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【喫茶店日記】2023年5月1日月曜日 ミツバチの羽音が

5月1日 月曜日

だいちゃんとじゅりちゃん、ゆめちゃんがやってきた。じゅりちゃんに会うのは久しぶりだったから、嬉しくなって思わず、わたしはレジから玄関の方へ飛び出ていった。珍しい3人だなぁと思って聞いたら、上の二人は久しぶりに学校へ行ったと言った。だいちゃんとじゅりちゃんが揃ってお茶しにきてくれる姿を見るとなんだかいつも嬉しくなる。じゅりちゃんのニコニコ顔、わたし大好きなんだよなぁ。ももちゃんのクッキー、美味しくて一人病院で泣きそうになりながら食べたよ、とじゅりちゃんが言うから、わたしまで嬉しくて泣きそうになった。やっとだいちゃんに、この間もらった山羊のミルクのお礼が言えた。教えてもらって早速作ってみた山羊ミルクのカフェオレはとっても美味しかったと伝えたら、またあげるね、ヤギの乳搾りバイトってのもあるんだよ、と教えてくれた。行きたい!え、本当に行きたい。と、挙手。二人のところに通って色々教わりたい。

工藤さん夫妻が出来上がった炭を取りにきた。先週中野さんの炭焼き小屋で、自宅で切った庭木で炭を作りにきていた。自家製炭、何に使うんですか、と聞いたら、わからないと言って笑った。七輪で魚を焼いたっていいし、バーベキューしてもいいし、なんでもできるね、と楽しそうに話された。使い道はわからないけれど、作ってみたい!とかこれ好き!みたいな思いつきでやっちゃうんだよね、と言った。横に座る奥さんは「ほんと好きなことっしか、しないんです」とため息まじりに呆れた感じで言い、そのご夫婦の感じがよかった。旦那様は、ちょっと僕の作品自慢してもいい?と言って、車に何やら取りに行ったら、それは大きなビニール袋いっぱいに入った毛糸の帽子のようなものだった。それはゴルフのパターのカバーだというから、可愛いなぁ。全部にちゃんとポンポンが付いていて人間のわたしだって被りたいような可愛らしい帽子だった。「男で編み物だなんてって、笑う人もいるんだけどね」と旦那様は言って笑っていたけど、でも楽しくてついやっちゃうんだなぁと言うのが伝わってきて、とても素敵だと思った。わたしも棒針編みをできるようになりたいのに、押し入れに眠らせたままだ。今年こそわたしも帽子一つ編めるようになって、工藤さんにお披露目したいと思った。


そんな感じで店はゴールデンウィーク中とはいえ、普通に平日なので、割と落ち着いていた。それよりも店先の巣箱に住む蜂さんたちは大忙しだ。今日も13時ごろ、昨日に引き続き分蜂した。一回捕まえて新しい巣箱に入れたから、もうそのあとは分蜂しても連絡しなくてもいいとハチ好きのおじさんたちには言われたはずだったのだけど、どこの誰から情報が流れたのか、白づくめのおじさんたちが気がつけば店先の巣箱の前に集まってきていたから、笑った。ミツバチおじさんのネットワーク恐るべし。清水さんはまた新しい巣箱を持ってきて設置し、その中に分蜂した蜂の塊を網で捕まえてどさっと入れた。うまくいったとみられる。この一連の作業は、おじさんたちにとっての一大イベントであり、今日も今日とてお祭り騒ぎであった。これで、店先の巣箱は4つになった。しかも高い手作りの台に乗っかっていて、タワーマンションみたいだ。この景色をハチマンションとわたしは呼んで楽しんでいる。ハチ界でこの店はどういう位置付けなのか気になるところだ。かなり蜂口密度は高い。

やれやれと一仕事終え、カウンターに座ってコーヒーを待つおじさんたち。ブーンというミツバチの羽音が、どこか近くから聞こえる?と耳を澄ませると、彼らの洋服にくっついて一緒になって店に入ってしまったミツバチが数匹、困ったようにカウンターのあたりを飛び回っていた。あぁ可愛そう、とわたしが困っているハチを見つけると、おじさんたちは素手でホイホイと、窓の外に逃がそうとしてやるから、またひやっとした。昨日だって、何匹に刺されたんだか。(刺された数を自慢し合いたいのかな?と思う程。みんな刺され慣れている。)清水さんは「昨日なんかここの後に風呂に行ったらヨォ、服脱いだらハチが中から出てきちゃっさ、怒られるかと思っただよ!」と言って笑った。やれやれなおじさんたちである。何はともあれ、おじさんたちが楽しそうでよかった。いつもなら夕暮れ時に顔を合わせる面々が、昼間っからコーヒー飲んでひと騒ぎしている景色は、この時期ならではだなと思った。

中野さんはやってきて、キノコが採れただよ、とビニール袋の中身をみんなに見せてくれた。まだ出始めて小さいアミガサタケだった。わたしははじめてホンモノのアミガサタケをみた。ほんとうにカサの部分が網目模様だった。ミツバチおじさんたちは、昼の分蜂した一連の話を自慢げに中野さんに話した。もう4回も分蜂したなら、今年はもう終わりですね。と中野さんは言った。分蜂は、という意味だったのだろうけど、もう2023年も終わりですね。と年末のような雰囲気で言うから、なんか可笑しかった。ミツバチおじさんたちは、蜂蜜を採取することよりも、あそこの巣箱には入っただとか、出ていっただとか、そうやって増やしていくのが好きなのだった。ちなみにわたしは今朝、自宅の庭の巣箱をきれいにしたため、採取した巣から採蜜中。車の荷台に置いてある。日中車内はかなりの高温になるから、その熱を利用して、自然に蜂蜜がざるから落ちてくれるようにセットしてあるのだ。楽しみ。でもみんなには秘密にしている。なんとなく。


今日はゲリラ豪雨が降る可能性もあるらしい。と直子さんから聞いて知った。たしかに、むこうの山の方に見える分厚い雲は一雨降らせそうな雰囲気をしていた。直子さんは、ゆうなちゃんが無事に帰宅できるかを心配していた。(ゆうなちゃんは中学まで自転車通学をしている。)わたしは、今日は朝からずっと頭が痛かったのだけど、それを聞いて、この頭痛は気圧のせいなのかも、と思った。頭が痛いのって本当にどうにもならない。帰宅して残り物を適当に炒めてチャーハンにして茹で卵を乗っけて食べた。食べても頭は痛かったから、お水をたくさん飲んで9時前にはもう横になった。今日は日記を書きたい!と言う気持ちで帰ってきたのに、とてもじゃないけど書けずにお布団にダイブした。(元気になったので、今、翌日の朝に書いている。)


頭が痛いとき、どうしようもなくて、いつも悲しくなる。
悲しくなって、ありえないことまで、あれこれ考えてしまう。もしこのまま頭が爆発して死んでしまったら、今日の日記書けなかったこと後悔するだろうな。乳搾りにいけなかったことも、じゅりちゃんにまたクッキーを食べてもらえなかったことも、今朝採蜜したばかりの百花蜜をスプーンいっぱいに舐られなかったことも、散らかしっぱなしの机の上も、押し入れに眠らせたままの棒針と大量の毛糸も、全部ぜんぶ、後悔するだろうな。栗田さんにも篠原さんにも迷惑かけるし、、、とまだまだやりきれないままだ。何よりもゴールデンウィーク真っ只中の店にも迷惑だ。やっぱり、今死んでしまったら嫌だな、と、はっきりとそう思った。それはとてもしあわせなことだと感じた、夜。生き切ろう。

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