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夢の終わらせかた #創作大賞感想

あらすじから、グッと惹きつけられた。バンド結成の話ではなく、解散からのさらに年月が経った”大人”たちの話だという。夢を追ったはずの少年たちの姿を、大人になった自らが見つめる内省の物語だろうか。

音楽に限らず、例えば、中高生時代に追った夢がある、好きだったものがある、もしかしたら将来に繋がっていたものがある。そんなふうに、多くの読み手が似たような経験をしているかも知れない。

丸膝玲吾さんの「かつて僕らは」を読んだ。

“音楽をやっていた”

個人的にこのフレーズを聴いたら「軽音楽かな?」という印象だ。スタジオで練習したり、曲作りをしたり、ライブをしてお客さんを集めたり。

僕も学生時代はバンドにいた。とはいえ、ビッグバンドと呼ばれる、ジャズを演奏するための20人くらいのバンドだ。練習場所も発表の場も、大学のサークルだからこそ見つけられたのかもしれないが、バンドの人数が集めるだけでも大変だ。

そんな学生時代、持ち前のキャラクターで「もつバン」を結成したことがあった。(バンド名をそのまま記載)持ち前、というのは僕自身が動かなくても、誰かが面白がって動いてくれるというキャラクターのことだ。

何度か練習して、ライブもした。みんな各大学のバンドで活躍しているメンバーだったから、後輩たちからしたら豪華すぎるメンバーだった。ちやほやされて、嬉しかった(笑)

音楽を作ることは、いったいどんなことと似ているだろう。絵を描くことなのか、物語を書くことなのか。音階はおよそ12音で構成されていて、その組み合わせには限界もありそうなのに、無数に楽曲が存在している。

音階だけでなく、音色としての楽器や、ジャンルとしての形式などそれもまた数多く存在しているからだろう。

読み始めて、あぁこれはまだ今の話か、と気がつくのに時間がかかった。あらすじの部分で勝手に過去に戻っていたのだが、音楽を辞めた(バンドを辞めた)のに、また音楽をしているのは、それだけで胸が熱くなる。

趣味とも本気ともつかない高校生の時の淡くて熱い青春を読みたい、と思っていたがそれはまだ出てこなかった。なんと、未完だった。

本編とは別に、構想が貼り付けてあった。緻密なプロットで、これだけでかなり時間がかかっていることが伺える。すでに結末まで書いてあるのだけれど、実際に書き進めていったら、登場人物たちはもっと別の結末を選択するのではないか、とも思ってしまう。

昨年の創作大賞でも、未完で受賞していた作品があった。未完だからこそ、作品としての価値が決まっていない、という利点のようなものがあるかもしれないと、ふと思った。

臨場感のある描写は、読み手の頭の中ではちゃんと映像になっていた。




#創作大賞感想 #音楽 #未完 #記憶

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