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神隠しと疫病

ハーメルンの笛吹き男の逸話を思い出した。

阿部謹也さんの「ハーメルンの笛吹き男」を何十年も前に読んだきり、その周縁の話は意識の下に沈んでいたが、興味深く精読した本の内容は時間を経ても何かの拍子に浮上する。


この、中世ヨーロッパでの史実をもとにした逸話が、後世でのペストに罹患した者たちを隔離する情景と合流した、という話を、このコロナ渦の日常で思い出した。

先程軽くページをくった限りでは、後半の「<笛吹き男>から<鼠取り男>へ」のあたりにその記述があるようだった。

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畏敬してやまない楳図かずお先生の傑作「漂流教室」でも、荒廃した未来世界にタイムスリップした大和小学校の生徒の間で、ペストが流行る。


「ハーメルンの笛吹き男」は伝承で、「漂流教室」は創作だが、大勢の子供達の集団失踪と疫病、という符号はなんだろう。

楳図先生が中世ヨーロッパの逸話からエピソードの着想を得たのだろう、と言われればそれまでかも知れないが、そういうタイプの作家でもないような気がするので、これはひとつのシンクロニシティと思いたい。

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柳田国男には神隠しに関するたくさんの拾遺があるが、自分が少年時代に神隠しになりかけた、という話は特に印象深い。


神戸に親戚がいると思いこんでどんどんそちらに向かってしまい、途中知り合いの大人に捕まえて貰わなかったらあのまま、神隠しということになっていただろう、というエピソードだ。


これは、集団失踪とも疫病とも関係のない逸話だが、子供が山中などで不意に行方をくらます、という時に、こうした心性も働いているのかと彷彿とする話なので、子供の失踪の例として並べて書いた。

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日本ではいざ知らず、遠い異国ではこのコロナを契機にした不可思議な事件が起きているやに聞く。

子どもと動物が、どうか巻き込まれないように。できるだけ、巻き込まれませんように。神隠しからも疫病からも、難を逃れられますように。






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