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白井千遥のクリエイティブワイドショー /2020年7・8月篇

こんにちは、コピーライターの白井千遥です。
クリエイティブ界隈の出来事で私が気になった話題を、折々にまとめていく『白井千遥のクリエイティブワイドショー』、今回も2ヶ月をまとめて振り返っていきます。例によって 時事ネタを鋭くぶった斬る!というわけでは決してなく、コピーライター的な視点を交えながらゆるゆると綴っていきます。お茶の間で、ワイドショーを眺めるような感覚で、お付き合いいただければ幸いです。

さて、2020年7・8月で私が気になったのは、

・ソニーミュージック×JYPの合同オーディション・プロジェクト「Nizi Project」
・Amazon JapanのTVCM「Amazonで働くということ」
・TikTokのキャンペーン「meet your X きみが次に好きなもの。」

の、3つです。それでは順番に、いきましょう。

Story is King.
ソニーミュージック×JYPの合同オーディション・プロジェクト「Nizi Project」

NiziU オフィシャルサイト
https://niziu.com/s/n123/?ima=0650

はじめてのことかもしれません。韓国発のコンテンツにしっかりと触れ、ハマってしまったのは。
それが、ソニーミュージック×JYPの合同オーディション・プロジェクト「Nizi Project」。日本人の十代の女の子たちが、世界的音楽プロデューサーであるJ.Y.Park(小室哲哉というより、つんくっぽい)さんの下でデビューするメンバーの一員となるためのオーディションを重ねていくリアルドキュメント。自分自身が十代の頃なんて自分のいいところも悪いところもまるでわかっていなかったのに、画面の中の彼女たちは泣いたり、悩んだりしながら、自らの個性と向き合っていく。その姿に胸を打たれ、まるでお父さんのような気持ちで最終回を迎え、メンバーに選ばれた9人に心からの拍手を送っていました。今では犬の散歩の途中に彼女たちのプレデビュー曲『Make you happy』を口笛で吹くくらい、NiziUおじさんになっています。

そして、改めて思ったのは「やはりこの時代において、ストーリーは強い」ということ。彼女たちが同じ曲を持ってデビューを果たしたとしても、デビューに至るまでの過程を知らなかったとしたら、果たして私はここまでの応援をしていたであろうか。数多あるK-POP、J-POPの洪水の中で、記憶に止めることすら難しかったかもしれません。

オーディション番組、というフォーマットは、ASAYANを例に挙げるまでもなく、決して珍しいコンテンツではありません。しかし、どうでしょう。かつてのオーディション番組が核としていたのは挑戦者同士の対決、誰と誰がライバルで、どのように勝ち残っていくのか。よもすればプロレス的な対立構造に重きが置かれていたように思います。

しかし、この「Nizi Project」が描いたのは、十代の女の子たちの成長物語。デビューメンバーを掴み取るという明確なゴールを提示しつつも、彼女たちが自分自身と向き合い、彼女たちさえ気づいていなかった魅力を開花させていくことにフォーカスが当てられていました。そしてそこに多くの共感を集められたからこそ、このプロジェクトは大きな成功を収めた。マーケティングにおけるストーリーテリングの重要性を語るには紙幅が足りませんが、人々(消費者)の心の深い場所で見事につながった「Nizi Project」に星3つです。

※ちなみに「Nizi Project」メンバーの中では、私はプロデューサーのJ.Y.Parkさん推しです。オーディションメンバーに語りかける言葉の数々は、どれも深い。ぜひ餅ゴリ語録を出版希望です。

続Story is King.
Amazon JapanのTVCM「Amazonで働くということ」

人々(消費者)と深くリンクするには、ストーリーの力を借りることが有効。そのことは上で触れた通りですが、もうひとつ、その好例とも言えるTVCMが最近流れていたのでご紹介をさせてください。

Amazonで働くということ(60秒CM)

入荷担当の方の補助をやっております。野中勝といいます。
私の好きな言葉は
「毎日が勉強 毎日が青春」。
仕事も覚えられて、頭の訓練と足の訓練と
一石二鳥だなと思っております。
カスタマーの皆さんは自宅待機をしていると、
お待ちになっている商品を絶対に遅らせてはならない。
せめて必需品だけでもお届けできるように頑張ってるわけです。
私がこの年齢で現在社会の一員として
貢献しているというように思います。
Amazonのおかげで、毎日が充実しております。

(スーパー)
他の従業員たちのお話はこちらでご覧ください。
blog.aboutamazon.jp/work

(ロゴ)
Amazon
松井章雄です。
メンテナンスチームをリードするっていうのが主な仕事になります。
1月、2月に比べて先月の出荷量は多くなってますので
必要とされている仕事であるということは痛感してますし
お客様からの感謝のメッセージっていうのは、励みにもなります。
娘は6歳です。
Amazonがより多くのお客様に商品を届けているというニュースを見ると、
ああ、ここがパパの働いている会社だというところで
誇りに思ってくれているというふうに聞いています。
Amazonでは自分自身の成長と
チームメンバーの成長過程を一緒に見られるので
私は非常にこの会社生活を楽しく過ごしています。

(スーパー)
他の従業員たちのお話はこちらでご覧ください。
blog.aboutamazon.jp/work

(ロゴ)
Amazon

Amazonで働くということを、実際のスタッフの方のストーリーに乗せて伝える。表現も非常にシンプルで、ふつうのひとが、ふつうの言葉で、いつもの場所で語るだけ。そのシンプルさが伝えるべきストーリーを引き立てることに大きな効果を与えているように感じます。

今、広告やプロモーション、キャンペーンの文脈ではファクト(事実)の重要性が叫ばれていますが、現場にいるひとの声もまた、紛れもないファクト。今回のAmazonのTVCMは、そんなファクトと、ストーリーを巧みに組み合わせたお手本だと思います。

政治的なことは横に置きまして、
TikTokのキャンペーン「meet your X きみが次に好きなもの。」

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最後はこの2020年7-8月期に私が目にしたコピーの中で、なるほどなあと膝を打ったもの。

きみが次に好きなもの。

なるほどなあ、そうきましたか。TikTokというプラットフォームを見事に言い当てている、そんなふうに感じました。ニュースサイト、その他のSNSが「今」を取り扱う中で、TikTokは「次」と出会える場所。飽和状態にあるSNS、動画プラットフォームの中において、独自のポジションを作り出し、見事に収めてみせた今回の広告。米中の政治的な狭間で微妙な立場に置かれているTikTokのこの先も含めて、非常に気になったクリエイティブでございました。

それでは、また次回。

ということで、今回のクリエイティブワイドショーは、このあたりでお開き。取り上げて欲しい話題などありましたら、どうぞお気軽にご連絡ください。

残暑厳しい折、くれぐれもご自愛を!そして素敵なクリエイティブライフを!サイナラ!

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