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声優やyoutuberを育成する?専門学校が立ち上がっている、と聞いて驚いた話。

4月になってお客さんの陣容も変わり、営業で話を聞く相手もこれまでと違う中、令和の世の中がこんな風に変化しているんだなぁ、と思い知らされる場面が増えている。
ここ最近で言えば、中学や高校をこの春に卒業した若い衆が、聞いたこともないようなジャンルの専門学校へ駒を進めている話が強烈だった。
なので、今日はそういう道を選ぶ子供?青少年?への提言みたいなものを書いていきたいと思う。

そもそも、専門学校とは昭和脳のおいらだと「職を得る為に必要な技術や知識、そして資格取得の準備」の為の場、という認識でいる。
例えば看護や調理師などの類を最初にイメージするわけで、事実、現場に立つ為にまず資格が必要な職業は、ほぼほぼ何らかの専門学校や職業訓練校を経て社会へ、がメインコースだろう。
おいらも卒業したのは教育学部で、当然ながら教員免許取得が動機だし目的だったから、まぁ似たようなものだ。医者や弁護士だってそうだ。独学ではカバーし切れないものがあるからこそ受験勉強に身を晒し、貴重な青春の一部を捧げなければならない状況に甘んじる必要がある、ですよね?
だから逆に、多かれ少なかれ学校というものは、職業を得る為に存在していると言い切ってもいい。
長々と前置きを書いてきたが、世の中とはそういう風にできている、と理解していただければ幸いだ。

●「そんな専門学校」が増えているって?
さて、そういう感覚でいたおいらの耳に、この春飛び込んできたのが「資格無しで始められる職業」の専門学校の存在だ。
例えば、声優専門学校。
世はアニメブームが続いているが、その中で声優がアイドル化して大人気になっているとのことだ。だから自分も、ということで将来の声優業を夢見ている若人も多くなっているらしい。
そこで、例えば声優として必要なスキルを教える専門学校が立ち上がっていて、中学の次のステップでとか、高校卒業時や中退してでも、そうした施設へ「入学」するケースもあるのだそうだ。
夢を叶えたい、という意味ではニートを目指すより遥かに生産的だし、何らかの知識や経験を得ることはその後の人生においても大事な財産になるとも思えるので、その点では賛成だ。
しかし、問題は1年なり2年なりを過ごして卒業した後、声優事務所に入所する部分からが自力になる事だ。もちろん、最近はテレビアニメなど大きなメディアのコンテンツ以外にネットゲームや企業PR動画、底辺まで見れば同人ソフトなど、声優が求められるケースは増大しているはずなので、仕事にありつくチャンス自体が枯渇しているわけではないらしい。
とはいえ、声優として生きていくことは相当に厳しいもののようだ。
何しろ、ニーズが100しかないのに、現状はフリーも含め1万人もいるのが声優業界の実情なのだそうで、特に今は新型コロナウイルス禍の影響で広告の出稿レベルから減速しているわけで、100の方は80レベルに下がっているのに、声優の数は増えるという需要と供給のバランスがどんどん崩れていく最中にある、という話も聞いた。
そんな状況に、二十歳そこそこの声優志望たちが放出されて、果たしてすぐに最初の仕事へありつけるものだろうか?

まぁ、もちろん「それでも私は挑戦したい」ということなのだろうけれどね。

また、仮にオーディションなど実力を試す場があり、事務所に入所ができても、結局仕事が回ってくるのは最初の数年だけというケースがほとんどらしい。
というのも、その期間は売りの単価が安く設定されているので、起用する側もスキルより価格の面で新人を選択する傾向が強いのだそうだ。だから、新人から中堅に移る段階でパタリと仕事がこなくなるのが常で、ほとんどの声優がそこで引退を決める、というのだ。かつての自分がそうだったように、後からやってくる新人に安さで負け、仕事をさらわれ終わり、なのだそうだ。残酷過ぎる話ではないか。

当然、コンビニバイトを続けて次の仕事を待つ声優もいるようだし、もはや仕事を選んでいられない、と同人のエロゲームソフトに声で出演して凌ぐこともあるのだそうだ。
だが、そんな厳しい生活に耐えかねて転職へ舵を切ろうとした時、さらなる試練が待っている。なぜかと言えば、声優としてのキャリアを生かせる別の職など、この社会にはほとんど存在しないからだ。
例えば、経理事務に求められるのは声の良さや活舌ではなく、簿記の資格だったり仕分けの何たるかを理解している点が上だ。営業なら、確かに声はセールスポイントになるかもしれない。それでも絶対に必要なスキルではない。商品知識の豊富さや深度、見積の確かさ、顧客ニーズをサルベージできる洞察力、それらの方が採用担当は遥かに強く反応を示すだろう。中途採用は自社の為に何ができるのか?が最大の焦点で、声優の世界はそこからあまりに離れすぎている。

更に言えば、学歴だ。
無論、大学を出ていないという意味ではない、あまりに声優専門学校が汎用性の低いもので、言い換えれば「尖り過ぎて」つぶしが効かないのだ。しかも受験もしていないので、同い年なら知っていて当然の数式や英文法、歴史上のポイントなど「試験に出る」知識を知らない、と。それはつまり、この社会で生きていく上で抑えておかなければならなことが欠落しているわけで、尖っている、つぶしが効かないとはこの部分を指すものでもある。
企業は、新卒採用であっても現場で方程式とはなんぞや、などという基礎の部分は教えないものなのだ。だからこそ、知っていて当然が通じない人間の採用を見送る、と。手間だけがかかって生産性が上がらないから当然なのだ。
というか、履歴書に「なんたら声優専門学校卒業」と書いて、そもそも学歴として認めてもらえるものなのだろうかねぇ?おいらもサラリーマン時代に人事を10年ほど担当したが、たった1度だけ元俳優という未経験のプログラマ志望が面接に来たことがあるのだが、彼の履歴書は高校卒業で学歴が終わっていた。俳優養成学校に3年?通っていたという話だったが、それは転職時に学歴とは書けない、が理由だった。
つまり、・・・そういう代物という見方なのだ、声優専門学校もね。

●youtuber専門学校?はい?
やっと本当に書きたい部分に筆が進んだ。
そう、聞いた話で一番驚いたのが、youtuber専門学校の話なのだ。とにかく真っ先に思い浮かんだのがこの漫画だ。


都立水商!-wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%83%BD%E7%AB%8B%E6%B0%B4%E5%95%86!


詳しく説明する必要はないと思うのだが、歌舞伎町のキャバクラで働く女の子を養成する都立校で起きるドタバタコメディという内容で、ギャグのキレ味云々以前に、設定のありえなさで記憶している漫画だ。
つまり、いかに「食っていける」youtuberになるか、のノウハウを教える専門学校が実際にあるんだ、というのだ。ファンタジーでも妄想でもなく、現実にこうして生徒を募集しているのだよ。


バンタンクリエイターアカデミー 専門学校
https://creatoracademy.jp/


確かに、ニコニコ動画からyoutubeに動画SNSのメインストリームが移り、ヒカキンやはじめしゃちょーといったyoutuberが大人気となったことから、彼らの動画を見ている小学生もこんな事態になっている。


小学生がなりたい職業ランキング「ユーチューバー」は男子2位、女子4位
https://benesse.jp/juken/202101/20210106-3.html


なので、専門学校が運営され始めているのも時代の流れということなのだろう。
とはいえ、だ。
そもそもyoutuberとは職業なのか?疑問はそこから始まるのだ。同人誌で漫画を描いていました、漫画家歴10年です、と言われても困ってしまうのに似ているとしか思えないのだが・・・。

先日、児童ポルノ法違反で逮捕された元youtuberワタナベマホト、彼は引退しているので現在進んでいる検察の手続きが終われば、職を探して面接へ向かうのだろう。だが、その際に提出する履歴書に、彼の約10年に渡る活動を、企業側が職歴と認めるのか?そこが最大のポイントなのだ。
下手をすれば、マホトは高校を中退した後、28歳?の今まで「無職」だったとみなされかねない。しかも逮捕2回で「賞罰あり」だ。もっと言えば、動画に出まくっていたことでよくも悪くも面が割れているのだから、簡単に一社会人としての再スタートが切れるとは思えないのだ。
ある意味、youtuberという職業を選んだ後のケースを考える時に、最悪の展開としてこの道を志す人は頭に刻み込まなければならないように思う。

専門学校にも疑問が山盛りだ。
確かに、動画制作の方法は学べるだろうし、実際に学校が用意している機材で撮影から編集までを手掛けることは可能だろう。出来上がった作品をyoutubeに上げて試すこともできるのかもしれない。その点はメリットだと言える。
しかし、卒業してしまったら、そうした学校の機材を継続して利用することはできるのだろうか?不可なら、自分でそれらを用意して作業につなげなければならない。その初期投資の支出はどこから捻出する?同じ機材が準備できなければ、自分でしつらえた機材の操作方法を、また覚え直さなければならなくなるだろう。
こうなった時に、果たして学校で得たものの何割を「実戦」に生かすことができるのだろう?それなのに、支払った授業料とバランスがとれていると考えられるのか?不明な点が多すぎる。

専門学校側については、一にも二にも講師が気になる。
彼らの仕事は。ざっくり言えば「youtubeで生きていく術を教える」ことだろうが、もしそれができているなら、何も専門学校で自分が築いたノウハウを生徒へ教える必要などないのではないか?逆に、そんなものには目もくれず、毎日再生数を稼げる動画を作り、その収入で生活する道を選ぶのが普通だと思うのだが。
もちろん、撮影や編集技術を教える「実戦向き」な講義ばかりをするのかもしれない。それはそれで「ずぶ素」の若い衆にはプラスではあるだろう。しかし、動画なんて手持ちカメラの回しっぱなし、アフレコやインサートもない、の垂れ流しでも成立はするものではないか。現実的な面で言えば、PCを持たない生徒に学校で編集ソフトの使い方を教えたとして、生徒はどこでそれを使えばいい?

加えて、いつまでもyoutubeが「食える」SNSであり続ける保証もない。
十年前はブログとニコニコ動画が主流だったことを思えば、これから十年が今のままだと思う方が危ないような気がする。
アラサーになって、音声SNSのclubhouseが全盛になっていたら、youtuberのあなた、対応できます?w

ま、そういう先の話で腐心しても仕方がないかw

本当に教えるべきは、おそらく「再生数を稼げる企画をいかに発想するか」ということなのだろうと思う。そんなものが体系化されているのかは知らないが、生徒がyoutuberとして生活していくアシストを専門学校が目指すなら、まさにここを抜きにしては通れないのではないか?
そう、それがわかっているなら講師が自分で動画を作って、の結論につながっていく。とどのつまり、生徒は「そんな専門学校」に期待なんかこの時点でできないと思うべきだと感じるのだが。

●なぜ彼らは「そういう専門学校」の門をくぐる?
職業に「流行り廃り」があるのは昭和の昔から変わらない。おいらの頃ならプロ野球選手だったが、それがプロサッカー選手に変わったのも平成の空気だった。
しかし、声優にしろyoutuberにしろ、既に確立されている「普通の生き方」から「先の見えない修羅な現場」へ身を投じようとする若い衆の心理とは、結局何なんだろうか?
そもそも、卒業しても食っていけるかどうかさえわからない道へ進みたいという子供に、親もよくOKを出すものだと感心する。まぁ、最終的には実家で養ってやればいいという感じなのかもしれないが、夢を語る子供に現実を教える作業を避けているだけのようにしか見えないのだが。

ただまぁ、新型コロナウイルス禍でそもそも企業の新規採用が細い、という事情もあって、就職浪人をするくらいならyoutubeで一発当てて、という心境になることもあるのかな?とは思う。
しかし、だ。
それ以前に、楽な方へ楽な方へ逃げているだけのように思えてならないのだ。勉強したくない、受験のプレッシャーがキツい、資格をとる努力が面倒だ、からの学費さえ払えば受け入れてくれる制約がない「そんな専門学校」に駆け込む、みたいなね。
更に言えば、学校も仕事もない「真に行き詰った状況」を先送りにする為の「そんな専門学校」という言い方もできるのかもしれない。

だが、同情はできない。
正直に言って、受験勉強から逃げるメンタルの奴が声優で一旗あげるとか、youtuberでタワマン居住、なんてハッピーエンドには辿り着けないと確信できるのだ。
実際の話、そうしてモラトリアムで時間を無駄にしている間に、同級生は実社会で生かせるスキルを手にしているかもしれないし、資格に手をかけているかもしれない。確実に差がついてしまっている点をどう考えているのだろう?youtuber生活が社会的には周回遅れになっている、そういえば何を言いたいのかが、よりはっきりわかるだろうか?
「そんな専門学校」は、自分から周回遅れになりに行くようなものだとおいらは思うのだが・・・。
爺が何を言おうが若い衆の人生だ、どうやって年を重ねていくのかは各人の自由だ、もちろん、それを否定するつもりはない。

だが、逃げずに戦ってみろよ、と思う。そうして初めて自分にできること、できないことが見えてくるってものでもあるのだよ。
その時に、改めて夢をどう育てるかを見つめることだってできるのでは?とおいらは思うのだ、若い衆よ。

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