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読書日記:52ヘルツのクジラたち 聴こえない心の悲鳴

 書店でよく見かけていた「52ヘルツのクジラたち」。
本屋大賞も受賞したんだっけ?曖昧な記憶がきっかけで本を手に取った。
町田そのこの本を読むのは初めてで、どんな文体で話が進んでいくのか楽しみだった。
 このところウクレレの練習であまり本を読めていなかったから、とても新鮮な気持ちで読み始めることができた。

 主人公の名前は三島貴瑚という女性で、田舎に1人で住んでいた祖母の家が空き家で放置されており、そこへ移住するところから話は始まった。
 彼女は移住した田舎で「ムシ」と呼ばれている少年と出会う。
 登場人物はそれぞれキャラがしっかりしていて覚えやすく、とくに岡田安吾という人物が印象的だった。
主人公より記憶に強く残った人物だ。
 作中では声にならない心の悲鳴を、仲間のクジラに声を届けることができない高周波で鳴く、世界で一番孤独なクジラの声”52ヘルツの声”と表現している。
 私は誰かに彼の52ヘルツの声を聴いてほしかった。
それほど悲しく、無償の愛とはこういうことなのではないのかと考えさせられる。
 愛する人の幸福を願える素敵な人物だった。
是非読んでみてほしい。

 この作品を読んで52ヘルツで鳴くクジラがいることを知った。
疑問に思ったのが、このクジラは仲間の声を聴くことができるのだろうかということだ。
 聴こえない、伝わらないのなら世界はもともとこういうものだと納得できるかもしれない。
しかし、仲間の声を聴くことができるのに、自分の声を伝えられないのだとすると孤独感が強まるだろう。
仲間同士の会話は聴こえるのに、自分の声は鳴いても伝わらないのだから。
 考えると泣けてきます。

 読んでいて涙腺がちょっと緩みました。


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