小児科にかかった私

保育園の送迎中や買い物などの時、息子のかかりつけクリニックの前を通らないようにしている。
診療時間外であっても門を力いっぱい握りしめ「あけてー!」と泣き叫ぶし
時間内であればニコニコしながら入口まで走って行こうとするからだ。
その言動から、息子はここが大好きなのだろうと推察できる。
私もこのクリニックが大好きだ。
高齢の男性医師の説明は分かりやすく丁寧だ。
内容を聞いていると、経験則を大事にしつつも過信せず、新しい知識を取り入れることを怠っていないことが伺える。
ネット予約もできる近隣の別の小児科の方が設備が良い為かいつも空いており、待合室で長く過ごさなくて良いのも嬉しい。

あえて正確でない書き方をするが、この小児科に『私が』かかったことがある。
義母との同居を始めて間もない頃、2022年5月中旬。

この頃の私以外の家族の状況はと言うと、過去のnoteに書いた通り義母も義父も入院していた。
夫は毎日激しい胃痛で仕事にも差し障りが出始めており、検査を控えていた。
そして息子に風邪症状が出た。

これだけ身内の体調不良が続くと悲観的にならずにはいられなかった。
夫も入院するに違いない。
息子も重病に決まっている。
全てを私一人で支えなければならない。
…支えられるだろうか?

息子のかかりつけクリニックに予約の電話をかけながら涙がボロボロこぼれていた。
電話を受けた事務さんは優しい口調でこう言った。
「何時頃お越しでしょうか?どうか気を付けて、ゆっくり来てくださいね。」 

クリニックに着いてから診察を終えるまで、3分もかからなかったと思う。
「息子君は大丈夫だよ。喉も腫れてないし肺の音も悪くない。
熱もないし、出せるお薬もないな。
熱が出たり、変わったことがあったらまたすぐおいで。」
急いで診察室を出ようとすると、医師はこう言葉を続けた。
「さ、お母さんの話を聞かなきゃね。何かあったんでしょう?吐き出して行きなさい。」

私は迷った。
大した症状もなく受診させた挙句、話まで聞いてもらうなんて図々しいではないか?
しかし笑顔の医師は私から目をそらさないし、後方では看護師達が真面目な顔で何度も首を縦に振っている。
そして病院の待合室にはいつも通り誰もいなかった。

私はこの数ヶ月の出来事を打ち明けた。
急に決まった義母との同居、激情家の義姉、相次ぐ義父母の入院、夫の体調不良。
医師と看護師は深く頷いたり、顔を歪めたり目を見開いたりながら、私の想いを受け止めて下さった。
話しながら、私は当たり前のことを思い出し、信じる気持ちが蘇った。
もし私以外の家族全員が倒れたとしても一人で支えなくて良い、私を見てくれている誰かと一緒に支えてゆくのだ、と。

その後、夫の検査結果に著しい異常はなく、義父母の回復も順調だった。
彼らはそれぞれ6月上旬に退院し、そこから本当の意味での同居生活が始まる。

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