見出し画像

俺たち結婚できなくなっちゃうじゃない 嫌だよそんなの / ドラマ『きのう何食べた?』


ドラマ『きのう何食べた?season2』が最終話を迎えてしまった。

このカップル大好き。ずっと見てられる。
あぁ、土曜朝の楽しみが〜。(録画)


season1はゲイカップルの悩みや生きづらさについての話が多かったが、シロさん(西島秀俊)が50歳を迎えたこともあり、今回は「老いじたく」の話が多かった。
(もちろんおいしそうな料理もたくさん出てくる)

最終話は、遺産相続に関してだった。
人生の終わりを見据えた、かなり現実的な話題だ。

ほぼ家族同然だが、戸籍上は他人のふたり。

シロさんは、ケンジ(内野聖陽)に「養子縁組するか?」と提案する。養子縁組をすれば、戸籍上は親子(年長者が親)になり、遺産相続ができる。

season1でも、この方法で知り合いの年の差ゲイカップルが養子縁組をした話が出てきた。

しかし、ケンジは拒否する。
拒否の理由がなんとも切ない…

俺もお金は大事だけど 養子縁組はやっぱイヤ
だって一度養子縁組した者同士は
そのあと関係を解消したとしても
もう結婚はできないじゃない?

そうなるともし将来
男同士で結婚できるってなったとしても
シロさんと俺が養子縁組しちゃってたら…
俺たち結婚できなくなっちゃうじゃない
嫌だよそんなの

『きのう何食べた?season2』第12話(最終話)


いつか俺たちも結婚できる日が来るかもしれないから、その可能性を捨てることになる養子縁組はいや。

切ない、ケンジ…

でもケンジだけじゃなく、同じように思いながら生活している人が現実にもきっとたくさんいる。

当事者も近くにおらず、正直あまり詳しくないので、少しだけだが調べてみた。




現在、日本での同性婚は法律で認められていない。

しかし、婚姻の平等(同性婚)を実現させるために設立された公益社団法人のHPに、憲法の解釈に関してこんな説明文があった。

現在、日本政府は「同性婚制度を憲法が禁止している」との見解はとっていません。
(中略)
単に、「成立を認めることは想定されていない」というだけで、「違憲である」とか、「成立は認められない」などとは述べていません。

また、「結婚の自由をすべての人に」訴訟でも、国は、「想定していない」とは言っても、「違憲である」とか、「成立は認められない」などとは一切主張していません。
(中略)
そのように同性カップルか異性カップルかで扱いが異なることは、憲法14条の平等原則に違反する不当な差別的扱いなのです。
同性カップルが結婚できる制度をつくるために憲法改正をする必要は全くありません。憲法ではなく、民法と戸籍法ほか、法律を改正すればよいだけです。
「同性婚」を認めないことこそ憲法違反です。

「2023 公益社団法人MarriageForAllJapan - 結婚の自由をすべての人に」より引用


同性婚を禁止しているのではなく、憲法制定時に「想定してなかったから明記されていない」というだけ。時代がこんなに変わったのだから当然だ。

「解釈」って本当に厄介で、時に都合が良くて、難しい…。ルールを明文化しても、たいてい抜け道や例外があるし、完璧じゃない。(公平なAIでこの辺なんとかならんものか)

また、カップルであることを自治体が証明したり宣誓を受け付けてもらえる「パートナーシップ制度」は360を超える自治体で導入されているものの、法律で認められている「結婚」とは全く違うため、相続権は発生しない。



ドラマの話に戻ると、結局、シロさんとケンジは養子縁組は選ばなかった。

シロさんに何かあった時、ケンジに遺産を残せるように「遺言書」を作り、法務局で保管してくれる制度を利用することにしたからだ。

「死ぬまで俺と一緒にいてくれるってこと?」というケンジの質問に対して、後日シロさんはケンジにこう伝える。

俺がお前と死ぬまで一緒にいるかって話だけど…
結論から言うと やっぱり一緒にいるとは断言できない
この先俺たちに何があるか分からないから
でもさ、俺、これだけは思ってんだよ
俺の人生で俺の遺産譲ろうなんて思う相手は
お前くらいだ

『きのう何食べた?season2』第12話


全然ロマンチックではないけれど、究極のプロポーズだと思った。「死ぬまで一緒にいるよ」と言われるより、よっぽど誠実さを感じる。



ふたりの選択を見ながら、『隣の家族は青く見える』というドラマを思い出した。


メインは妊活・不妊治療に励む夫婦だったが、ご近所さんもそれぞれの悩みを抱えていて、その描き方がとても丁寧で優しく、素敵なドラマだった。

事実婚カップル、ゲイカップル、大企業勤めの夫と専業主婦に子供二人、という構成で、社会の多様性を無理やり縮図にした感じ。

北村匠海演じる「朔ちゃん」は、ゲイカップルで暮らしている若者だ。

共有スペースでの住民同士のガールズトーク中、結婚の話になるシーンで、こんなセリフがあった。(大好きなドラマなので録画をずっと残してある)

その点、同性同士は結婚できないからね
不安しかない

(事実婚だと思えばいいんじゃない?と言われて)
うーん、選択して事実婚なのと
事実婚しか選択できないのはまた違うよ
俺はできれば婚姻届みたいな拘束力のあるものが欲しいんだよね

フジテレビ『隣の家族は青く見える』
第6話(2018)


朔ちゃん曰く、法的な拘束力があれば、たとえ喧嘩して「別れる!」となっても、離婚届取りに行って、保証人のサインもらって…と面倒な手続きがある。そうしているうちに冷静になれる、いっときの感情で別れなくて済む、という理由らしい。

そういえば、『きのう何食べた?』のケンジも、いつも振られることや病気での別れに不安を抱いていた。

シロさんも「いつかケンジが出て行くことだってありえる」といつも悲観的だった。

拘束力やなんの保証もない関係性は、お互いの気持ちしか頼るところがないので不安になって当然だ。(皮肉にも、その不安定さが故に夫婦以上にお互いを大切に想い合っているように見えたけれど)

法的に認められていないカップルは、相続問題に限らず、パートナーに何かあった時に連絡が届かなかったり、病院に家族として入ることが許されなかったりするらしい。

結婚とか相続とかの話じゃなく、「それくらい融通してくれてもいいじゃん!!」という些細な日常レベルのことで。


彼らは別に、最近の風潮のように「マイノリティだって社会に認めてほしい!」「多様性を大事に!」と声を大にして主張しているわけじゃない。

ただ、愛する人と安心して暮らしたいだけなのに。
どうしてそれだけのことがこんなに難しいの?
同じ人間なのにどうして私たちには選択肢すらないの?

と言いたいだけなんじゃないかと思う。

当事者じゃないしフィクションを見て思っただけだから実際は全然違うかもしれないけど、少なくとも私はそう感じた。


「自分らしく」「やりたいことをやろう」という言葉を最近よく聞くが、好きなことを選択する以前に、生まれる前から決まっていた社会のルールのために、その選択肢すらも持てない人がいる。

「当事者じゃないから私には関係ない」
そう思っても別にいいのかもしれないけど、なんかそれは大人として違う気がする。

私は、ケンジとシロさんが堂々と結婚できる未来が来てほしい。

本当の自由、本当の尊重、
多様性の尊重ってなんだろう?

ドラマを見終わっても、ぐるぐる、考えている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?