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月曜日の図書館41-50

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#読書の秋2020

月曜日の図書館48 ランゲルハンス島で自習を

月曜日の図書館48 ランゲルハンス島で自習を

うごめいている気配が2階にいても伝わってくる。数秒後には、ここも人が押し寄せてごった返すことになるだろう。なるべく密にさせないよう、素早くさばかなくてはいけない。腰を低くして、両手を前に構えると、T野さんからカンフーみたい、と笑われた。
土日の開館直後は、席を確保しようと、大勢の人がカウンターめがけて突進してくる。相手が希望する席番号を言い終わるか終わらないかのうちに該当する席札を引っつかみ、よど

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月曜日の図書館47 焦らないでよく見つめること

月曜日の図書館47 焦らないでよく見つめること

落ち葉がすごい。毎年こんなに降り積もってたっけ?とびっくりするほど道路に落ち葉が敷きつめられている。図書館のいわれが書いてある石碑の上にもこんもりと積み上がっているのを、わたしはスマホで撮った。
道路の一画だけ、まるで重森三玲の庭みたいにぴっちりと掃除されているエリアがあって、どうしたかと思えばおじいさんが竹ぼうきで掃いているのだった。おじいさんは超絶スローな動きで、葉っぱをちりとりに集め、ごみ袋

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月曜日の図書館46 どこにでもあるスコーン

月曜日の図書館46 どこにでもあるスコーン

海鮮丼を食べながら本を読んでいた。確か梨木香歩さんの本だったと思う。
食べ進めてしばらくすると、カウンター越しに店主が話しかけてきた。ふだん何をして過ごしてるんですか。そうやって本ばっかり読んでるんですか。テレビとか何を観ますか。
家にテレビはない、と言うと、軽蔑したような表情になり、え、じゃあ××が離婚したことももしかして知らないんですか、とたたみかけてくる。有名人らしいが名前すら知らない。今世

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月曜日の図書館44 リサーチ

月曜日の図書館44 リサーチ

電話に出ると無言で切る人が一定数いる。用事がないのにかけてくる理由は何か?ひまなのか。いたずらなのか。自分が外の世界とつながっていることを確認したいのか。
お気に入りの職員がいて、その人に当たるまでかけつづけているのでは、という説もある。その日、無言電話は4回あって、わたしはダメ、T野さんもダメ、S村さんもダメ、わたしがもう一度出てやっぱりダメだった。相手はひとりとは限らず、しかも普通に話してくる

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月曜日の図書館42 まちづくり

月曜日の図書館42 まちづくり

広くてたくさん車線のある道路の、まんなかだけが薄いクリーム色に塗られている。バス専用のレーンであることを示しているのだ。レーンの側には一定間隔で停車場も設置してある。乗客は横断歩道をまんなかまで渡り、この停車場でバスを待つ。さながら路面電車のようだ。後ろも前も車がひゅんひゅん通り過ぎてゆく。
渋滞を避けて効率よく乗客を運ぶことが狙いで設置されたこの基幹バス構想は、しかし開発者が思い描いていたより世

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