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【掌編小説】あそこがかゆい♪

 僕の上司は、お色気ムンムン、ナイスバディで、めちゃエロい♪

 悩ましいボディライン、スケベ全開いやらしい唇、フェロモン出まくりのかぐわしい色香いろか

 少々厳しいことを言われても、その色気に、男性社員たちは、もうメロメロ♪ ついつい許してしまう。

 そんなお色気ムンムン上司は、空気を読めない男が大の苦手。「日頃の仕事っぷりから、私の略語を理解しなさい!」が口癖。略語を使って、スピードアップ。仕事の効率が求められる。

 僕たちは、「彼女に嫌われてなるものか! 一度は、夜のプライベートレッスンをお願いしたいんだ!」と、彼女から発せられる略語の理解に必死だった。

 そんなある日、彼女の助手として、営業に同行。その帰り道。喫茶店で軽食を食べながら、商談の反省会をしていた。

 彼女は僕に、ひとしきり注意をしながら、どんどん、どんどん、自らヒートアップしていった。

 すると、理解の悪い僕に嫌気いやけが差したのか、大きな声で、何度も何度も、略語で僕を叱責した。

「あ・そ・こ・が・か・ゆ・いッ!」
「は、はいぃ~?!」
「だからッ! もう~~~、分かんないかな~ッ!『あ・そ・こ・が・か・ゆ・いッ!』って、言ってんでしょ~~~ッッッ!!!」

 店内のお客さんたちが、一斉に、

 ー シ~~~ン…… ー

 庭のししおどしが、

 ー カタンッ、カタンカタン…… ー

 店内が、静まり返った。今日ばかりは、僕もカチンと来てしまい、略語で応戦することにした。

「そんなことおっしゃいますけどね、じゃあ、僕だって、『あ・そ・こ・が・か・ゆ・い』んですよ! あそこがかゆいッ! 僕の『あそこがかゆい』、分かって頂いてんですかッ!」

 まさか、僕が言い返して来るなんて、思ってもいなかった上司は、苦し紛れに、僕が意味する『あそこがかゆい』を言い放った!

「あ : あなたの、
そ : そういう、
こ : 小悪魔素振り、
が : が、
か : 可愛くもあり、
ゆ : ゆゆしくもあり、
い : いろんな意味で、萌え萌え、キュンッ!」
「正解ッ!」

 ス、スゴイッ! 当たっとるやないかいッ!

 店内の皆さんが、まるで、クイズ番組のギャラリーのように、僕たちの一挙手一投足に注目!

 マスターが機転を利かせて、

 ー ピンポン、ピンポ~ン♪ ー

 と、効果音を入れて下さった。

 すると、店内では、一斉に拍手が沸き起こった!

 この盛り上がり、僕も当てなきゃ、盛り下がるッ!

 さぁ、どうする、僕ッ?!

 何て答えるんだ、僕ッ?!

 店内の皆さんの期待と緊張感が、ヒシヒシと、僕に伝わって来る!

 ええ~いッ! もう、どうにでもなれ~いッ!

 僕は、開き直って、答えた。

「あ : あなたの、
そ : そういう、
こ : 子供っぽいけど、
が : 頑張る姿に、萌え萌え、キュンッ!
か : 可愛いがらせて、私の胸で、
ゆ : ゆっくり愛を育もう♪
い : いつも居るわよ、あなたのそばに……」

 僕は、ただただ、スケベなだけのエロ願望を言い放った!

 ー ゴクリッ! ー

 店内の、恐らく、男性客の方だろう。同じくスケベな妄想を膨らませて、固唾かたずを飲み込む音が、店内に響き渡った。

 で、その瞬間ッ!

「正解ッ!」

 ー ピンポン、ピンポ~ン♪ ー

「ヤッタ~~~ッッッ!!!」

 店内は、大歓声と拍手の渦!

 気づいたときには、僕は、もう、彼女の胸の中に、ムギュっと埋もれていた♪

 あ~、こんなバカバカしいエロ妄想が叶うなんて♪

 あ~、バカでよかった♪

『バカも休み休み』だなんて人は言う。

 だけど、今晩だけは、休めません!

 だって、恋のバカ騒ぎ♪

 夜の大運動会、スタートです♪

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