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夏休みの思い出風景

夏休み。

子どもの頃は、ほぼ毎年、父の実家があった田舎に行っていた。

着く早々に、たいてい祖母が滞在時用のサンダルと本または雑誌を買ってくれたのをよく覚えている。
それは、お決まりのウェルカムキットのようなもので、とても楽しみにしていた。
徒歩で十分あるかどうかぐらいの本屋まで一緒に歩いて行って、それぞれ好きなものを選ばせてくれた。
夢中になって何度も読んだ。そこで新しい発見があったこともある。

観光スポットもあるものの、幼稚園児や小学校低学年では、そういう場所には連れて行かれなかった。
海で泳ぐか、学校のプールがそこの生徒以外にも開放されていたので、時折プールにも行った。

わりと近い親戚には同じぐらいの年代の子どもはいなかったものの、少し遠めの親戚の子どもにひとつ年上の男の子がいた。そのため、その子のところにも遊びに行ったものだ。
今思うに、頭が良くて礼儀正しいおとなしめな子だったように記憶する。言ってみれば、ドラえもんに出てくる出来杉くんのような。
一度、通知表を見せてもらったのだが、体育以外はほとんど5だった。
何をして遊んだかはっきりは覚えていない。
遊びに行ったから相手はしてくれたものの、本当は面倒に思わなかったかなぁと思わないでもない。
良い子だったので、そういう素振りは微塵も見せなかったけれど、その子と比べると、わたしのテンションは少し高く、うるさかったかもしれないなぁ、と。
夏限定の友だち。
どんな人になったかなぁと、時々ふと思う。

他の親戚の家にも滞在中はよく行った。
店をしていて、家の玄関はあるものの、店を通って自宅の方へ入っていく。その店内の青々しい独特の匂いがなんとなく好きだった。

田舎での夕食は早かった。
たいてい十七時頃か、早ければ十六時台だった。
よく焼き魚が出てきた。ご飯の風味が家で食べているものと異なったのは、水の違いだろうか。

滞在中に、花火大会や祭りが開かれる時もあった。
浴衣かサンドレスを着て、見に出た。
お揃いの浴衣を着て、頭に笠を被って踊りながら練り歩いて行く人々。その曲のつかみは今でも思い浮かべることはできる。ほんのつかみだけだけれど。

お墓参りにも足を運んだ。
墓地は徒歩で二十分ぐらいはかかっただろうか。
これは道のりは覚えていない。

そんな夏休みは、小学校中学年ぐらいまでだった。

その後十年以上の年月を経て、二十代半ばぐらいにその地を一度だけ再訪する。

行き帰りは母とふたり旅。
ターミナルからはじめてバスに乗った。
小一時間かけて到着。
二日ほど、二人で観光した。
おそらく、六、七回は訪れている地での、はじめての観光。出発前にガイドブックを購入し、行きたい場所をチェックして計画を立てた。行ったことのない場所をいくつも訪れる。もっとも、それまでは観光はしていなかったので、行ったことがない場所がほとんどなのだけれど。食事処までガイドブックを参考にした。

数日後に長期出張先からやって来た父と合流し、また別の場所を訪問。車で少し遠くまで足を伸ばす。
典型的な観光スポットも入れたが、おそらく地元の人はわざわざ行ったり参加しないだろう場所もあったので、そこで生まれ育った父にとっても目新しい体験だったかもしれない。

それから、わたしはその地を訪れていないのだが、驚くことに、遠く離れたイタリアでそこが出身地の人と知り合った。

それは、かなりの確率の偶然だと思われる。



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