見出し画像

書評をお金に変えるという欲と向き合ってみた

「ラクして痩せる」「モテる女子を目指せ」「パリのマダムに学ぶ」と同じくらい本のタイトルにあったら、レジに持っていくハードルが私としては高いのが「情報を「お金」に変える」。

書店員に「こいつこんなしけた顔をして『情報を「お金」に変えたい』と思ってるんだ」と笑われるのではないかという過剰な自意識が毛穴という毛穴から噴出するからである。

昨今ありがたいのはこうした本を電子書籍で、人知れず買えること。内なる願望を秘めたまま、その先達の知恵を拝借できるのである。これほど、電子書籍がありがたいと思ったことはない。

さて、私は書評を誰に頼まれるでもなく書いて、こんなふうにネットで公開しているのだが、そもそもなぜ書評を書こうと思ったのかというと、インプットだけでは、何かが決定的に足りないと思ったからだ。成毛氏も本書のなかでこう言っている。

今の時代、情報収集、勉強をして、知識、教養を溜め込んで満足しているようでは、もうダメだ。
 得た情報をどう発信して、自分の血肉とするか、価値があるものに変えていくのか、もっとわかりやすく言えば、「お金」に変えるのかを意識せよ。(6ページ)

黄金のアウトプット術: インプットした情報を「お金」に変える

「自分の血肉とする=価値があるものに変える=「お金」に変える」という流れに賛成か反対かといえば、正直、ちょっと待てという気持ちはある。世の中、お金がすべてではないし、お金となるものにしか価値を認めないとなると、今どきの政府の人文軽視へとつながるような気もする。だが、まあ、正直なところ、こうして誰にも求められることなく書評を書いていると、読んでくれる人がいればうれしいし、いいねが付けばなおうれしい、その後の欲はなにかといえば、それでお金が稼げたら、ぴょんぴょんその場で3回飛び跳ねる程度にうれしいことは否定しない。

そして、"「趣味で書いている」ことを免罪符にしている自分"問題というのもある。「趣味で書いているんだから、多少拙いのは許してよ」とどこかで甘えている自分。書評講座の仲間がメジャー誌で書き始めたと聞いても「まあ、私は趣味だし」と悔しがる気持ちを封じる自分。ここは、自分の心の奥底でどす黒くくすぶる欲をしっかり引き上げて、向き合う勇気が必要なんじゃないか。そうだよ、私はあわくば書いたものを「お金」に変えたいと思っているんだよ、悪いか。え?、文句あるのか?

ということで、本書『黄金のアウトプット術 インプットした情報を「お金」に変える』を読んだわけである。果たして私は情報をお金に変える術を見つけたかというと、まあ、世の中そんな甘くないよねというのが感想。書評で家の一軒でも建てるくらい金を得ることを、正直なところ期待して読んでいたので、こっちの期待が大きすぎたといえるのだが……。

でも、こういう自分の欲に向き合う読書ができたのはよかったと思うし、ノンフィクション専門書評サイトHonzの代表である成毛氏の書評の作法も紹介されていて、これは常々他人の書評の書き方に興味のあった私としては、かなり分かりやすく、そして実践可能なのではないかと思われ、この情報を得られただけでも大満足な読書であった。

欲望がダイレクトにタイトルになっている本。仮に欲望本と呼ばせてもらう。その本が気になる。でも、手に取るのが憚られる。そんなアンビバレントな己の感情に向き合うことこそ、実は、欲望本を読んで得られる最大の価値であり、気づきなのではないかと思うのだ。恐れず手にとるべし。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?