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竹取物語と紫式部

こんにちは!桃缶です。(^ω^)
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今回のテーマは竹取物語!
今回の連載のために古文を読む機会がめっぽう増えたわたくしですが、ダントツで竹取物語が好きです。
今日は竹取物語と紫式部について少し書きたいと思います(^o^)/

◆竹取物語と紫式部

竹取物語の原型は奈良時代からあったと言われています。
それをもとに平安時代に貴族の文人が改めて物語として編集し、こんにち残っている竹取物語の形になった、とされています。
したがって、竹取物語の作者は不明のままです。

この竹取物語、あの紫式部も「物語の出で来はじめの祖(おや)」と絶賛しています。
それくらい物語(エンタメ)としての完成度が高いのです。

竹取物語単体で読むと「そんなに完成度高いのかな?」と思うかもしれませんが、他の物語(宇津保物語など)を読むと「長いわりに何が言いたいのかわからん話だな…」という感想を抱くことが多いです。
そしてこれまた結婚に関するシンデレラストーリーが多い…!
平安当時の物語のトレンドが「卑しい身分に生まれたけれど、高貴な殿方に見初められて幸せに暮らしましたとさ♡」というものだったと考えられます。
(あれ…?なんだか現代のトレンドとさして変わらない…?)

こうした物語のトレンドに辟易していたのが紫式部です。
彼女の結婚は幸せなものとはいいがたかったようで(晩婚のうえ夫が2年ほどで亡くなっている)、とくに夫を失って家にこもりがちだった時に物語をたくさん読んだそうなので、こうした結婚系ストーリーには憤りすら感じたかもしれません。
人生こんなにうまくいくはずがない…
リアリティがなさすぎて全く共感できない…
だから物語というジャンルは「女子供が読むもの」なんて笑われるんだ…
…と思ったかどうかはわかりませんが、その当時の物語のトレンドに物申したい気持ちもあって源氏物語を執筆し始めたのではと推察されます。
(源氏物語の雨夜の品定めは有名なシーンですが、ここに平安男性のリアルな結婚観が詰まっているといっても過言ではありません)
源氏物語の蛍の巻では源氏が独自の物語論を展開していますが…これが結構手厳しい!
おそらくここには紫式部の本音も多分に混じっていることでしょう。

◆竹取物語の作者とはだれなのか?

この議論に関しては諸説あるようですが、わたしは紀貫之説を推しています。
というのも、先日『土佐日記』を読んで、言いまわし(ダジャレ・言葉遊びが頻繁に出てくるところ)が非常に紀貫之っぽいなと感じたからです。
紀貫之がダジャレ大好きおじさんだったのは、おそらく歌人だからだと思います。
すぐれた歌人は詠まれた歌に対して即座に言葉を連想し、より秀逸な歌を返す頭のキレの鋭さがあります。
紀貫之ほどの和歌の達人ならば、文章にそうした知識がちりばめられるのも頷けます。

また、土佐日記のなかには3回ほど「幼くして亡くなった娘を偲ぶ」くだりが出てきます。
京都で生まれて土佐で亡くなった紀貫之の娘。
土佐赴任期間が約5年と考えられているので、紀貫之が50代でできた子どもであろうかと思われます。
当時40歳を迎えられれば長寿とされていたためもはや奇跡に近いわけですが、そんな子どもが亡くなるなんてどれほどの喪失感でしょう。
土佐日記の最後は、
「任期を終えて土佐から京へ帰ってきたら我が家はボロボロ。しかし荒れ果てた庭には新しく小松が生えている。われらは土佐で子を亡くし、帰ってきたら庭には小松(子)ができているなんて、なんと皮肉な話だ。」
そう言って泣きながら幕を閉じます。
土佐日記の亡くなった娘の話自体が作り話なのでは説もありますが、わたしはこの悲しみは体験談に思えてなりません。

この、幼くして亡くなった娘と年老いてから子を授かった紀貫之、竹取物語のかぐや姫と竹取の翁を彷彿とさせませんか?
あれほど可愛がっていたのに結婚することなく亡くなった娘…この悲しみをどう昇華させるか考えた紀貫之は、天人として地上に降り立ち、誰とも結婚することなく天に帰ったかぐや姫に変換したのではないでしょうか。

これまでの物語のトレンドがそうだったように、もしかしたら竹取物語の原型は「帝と結婚して幸せに暮らす」というエンドだったかもしれません。
でもあえてそこを「結婚せずに天に帰る」に変更したのが紀貫之だったとしたら、紫式部は拍手を送りたかったでしょう。

これは完全に個人的な意見ですが、土佐日記を紀貫之一行に同行している女(架空)としてユーモアたっぷりに綴っているのに、最後の最後で小松のくだりには本人の目線に戻って悲しみを素直に表現しているところと、竹取物語で5人の求婚者たちの話を面白おかしく描写して、最後の最後でかぐや姫が天に帰るくだりには翁の悲しみと葛藤が中心に描かれているところ…、構成がとてもよく似ています。
紀貫之は、普段は言葉遊びや歌詠みが得意なエンタメおじさんだったかもしれませんが、最後の最後に真顔で本当のことを言う、そんな側面があったかもしれないですね。

◆おわりに

なんか竹取物語好きすぎて語りすぎちゃいました。
長くなってすみません。(少しって書いたのに…)

もし竹取物語、土佐日記、源氏物語に興味を持っていただけましたら、原文を読んでみてほしいなと思います。
「古文はハードルが高いからまずは漫画から…」というかたは、『花見小路北日記』でさわりだけ触れてみるのもいいかもしれません(*'ω'*)

ということで、ココハナ7月号もよろしくお願いいたします!!

わたしの好きを詰め込んだマンガですが、届いてくれることを願って。応援いただけると本当に嬉しいです。