「銭の購買力を保証するための撰銭」

日本の公鋳貨幣29「銭の購買力を保証するための撰銭」

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帰国できない大内義興の苦難

前回、大内氏が応仁の乱による外圧から撰銭令を出した実例を紹介しました。大内氏としては、応仁の乱の軍事物資の調達や、領内の貨幣不足の解消が目的です。戦時措置として出された緊急例なので、この撰銭令、応仁の乱が終結してしまうと何かしら問題が起こります。

延徳4(1492)年、大内家領内の豊前国で、突如大内氏は悪銭の通用を停止します。悪銭がどの種類の非基準銭

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日本の公鋳貨幣28「戦に左右される撰銭」

日本の公鋳貨幣28「戦に左右される撰銭」

前回はコチラ
https://note.com/money_of_japan/n/n063772a52e7b

はじめに
領民の都合により、地域ごとに異なる基準で始まった「撰銭」。その撰銭の基準を領主が定めなおす撰銭令は、領民の貨幣使用実態とかけ離れないように、社会慣行をベースにして、細則を追加していくという形をとっていました。つまり、本来なら撰銭令など定めなくても、領民が勝手に行う撰銭で経済は回

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