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都内の、島へ

以前、引っ越し屋さんで働いていたとき、東京都の職員の方が見積もりの依頼をされました。はいはい、異動の時期ですからねーと話しを伺っていると、「引越し先は、八丈町なんです」と。

はち、じょう、まち?

東京にも町ってあるんだ・・と、ぼんやりしていたのですが、さらに驚くことに、町の前の地名もどこかで聞いたことがありました。もしや、島・・。

八丈島はれっきとした東京都。公務員も異動する、東京都内なのでした。調べてみると、飛行機で1時間ほどで行くことができる距離でしたが、まさか家財道具は飛行機では運べない(厳密には運べるけど、運ぶものを買ったほうが圧倒的に安いくらい運搬費用がかかる)ので、船便での引っ越しのプランを立てた覚えがあります。

そんな思い出の八丈島に、貯まったマイルで遊びに行ったときのことを。

季節は春、早朝の飛行機に乗って島へ飛びました。

八丈島は2つの山があり、ひとつは八丈富士と呼ばれていて、街の交差点には「富士登山口」という名前がついていました。僕はレンタカーで島を回っていましたが、すべての車が"品川"ナンバーでした。

品川ナンバー、ナンバープレート界では抜群の人気を誇ると聞いておりましたが、八丈島には品川ナンバーの軽トラがブイブイ言わせているのを散見しました。島には運転教習場もあるようでしたが、宿の人いわく、試験は「本土」なのだそうです。

同じ東京都とはいえ、本土と呼ぶのは島らしいなぁとほっこりしました。

宿のお父さんが写真が趣味らしく、八丈島から富士山を撮影したいと頑張っておられました(実際には、僕が行く前にそれは達成されていたようです)。宿のお母さんは、とても明るくて、毎食「くさや」を出してくれました。くさや、は島の名物で、一般的にはとてもキツイ匂いと言われるのですが、僕は言われるまで気が付きませんでした。

唐突ですが、僕は、旅先でのお風呂がとても好きなのです。日帰りでも何とかして入りたいと思うほど。

八丈島は火山系の島ということで、島内にいくつも温泉の町営銭湯がありました。夕日が落ちるのを見ながら入る露天風呂は最高でした。

たったの一泊二日の旅でしたが、人や食べ物に恵まれた時間は、島ならではの狭さからくる体験の濃さのように思います。

最後に、その年の開催が中止になってしまったフリージアまつりの会場に行きました。

会場といっても畑でしたが、まさに花畑そのものでした。誰も観光客がいない中で歩いていると、畑の方がとっても喜んでくださり、「枯れるだけだから、どんどんいいわよ!」とハサミを渡してくれました。

蕾の多い花を選び、土に近いところを切って。何色もあるから、夢中で抱えていたら、そんな様子をまた喜んでくれて、知らぬ間に別の畑の花も切ってくれて。

結局、両手で抱えるほどのフリージアの花束が出来上がり、飛行機で運ぶために新聞紙で完全に包まれました。リュックよりも大きな新聞包を抱えながら、空港へ。

その日は朝から天気が悪く、島は雲に包まれることが多く、3便あるうちの朝と昼の便は欠航していました。運良く夕方便は着陸出来て、無事に帰れました。

実はこの旅をしたのは、東日本大震災が起きてから1ヶ月たったくらいの時期でした。だから、フリージアまつりが中止になっていたのです。島のあちこちで観光客はとても珍しがられました。

記事を書いていて、「また来てね!」と皆さんから声をかけられたのを思い出しました。

僕は都民だけど、なかなか行けない都内の島へ、また行きたい。


花を使ったサムネイル、意外とシックでカッコいい。infocus📷さんの作品には、僕も気づかなかった「文章の肝」みたいなのが表されていて、いつも感心させられます。ありがとうございました!

#旅 #島 #八丈島 #ひとり旅 #やさしさにふれて

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