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「働きたいママ」と「介護」の親和性。大森淳史さんが見つけた気づきと学び。


介護

それは、直接関わっていない方でも、人手不足の問題や大変さを耳にしたことがある業界。


ワーキングマザー(働くママ)

それは、日々の家事や育児の合間に何とか働きたい、社会復帰を目指したいと考えている人達のこと。

ですが、努力してもなかなか採用に至らないという問題を抱えてもいます。

それぞれが抱える問題を解決する架け橋として立ち上がったのが、今回、ご紹介する「お世話の輪」代表の大森淳史さん。


働くママが、なぜ介護業界との親和性が高いのか、どんな人達の元へ届けたいのか、その想いをお聞きしました。


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働きたいママこそ介護業界がぴったり。だから、ママのための採用方法を提供したい

ーーまずは「お世話の輪」について教えてください。


お世話の輪は「LINE」アプリを使って、働きたいママと介護事業者を繋げる人材採用のためのマッチングサービスです。

LINEを通してお友達に連絡するように登録・相談してもらい、それを見た介護事業者からスカウトが飛んでくるという方法。


もしくは地図で通勤時間が短い近所の介護施設を検索して、自分から応募する方法と、二つの方法での雇用を目指します。


ーー人材のマッチングサービスは色々な形態がありますが、LINE公式アカウントにしたのは、なぜですか?

採用したいターゲットを働きたいママに集中させたいと考えたとき、ヒアリングしたママ世代全員がPTAなどの連絡用に使っていたのがLINEだったんです。

新しいアプリをインストールするってハードルが高いじゃないですか。

なので、すでに使っているものに組み込むのが一番だと考え、この形を取りました。


ーーなぜ働くママをメインターゲットに?


介護に携わる仕事って、病院の看護師さんと混同されて介護福祉士のような資格がないと出来ないと思われているんですよね。

でも実はそうではなく、ママスキルとも言える家事援助の仕事も多くあり、資格がない方も多数活躍されています。

お部屋の掃除・洗濯・調理・盛りつけ・配膳・お話相手や見守り・一緒にトランプや折り紙で遊ぶことを通したリハビリなど。

ひとつでも出来そうと思えば、すぐに活躍できます。

さらに介護は、平日の9時から17時のようにきっちりした時間ではなく、常に仕事が発生している。

短時間で区切れる仕事も多く、例えば週2日午前中だけなど、スキマ時間を活用できるので雇用形態としてもぴったりだと考えました。


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全ての経験がどこかで役に立つと挑戦へのきっかけをくれた父母からの学び


ーーなぜ、この事業を始めようと?


元々、母が介護事業をやっていて、もう21年目になるんですが2年前に後継ぎになろうと思ったのがきっかけですね。

継ぐと同時に新しいことも始めたいと思い、岡山イノベーションスクールの二期生に。

当時から介護事業は人材不足でしたが、どの程度不足していて、どのように解決すべきかはわかっていなかった。

そこでスクールで解決プランを考えつつ厳しくご指導頂いた結果、介護事業者自らがマッチングサイトを持ち、ママ人材が得意分野を活かしてスキマ時間に働ける環境を創るというのが介護業界にとって一番の解決策だと考えました。

その案で創業前部門の大賞を頂き、アメリカシリコンバレーでの研修を経て、起業の意志が固まりました。


ーー大森さんご自身についても伺いたいのですが、子供の頃はどんなお子さんだったのですか?


小学生の頃から松下幸之助さんが好きで、自分で事業を興すとか、会社を設立するのは、すごくかっこいいことだと思っていましたね。

父も母も仕事が好きで、良いことも悪いことも話してくれるので、仕事って素敵なことなんだと感じながら育つことが出来たのは良かったと思います。

あと、母が30代で勉強し直すという挑戦をしていたので、それが当たり前だと思っていて。笑

僕自身も資格の勉強から始まり、30代で岡山大学大学院の社会文化科学研究科へ。

昼は会社員、夜は大学院生として組織経営を学びました。


ーー学びのあるいいご家庭だったんですね。介護のお仕事の前は何をされていたのですか?


大学を出てすぐは営業職です。

なかなかうまくいかず、30歳頃に転職して工場の仕入担当に。

つまり、売る仕事から買う仕事になったんです。

これが僕には良かった。

反対側の立場になったことで、相手の気持ちがわかる仕入れ係として有り難いことに重宝して頂きました。

この芽吹きが「自分にも出来ることがある」という自信になり「人は変われるんだな」と考えるようになりました。

今でもその感覚は大事にしています。


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ーー素敵な経験をされたんですね。お母様の事業は昔から後継ぎになろうと?


元々何か事業を興そうと考えてはいました。

でも、それは物作りと仕入れに関するコンサルティングやマッチングサービスなどで、定年後にする計画だったんです。

それがなぜこうなったか…大学院での後継ぎの方との出会いに強く刺激を受けた事、親の年齢を考えた事もあるかもしれません。

本人はまだ20年くらい現役で頑張れるって言ってるので、正式に継げるのはいつになることか…笑


ーーなるほど。では、お世話の輪はご自身で別会社を?


いえ。実は、父も株式会社E・Mテックという電気関連の設計、工事を行う会社を興していまして。

その中の新規事業としてお世話の輪は立ち上げています。

自分で立ち上げるという選択肢もあったのですが、結果的に父と母、両方の想いを継げるのでいいかなと思いこの形になりました。

これも親孝行かなと。



ーーなるほど。ご両親の後を継ぎつつ新しいことを始められたわけですね。


そうですね。

子供の時の経験、今までの勤めた経験での気づきや勉強したことが総合的に今を支えていると思っています。

全て無駄じゃないというか、どこかで通じるものがある。

経営って人事も総務も営業も仕入れも全部するようなものじゃないですか。

幼少期に「全ての道は繋がっている」と父が何気なく言った言葉を、毎日実感しています。


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ーーお世話の輪を立ち上げる際、困ったことはありましたか?


実は現在進行形で困っています。笑

仕入れのシステムは自作した事がありますが、人材採用のマッチングシステムとなると経験が無く、使いやすさや、こうしたいという想いを外注の方と共有するのが難しいんですよ。

また、周知していくのも大変です。

広告を打って反応を待つような形は合わないので、泥臭いですが直接会いに行ってお話をしている段階です。

介護事業者側にはもちろん、ママ側にもイベントなどを開催してこちらの想いを伝えたり、反対に悩みを伺ったりしています。

このご時世ですが、色んな方法を使って顔が見える安心感を大事にしたいと思っています。

周知をお手伝いくださる方も募集していますので、お声がけ頂けると嬉しいです。


ーーお世話の輪を立ち上げて良かったと感じたことは?

お世話の輪には短時間の勤務体験が出来るシステムがあるのですが、それを利用した方に喜んで頂けたときですね。

社会復帰の際に以前の社会人経験でちゃんと通用するか、自分の体力は十分に持つか、実際試せるのは嬉しいと。

実は、介護事業者って細かく分類すると十何種類あるんですよ。

でもママである今の自分の働き方に合った介護事業所を探せるサービスは存在しない。

そして、介護職のスタッフは20代から80代まで、ママから、もう孫やひ孫がいる、グランマと呼べる方々まで活躍されている。

だからこそ、初めてでも、復帰する方も、副業にしたいという方も、勤務体験を通してぴったりの場所を選び、人生を豊かにして欲しい。

その方の一生を通してご利用頂けるマッチングサービスであることを目標にしています。

反対に、介護事業者の方も30分間の面接で把握しきれない実力や想いを、勤務体験を通して見極めたり、共に現場で働くことになるスタッフの声を聞くことが出来ることで、自社に適したママ人材を採用出来るのではないかと考えています。

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ーーありがとうございます。お世話の輪としてはここからどのような展望を目指されていますか?


1年間に1人だけど欲しかった人材に出会えた、本当に働きたい会社に出会えたという喜びを生むサービスにしていきたいです。

働きたいママの困りごとをひとつずつ細やかに拾っていきたいですね

また、将来的には介護事業者全体の為にも、個人採用だけでなく地域採用をしたい

異業種を含めた採用を通しての地域活性化、地域の持続可能性を高める関係性を社会に作っていきたいです。


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とにかくたくさんの「人と会う」「繋がる」「発表する」を目指して欲しい


ーーこれからスタートアップを目指す皆さんへアドバイスをお願いします。

僕が言うのもおこがましいんですが、とにかく人と繋がる事をお勧めします

コロナ禍で直接は中々難しいですが、オンラインなどを利用してとにかくたくさんの人と。

僕自身1年間で1000人の人にお会いし、「こんな事がしたい」と相談しました。

すると、皆さんすごく気軽にコツや失敗談を教えてくれ、本当に糧になっています。


そして、発表をすること

プレゼンやピッチなど、どんな内容でも発表して人に見てもらうということを大事にしてください。


最後に、自分が主催側となるコミュニティを作ること。

主催してみると参加する倍以上の経験や、仲間が出来ます。

裏側の気持ちがわかるってすごい強みなので、ぜひ挑戦して欲しいです。


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取材を終えて


幼い頃からの環境を大事に、30代までの気づきをきちんと自分の学びに昇華している大森さん。

思いがけず早い段階での立ち上げとなったと言われていましたが、実は満を持してなのかもしれないと感じさせる熟慮が、そこにはありました。

介護業界と働くママのように、思わぬ親和性が社会にはまだまだあるのかもしれませんね。


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執筆:下原弥子/撮影:秋本直哉/編集:やぶなお

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