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おとぎ話のスピンオフ! 名前を得た王子たちの冒険

と、その前に「プリンス・チャーミングと呼ばれなかった」王子とその侍従の会話をお聞きいただこう。


侍従「王子さま、お目覚めですか? ただいま朝食の用意を」
王子「うん。ところで、今朝は何か面白いニュースはないの?」
侍従「シンデレラさまのお話はもうお聞きになりましたか?」
王子「シンデレラ? 継母とその娘たちに苛められていたけど、王子とめぐり合ってめでたしめでたしの女の子だよね?」
侍従「左様でございます。が、そのシンデレラさまが王子の元を去られたとか」
王子「えーー、マジ? シンデレラの王子って、ほら、名前、何て言うんだっけ」
侍従「フレデリック王子でございます」
王子「そうそう、フレデリック! いやー、一寸先は闇とはよく言ったもんだね」
侍従「それと、ラプンツェルさまのお話はもうお聞きになりましたか?」
王子「ラプンツェル? 魔女に高い塔に閉じ込められていたけど、王子に救出されたって女の子だよね?」
侍従「左様でございます。が、実は……。王子がラプンツェルさまを助けたのではなく、ラプンツェルさまが王子を助けたとか」
王子「えーー、マジ? ラプンツェルの王子って、ほら、名前、何て言うんだっけ」
侍従「グスタフ王子でございます」
王子「そうそう、グスタフ! いやー、人は見かけによらずとはよく言ったもんだね。あの頑強なグスタフが面目丸つぶれじゃないか」
侍従「まったくもって。ついでに眠り姫さまの続報もございまして……。王子のキスで目覚めた眠り姫さまが、実はたいそう性格の悪い方だったとか」
王子「えーー、マジ? てか、キスしちゃった王子が気の毒すぎる! 眠り姫の王子って……、誰だっけ」
侍従「リーアム王子でございます」
王子「そうそうリーアム!! いやー、美しい姫を得て、幸せにやっていると思いきや、みんな大変そうだね」
侍従「王子さま、心なしか嬉しそうでございますね」
王子「何を言ってるんだ! ボクは友である王子たちを心から心配しているんだよ」
侍従「左様でございますか。実はその三人の王子に白雪姫のダンカン王子を含めてプリンス同盟なるものを結んだとか。おとぎ話では〈プリンス・チャーミング〉と呼ばれ、名前すら出てこない王子たちが本名を知ってもらうべく団結して、吟遊詩人たちを拉致した魔女を倒す旅に出たとのことでして……」
王子「えーー、なんでボクには声がかからなかったの? ボクも一緒に魔女を倒す旅に行きたかったのに!!」
侍従「恐れながら。王子さまには『プリンス・チャーミング』に必須の姫君がいらっしゃらぬゆえ」


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