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珈琲が飲めるようになったのは【詩】

珈琲が飲めるようになったのは
あの豆のまろやかな旨みを知ったからかもしれない

珈琲が飲めるようになったのは
コーヒーを漢字で書けるようになったからかもしれない

珈琲が飲めるようになったのは
舌がちょっとだけ鈍感になったからかもしれない

珈琲が飲めるようになったのは
悲しみにすこしだけ敏感になったからかもしれない

珈琲が飲めるようになったのは
その香りに懐かしさを覚えるようになったからかもしれない


君の面影を探しているうちに
慣れてしまった苦味




珈琲が飲めるようになったのは
紅茶にすこし飽きてきたからかもしれない

珈琲が飲めるようになったのは
背伸びをしなくても届くようになったからかもしれない

珈琲が飲めるようになったのは
あまいものが重たく感じるようになったからかもしれない

珈琲が飲めるようになったのは
もっとにがいものを知ったからかもしれない


大人という字に違和感を覚えても 黙っている
諦めと穏やかさはよく似ている



珈琲が飲めるようになったのは
実家の猫が死んだからかもしれない

珈琲が飲めるようになったのは
みんな飲んでいたからかもしれない

珈琲が飲めるようになったのは
ごめんがいえるようになったからかもしれない

珈琲が飲めるようになったのは
ひみつを知ったからかもしれない



余分な言葉を流し込んで
手放してゆくことを味わう
僕がここで消えてしまっても
街は止まらない


珈琲が飲めるようになったのは



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