【京都】祇園大鳥居
春の陽ざしがきらめく桜花の候、 祇園社 の表参道に建つ石の大鳥居を描いた一枚です。
この大鳥居は、江戸時代初期 正保三年(1646年)に建てられました。寛文二年(1662年)の大地震で倒壊しますが、寛文六年(1666年)に補修再建され、現在に至っています。
◇
鳥居には「感神院」と書かれた扁額がかかります。これは、江戸時代まで祇園社が神仏習合の寺院「感神院」であったためです。明治維新の神仏分離政策により現在の「八坂神社」になりました。
江戸時代後期(安永年間の頃)の祇園社の様子を描いた図があります。
右下に見える鳥居が、貞信が描いた大鳥居です。表参道から鳥居をくぐり、楼門を通って境内へと入ります。
大鳥居の奥に見える赤い建物が楼門です。
私たちが「八坂神社」と聞いて一般的にイメージする赤い建物は、四条通りに面した西楼門で、上の図では左下、階段を上ったところに建っています。貞信は西楼門も描いているので、よかったら過去 note『【京都】祇園社 西門』も見てみてくださいね。👀
◇
春の日差しが少し強いとみえ、お揃いの蛇の目の日傘をさした女性たちが目を引きます。
谷崎潤一郎の『細雪』がぴたりとはまる四人姉妹です。さしずめ、紺色の着物に朱帯を締めた女性が三女・雪子、兵児帯の女の子が末妹のこいさん、茶色い着物が次女・幸子、緑の着物が長女・鶴子でしょうか。
立ち居(ポーズ)も衣装もとても美しく描かれていて、着物、帯、かけ襟、半襟、八掛、帯締め、細部にまでこだわった様子が感じられます。
◇
こちらの女性は、相合日傘です。
髪には埃よけの角隠し(揚帽子)をしています。縞の袴をはいた男性が、通りすがりに二人に声を掛けていきます。尻からげの男性は、立ち止まってきょろきょろ道を確認する様子。
こちらの女性たちも、楽しそうにおしゃべりに興じています。
男性たちも世間話に余念なく、やはり少し暑いのでしょう。手にはそれぞれ扇子と日傘を持っています。
こちらの男性もなかなかのハイセンス、誰かと待ち合わせしている風です。
どの人もみんな、着倒れの京都らしいお洒落な装いですね。
いとせめて花見ごろもに花びらを
秘めておかまし春のなごりに 『細雪』より
🌸
参考:国立国会図書館デジタルコレクション『史籍集覧 22 改定』『国史大辞典[本編]』『集古十種 扁額之部』『艱難目異志』青空文庫『細雪』八坂神社Webサイト「八坂神社の歴史」「境内見どころ」「八坂神社の建造物」
筆者注 新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖