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美術館行ってきたよん

ついこの間、原田マハさんの『常設展示室』を読んだ。
いわゆる短編集のような構成になっており、話に出てくるどの主人公も皆美術館に関係性を持つ人物であった。

各登場人物が話を跨いだ関係性を持っており、それぞれの話における主人公にフォーカスした背景描写が克明に描かれていて、全員に同じように感情移入してしまった。
毎回話の終盤は、間違いなくと言って良いほど感動してしまうものだから、電車の中で何度か泣きそうになった。

1冊の『常設展示室』を通して、この上なく美術館に行きたくなってしまった。
ということで思い立ったが吉日!!であろうと思い、美術館に足を運んでみたのだ。
今回は学校帰りだったため、学校から比較的近い東京オペラシティ アートギャラリーに行ってきた。
大学生になってからというもの、一気に行動範囲が広がりひとりで行動する機会も増えた。ひとりで行動する時は誰とも会話を交わす必要もなく自分のことだけを考えていればいいのでとても楽だ。

とまあながながと前説を話したところで本題に入る。そう今回の話は美術館に行ってきた!!ということだ。
美術館と聞くとなんだか高尚な施設で、所謂文化を大切としたお堅いところなのかな〜と漠然に捉えていたが、全然違った。
めーーーーちゃ気軽に行けるし、静かで涼しくてサイコーだった。

そしてなにより作品が超ド級によきすぎる。

今回、東京オペラシティ アートギャラリーでは今井俊介展が催されていた。
おそらく中学生の美術の教科書だと思うが、何故か私は今井俊介さんの存在を知っており、1度実際に作品を見てみたいなと思ったのも足を運んだ理由の一つである。

いざ作品を目の前にしてみると、圧倒されてしまった。色がダイレクトで押し寄せてきてまるで色に溺れてるかのような感覚を受けた。濁りのない鮮やかな色の組み合わせに立体感を感じたが、美術作品を日頃から摂取していない自分のその感覚は正しいのかすこし不安に感じた。またその感覚は正しいのか、何故立体的に感じたのか、その理由を知りたいな〜〜〜と思っていたら丁度パンフレットに載っていた。

今井氏は作品にしたい色の組み合わせなどコンピュータ上で組み合わせ、それをプリントアウトし、写真に収めることで構図を決定し作品を作り上げているそうだ。だから、作品に立体感を感じたのだ。また、ボーダーによってあちら側の別の色が見えていることも立体感を際立たせる要因になっているのかなとも考えた。

ぱっと見ではただの色の組み合わせで、抽象画のように見えるものも、実際では現実に存在した物体という具体を描いているのだ。
この作品の段階としての層にアートを感じた。作品から作者の意図や感性を読み取り作者の熱量などを読解する、一種の快楽を感じた。

静かな空間で作品と一体一で向き合うという経験を通し、自分とも対峙できた気がする。以前「26時」で話したように、家でひとりで観る映画と似ているようであった。

自分の中の真の自分と対峙し己を見つめ直す時間は、創作時の"それ"であり芸術の一端であるように思える。
自己を反芻し、個々の思想を練り上げる作業は瞑想にも似たようであり生活をより豊かにするものである。
映画や小説、美術を通して自らを見つめ直す作業は芸術の一端ではなく、案外文化を摂取する過程における本質なのかもしれない。

未だあやふやな存在である自分に嘘をつかず、正面からどっしりと構え自分を受け止めて行きたいものである。



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