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ロールス・ロイスかスーパーカブか ~ 不要不急と実用普及の頂点

いわゆるスーパーカーには全く興味はないが、ロールス・ロイスは面白そうだと思う。
中古車でも3000万円くらいするので、所有はおろか、レンタルすることさえできそうにないが、財布は空でも面白いとは感じられる。

技術者ロイスと貴族ロールスの創業者2名の名を冠してロールス・ロイスである。
エンブレムの女神像は「スピリット・オブ・エクスタシー」と呼ばれ、触れるとラジエーター内部に収納されるので、盗むことができない。

もしロールスを持つとしたら、セキュリティ万全の屋内駐車場が必要で、野天の駐車スペースに停めるのは、屋台で宝石を売るくらいのリスクがある。

誰かに乗せてもらったことすらないが、6600㏄というクラスの排気量とその静粛性、安定性を想像するに、大きな大きな女神の胸に抱かれているような陶酔感を味わえるのではないかと夢想する。
まさに「スピリット・オブ・エクスタシー」だ。
プライベートジェットや高級船舶でなく、100年以上前から一自動車としてその域に達しているという、恐るべき乗り物だ。

メルセデスは最高級の実用車だが、ロールスはいわば無用の用を顕したクルマだろう。
トレンドワードで言えば、不要不急のクルマだ。
キントンウンとか聖獣の背中とか、ファンタジーの世界の存在と並びたつような代物だと思う。

またロールスと言えば、ショーファードリブンというオーナー自らは運転しないクルマの代名詞的存在だが、自らがハンドルを握ってこそのロールスではないかと思う。
国産のショーファードリブンならともかく、なんたってロールスなのだ。
後部座席からの眺めだけなんて残念過ぎる。軽装で、ドライバーズシートに陣取りたい。


一方のスーパーカブは、世界一売れているスーパーバイクである。
これ以上世界の隅々まで普及している実用ブランドは他にないのでないか。
排気量は50CCから125CCまでの幅のなかで確か3種類ほどある。

YouTubeにも、カブツーリングの動画は山ほど上がっているが、どれも見ていて楽しい。
大型バイクを巧みに操る姿を称して人馬一体などと言うが、なに、カブとライダーだって十分に人馬一体だ。

カブはその全体的なバランスの良さと、異常な燃費の良さ、そしてその耐久性で世界を制したバイクだ。
だから、新車を一台買えば一生モノとして使える。愛車と呼べる一台になる。

私は昔、毎朝都心をカブで走り回っていた。牛乳配達をしていたのだ。
だから、その恐ろしいほどの耐久性と燃費効率はよくよく知っている。


好事家がロールスを譲ってくれるなら、一年くらいなら所有したい。
犬を乗せて、北海道から沖縄まで何周も走りたい。

カブなら、改めて自分で買いたい。そして、一生、足として使いたい。
犬をスリングで背負って、少し遠くの公園に行きたい。


ロールスをネタにして、なにか景気のいい話を書こうと思いつつ、思わぬところに着地してしまったが、今宵これはこれで良しである。


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