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日本の公鋳貨幣

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日本が発行した「貨幣」の解説や、流通していた「貨幣」の歴史などをまとめた記事です。1から順に時系列順に解説しています。
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2021年11月の記事一覧

日本の公鋳貨幣27「悪銭の利用開始」

日本の公鋳貨幣27「悪銭の利用開始」

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唯一の基準となった1枚=1文の価格設定第25回と第26回はどちらも15世紀の中期から後期にかけての話をしました。明国内の事情により銭の輸入量が減少したことと、幕府の弱体化で地方ごとに経済圏が誕生し、中央政府の統率を離れ地域の実情に応じた貨幣使用が必要となったことを描き来ました。

この2要素が重なったことにより、15世紀後半に「撰銭」が全国的に広まっていったわけですが、再三note

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日本の公鋳貨幣26「京経済の崩壊」

日本の公鋳貨幣26「京経済の崩壊」

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「嘉吉の乱」により守護が将軍に疑問を抱く「撰銭」文化の解説のため、中国の状況に多く紙幅を割いてしまいました。
話は一度日本に戻ります。日本で撰銭が始まる15世紀後半というと、第23回で解説した、徳政令を求める徳政一揆が頻発するようになった時代です。為政者である幕府にとって徳政の実施は、自らの権威のアピールと、一揆鎮圧軍の出動費倹約という一石二鳥の政策でした。このことは裏を返すと、軍

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日本の公鋳貨幣25『階層化する撰銭』

日本の公鋳貨幣25『階層化する撰銭』

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銭1枚=1文の原則に生じたヒビ日明貿易が始まり、正式に国交が結ばれた日明間でしたが、それでも銭の輸入量は期待するほど増えませんでした。宋銭の時と異なり、この時代は中国大陸でも中古銭の価格が上昇しておりました。中国人商人からすれば、わざわざ国外に売りに行かなくても中国で高く売れるわけですから、国内で売った方が輸送コストも抑えられますし地元の信頼も得られて一石二鳥なのです。

銭が輸入

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