【赤本昔話】猫鼠合戦
猫又 というものあり。
方々の猫を語らい、中にも、ぶち猫、黒、赤、三毛、雉、白、虎猫 なそといふ ごろ猫を集め、世にいふ陽国に とらぞく 家に鼠といふ ぬづみ 多く蔓延る。猫無きが如くなり。
世の鼠を滅さんと謀りける。
※ 「陽国」は、南方の暖かい国のこと。
魚の串刺しを指物にする大将の「猫又」
🐱 汝れが云ふこと 器あるぞよ 合点 か
🐱 左様 ／＼ ／＼
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さてまた こゝに 福鼠 といふもありて、下の 白|鼠 云ふに
「今度 猫又といふ奴 世界の鼠を狩らんと あまたの猫を集め押し寄せる」ゆふを、
福鼠 「それこそ 一大事 なり」と、あまたの鼠を集むる。
ほかにも 白鼠、赤鼠、ぶち鼠、南京鼠、二十日鼠、こまわし鼠、どぶ鼠、などゝいふ 一騎当千 の 鼠 なり。
猫を遅しと待ちけり。
注進 ／＼ といふところ い鼠だけ
🐭 ちう ／＼
※ 「福鼠」は、幸福をもたらすという白鼠。大黒天の使いとされています。
※ 「こまわし鼠」は、こまねずみ（独楽鼠）でしょうか。
※ 「一騎当千」は、群を抜いた勇者のたとえ。
※ 「い鼠」は、いえねずみ（家鼠）でしょうか。
餅の 纒 を脇に立てる大将の「福鼠」
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案に違わず、猫又 押し来る。
双方戦いしが、猫又勢 屈強の射手をすぐり、鼠捕りの竹の弓を張り、散々に 射たてける。
待ち事 受けし 鼠勢、ほうほうに敗北なせるける。
🐭 いやこれはたまらぬ ／＼ ／＼
🐱 にゃんのこともねえ やつら （何の事もねえ奴ら）
○○へありやう ／＼ ／＼
🐭 返せ ／＼
いや 返すに及ばぬ
逃げろ ／＼
🐭 これでは ちうのぬもでぬ （ぐうの音も出ぬ）
逃げろ ／＼
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福鼠 かねて 謀り置きし 竿の先 紙袋つけ、南京、二十日など 小さけれど 敏捷ければ、銘々に押つ取り、然しもに。
勝ちたる猫ども 紙袋 かぶせられ、後ずさりなせけり。
🐱 どつこい しくじた （どっこいしくじった！）
🐭 なんと 奇妙動揺
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勝ち誇たる猫 紙袋には散々に負けむもんと思い、石見銀山の加勢請い、一手となり、攻めける。
鼠捕りに恐れ、ほうほうに逃げける。
🐭 やれ ／＼ たまらぬ ／＼
水の用意 ／＼
🐭 追う ／＼ 禁物 ／＼
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こゝを大事と 鼠 謀り事をもうけ、大きなる犬張り子を 先へ押し出せば さすがの猫も恐れけるあり。
🐱 犬とは 恐れる ／＼
逃げろ ／＼
🐭 あゝ 了 ／＼
なんと 肝がつぶれよふ
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大将 猫 また
「やあ 者共 恐れるな 犬は利口なるぞよ 討つてかゝれ」と云へば
あまたの猫 取つて返しさん ／＼ に
戦いすでに危うきところへ 大黒天 現れ出で、双方和睦ぞなせける。
めぜたし ／＼ ／＼
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家内安全 守せ給ふ
めでたし ／＼ ／＼
🐱🐭
筆者注 読みやすいように漢字に置き換えて掲載しています。
○は解読できなかった文字を意味しています。新しく解読できた文字や誤字･誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介／免責事項」をお読みください。📖