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いちごいちえ #書もつ

休暇をとって過ごした平日の昼間、スーパーの見切り品が載っているワゴンの中に、きらきら輝く赤い実が・・苺でした。元の価格はわかりませんが「300円」と書かれた黄色いシールが貼られていたので、迷わずカゴに入れました。

品種は栃木県産の、とちおとめ。”とちおとめ”は僕が幼い頃からある品種のような気がします。と思って調べてみたら、1996年に発売開始された品種だそうです。現在、日本で一番多く栽培されているのだとか。

苺を使ったお菓子やイチゴジャム、かき氷の苺シロップ・・日本人にとって果物以上に馴染みの深い、甘い味・・それが苺ではないでしょうか。

毎週木曜日には、読んだ本のことを書いています。

ストロベリーライフ
荻原 浩

「悪い人は出てきませんから」と勧められたのは、古本とおしゃれな雑貨を扱うお店でした。昔ながらの団地の中にある商店街の一角に、場違いなようなしっくりくるような、飾り気のないお店。家族で立ち寄っては、普段は買わない単行本に手を伸ばすのです。

その店主の言葉通り・・悪い人は出てきませんでした。タイトルにもなっているストロベリーライフ・・苺生活・・主人公が、やむにやまれぬ事情から、苺農家として成長していく農業サクセスストーリーでした。

舞台は、これまた苺が有名な静岡県。富士山の雄大な景色を想像しながら、甘い苺に囲まれている姿を思うと、微笑ましくもありますが、農業という仕事の厳しさをこれでもかと見せつけられるのでした。

なんとなく知っているつもりだった農業のことも、苺の育て方のことも、主人公と一緒になって学べる作品でした。序盤、主人公が摘みたての苺を頬張って感激するシーンは、羨ましさが溢れました。

主人公は、子どもの父親として、また夫として、そして息子として、家族のことをずっと考えているのです。それでも、身体は一つしかないし、時間も限られている。そんな厳しい状況だけれど、日々の中に楽しみを見つけ、苺が育っていく喜びを読み手に共有してくれるのでした。

設定はなかなか緊張感のあるものですが、進みかたは面白おかしい農コメ小説(そんなジャンルない)で、どんどん先に進んでいきました。ちょいちょいギャグが挟まれていて、世代的にもわかるワードだったりして、思いがけず楽しかった。

すぐ近くに農業があるはずなのに、消費するばかり。作り手の苦労を、知ろうとしてこなかった僕には、刺激の多い作品でした。

実家と今の家族との関係性のリアルさには、とても緊張しますが、終盤までの緊張の連続からの、ラストシーンには・・・ぜひ読んでみてください。


見切り品だからと安い値段で買った苺・・それなりに美味しくて、家族みんなが喜んでくれたのですが、ちゃんとした値段で買うとか、いちご狩りに行くとか、農家さんの顔が見られること、苦労が知れることも、美味しく食べるためには大切なことかも知れない・・と思うのでした。




そして今日からのイベント。
偶然にしては、タイミングが良すぎる。


かわいいサムネイル、infocusさんの娘ちゃんの手かな?ありがとうございます!赤いいちご、なんだかワクワクしちゃうんですよね。

#推薦図書 #農業 #苺 #イチゴ #家族 #荻原浩




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