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「まだみんなと野球がしたい」

2010年7月 長崎県大会予選
本気で甲子園を目指していた
ジリジリとした太陽と照り返しが肌に刺さる

その数年前には東北高校のダルビッシュ、駒大苫小牧対早稲田実業の再試合、最強モンスター菊池雄星。
長崎県でも清峰高校の今村猛、長崎日大の大瀬良大地など盛り上がっていた。

私はその試合をスタンドから応援している。
3年間必死にやってきたが私はチャンスを掴めなかった。
中学で腰を痛めながらも、なんとかごまかしながら続けてきた大好きな野球。
自分の限界が見えたり、チャンスを掴めない自分が嫌になったり、大好きな野球が嫌いになりそうだったけど、最後まで仲間たちとやりきりたくて粘った。

試合開始前の円陣。
ベンチからスタンドの前まで仲間たちが出てくる。
フィールドに立ち入ることができない私たちと共に大きな声を出して奮い立たせる。
試合は中盤まではイーブンな展開だったが、後半になり勝ち越しを許す苦しい展開。

それでも仲間たちが、試合に出ている後輩たちがなんとかしてくれることを祈り声を振り絞る。

「諦めたくない」

そう思いつつも、苦しい展開に心が揺らぐ。

最終回になり、必死の応援を続けながらもふと頭をよぎる言葉「引退」。

この試合が終われば私の高校野球は終わる。

この3年間、家族よりも一緒にいる時間が長かったかもしれない仲間たちとやる野球を上回るものはないと思う。
腰の限界も感じており、大学でこの仲間たち以外と野球をやる気にはならない。
つまり自分の野球人生が終わるということ。

そう考えると熱く込み上げてくるものあった。

そして思った「まだみんなと野球がしたい」。

熱く込み上げるものを無理矢理おさえ、祈る思いで声援をあげる。

しかし、粘りも虚しく敗戦。

燃え尽きた。

一瞬真っ白になりながらも、片付けに向かう。

「最後までしっかりやる」

中学時代の恩師に教わったことを自分に言い聞かせつつ、ベンチやスタンドから荷物を引き下げた。

その後監督、コーチより3年生に労いの言葉がかけられる。

その言葉を聞きつつ、「本当に終わりなんだ」と実感する。「もうみんなと野球することはない」と思うの涙が止まらなかった。それと同時に「みんながいたからここまで続けてくることができた」と改めて感謝の気持ちが溢れた。

学校に戻り、最後の片付け。
ロッカーから自分の荷物を片付ける。
スパイクやグローブ、手袋を取り出し、雑巾で拭き上げ、仲の良い後輩に譲った。


翌日は祝日だった。
マネージャーも含め、同期みんなで遊び、花火をした。

翌日が学校だったら耐えられなかっただろうが、その1日があったことで切り替えることができた。
本当に大切な時間だった。

そして今、12年が経ちテレビで高校野球を見ている。
全力プレーをする選手と、プレーはできないが、スタンドから見守る選手。
当時のようにスタンドから声を上げることはできないが、その目からは同じ思いが溢れている。


そんな甲子園に触発され久しぶりに取り出したグローブ。
オレンジ色のグローブも、黒土で練習していたらいくら手入れしても真っ黒になっちゃうよな。
またそれが年季が入ってるように見えて良いんだけど。

久しぶりに誰かとキャッチボールしたいなぁと思う。

いよいよ、甲子園も準決勝、決勝を残すのみ。
悔いが残らない夏にしてほしいですね。




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