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ブックレビュー

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シミルボンに投稿していた書評記事を中心に置いてあります。
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記事一覧

キム・イファン他『蒸気駆動の男 朝鮮王朝スチームパンク年代記』

韓ドラ沼にドはまり中のAとBの会話。 A:「ムービング」全20話観了!  韓ドラますますスケー…

坂田
9か月前
3

伊藤比呂美『犬心』

〈急いで書かないと、タケのいのちに置いてけぼりにされてしまうような気がしている。〉 南カ…

坂田
11か月前
2

いしいしんじ『ある一日』

不思議な小説である。 作者であるいしいしんじ夫婦の「わが子の誕生」という実体験をもとに書…

坂田
11か月前
1

いとうせいこう『想像ラジオ』

「もしもし? 今、大丈夫?」 「うん、大丈夫よ。元気だった?」 「私は元気。ママはどうなの…

坂田
11か月前
1

スピンオフ!『剃髪式』

大好きなフランツィンが戦争から帰ってきて私はてっきりプロポーズされるとばかり思っていたの…

坂田
11か月前
1

おとぎ話のスピンオフ! 名前を得た王子たちの冒険

と、その前に「プリンス・チャーミングと呼ばれなかった」王子とその侍従の会話をお聞きいただ…

坂田
11か月前
1

そこにある異世界へといざなう

今から100年ちょっと前の明治時代。駆け出しの物書き綿貫征四郎は、学生時代ボート事故で亡くなった親友高堂の実家の家守(いえもり)をすることになる。他所で隠居する高堂の父親からいくばくかの謝礼付きで頼まれたのだ。物書きと言えども、専業では食べていかれない。琵琶湖に近い庭付きの二階家に住んで、さらに月々の手当ももらえるのだ。時代は違えど、同じフリーランスの身としては、なんとも羨ましい話である。(私としては)さらに羨ましいことに、そこに犬が居着く。犬はゴローと名付けられ、隣家のおか

スタッキング可能な私たち

人間とは掛け替えのないものである。だが、一旦社会に組み込まれると、掛け替えのない存在は掛…

坂田
11か月前

「美しい顔」を読んだ

北条裕子「美しい顔」を読んだ。 この作品は今年の群像新人賞当選、そして芥川賞候補として注…

坂田
11か月前
4

書評をお金に変えるという欲と向き合ってみた

「ラクして痩せる」「モテる女子を目指せ」「パリのマダムに学ぶ」と同じくらい本のタイトルに…

坂田
11か月前
6

忘れられた「物語の力」を呼びさます、朝井まかて『雲上雲下』

深い山奥にぽっかりと袋を開いたかのような草原。〈わし〉はそこに根を張る樹木のような草だ。…

坂田
11か月前

誠文堂十銭文庫『犬の飼ひ方』

誠文堂十銭文庫シリーズの『犬の飼ひ方』(中根榮著)は、1930(昭和5)年8月に発行されました…

坂田
11か月前

300年前のバブルに踊らされた人々を描く

1719年のフランス。パリ郊外の街道で追い剥ぎを生業とする青年アルノーは老紳士カトルメールの…

坂田
11か月前

あの頃、私たちは戦っていた

いたる所で工事の音が聞こえるニュータウン。そこに住む小学四年の結佳は学校では若葉ちゃんと信子ちゃんと仲良しだが、習字教室では同級生の伊吹という男子とよく話す。が、これは学校では秘密だ。男子と仲良くしていると噂になってしまうからだ。このくらいの年齢だと女子のほうが発育がいいし、おませだ。結佳は伊吹を相手に「舌と舌をくっつける本当のキス」をしてみる。結佳よりも身体が小さく、まだ男女を意識しない伊吹を結佳は「私のおもちゃ」として所有していく。 結佳が中学生になると、この街の開発は