スタッキング可能な私たち
人間とは掛け替えのないものである。だが、一旦社会に組み込まれると、掛け替えのない存在は掛け替え可能なものとみなされる。今、自分が会社を辞めたら、私の掛け替えとして新しく社員が一人補充される。学校の先生が病気になれば、先生の掛け替えとして臨時教員が採用されるだろう。自分という人間が明日突然いなくなっても、世界は何食わぬ顔をしてそこにあり続ける。
松田青子『スタッキング可能』はリバーサイドに中層ビルを持つ会社が舞台だ。登場人物は〈わたし〉を除いてみなA田、B田、C田、D田、A山、