見出し画像

withコロナにおけるプロレス興行のあり方

前回プロレスリングノアのコロナ禍での動きについてまとめました。

こちら

今回はwithコロナでのプロレス興行の変化について少し意見を述べたいと思います。プロレス興行における収入源は大きく4つに分けることができます。

1.チケット収入

収容人数制限がある状況では、チケット収入の向上は望めません。聖地後楽園ホールですら、収容人数と会場費のバランスを考えると興行に適した会場とは言えなくなってしまいます。これまでの「首都圏で電車アクセスの良い場所=ドル箱会場」という常識が崩れてきているといえますね。

あの新日本が2020年1月にドーム2連戦を行ったおかげで、4ヶ月興行を止めても年間黒字が見込めたというくらい「フルハウスが見込める大箱興行の利益」は莫大なものなのでしょう。

しかし今後は興行単体で利益を得ることを目的にする場合(新日本を除くほぼ全ての団体かな)、「会場費が安いこと」がマストな使用条件になるでしょう。アルコールなどの販売に制限が付く状態が続くのであれば、電車ではなく車のアクセスが良い場所という視点での会場選びも発生するかもしれません。

またコロナ対策という面では「移動リスク」も重要になります。これまでのように海外含めた巡業形式の興行は、そうした移動リスクや得られる利益を考えると、積極的には行いづらいかもしれません。もしかするとメジャー団体で採用されている「自前のリングをトラックで運んで設置」という方式にも変化が発生するかもしれませんね(リング運搬や維持の経費もバカになりません)。流れとしては首都圏での同一会場2days興行が増えると思います。※設営経費と移動経費削減のため。

2.グッズ収入

オンライン形式の取引には大きな影響は無いと思います。しかし会場での物販(サイン会による付加価値増)は、そもそも集客数が減るため影響は免れないでしょう。しかし現在ではYouTubeで「オンラインサイン会」を行う団体も増加しています。簡単に言うとオンラインショップで商品購入→YouTubeLIVE配信で選手がサイン→それを購入者に配送という形式です。ある団体では後楽園ホールの物販収入に近い額の売上があったようなので、グッズ収入についてはやりようによっては改善できると言えるでしょう。

3.広告収入

こちらも会場の集客人数が減少し、露出対象が減れば、収入を維持することは難しいでしょう。今後は社会的にも不景気になるのは明白です。通常の集客が出来ても、スポンサーを降りる企業が出る可能性もあります。ただし広告収入は「露出対象が増えれば」維持向上を行なうことはできます。要は「集客した人数以外に露出する機会」を作れば良いのです。※それは後述します。


4.映像配信

今後の団体運営の生命線となる重要な要素です。チケット収入の減少を映像配信サブスクリプション購入者の増加でケア。更に広告収入も「サブスクリプション購入者」という新たな露出機会増加によりカバーする。このあたりが一番想像できる部分ですね。

ただ初期投資や権利関係をクリアにするのが最大のネックではあります。初期投資は映像配信設備やスタッフ、権利関係は過去映像配信のために不可欠です。プラットフォームを作るまでのコストがかかり過ぎるため、全ての団体で導入するのは難しいでしょう。

配信からアーカイブ放送まで全てケアしているのは新日本くらいで、ノアと全日本は配信こそケア出来ていますが、アーカイブ映像については日テレとの調整が必要なため、ほとんどケア出来ていないのが現状です。

もちろんノアがAbemaでやろうとしている「無料配信でライトユーザーを掴み、より収益の高いレッスルユニバースへ誘導する」というフローも面白いです。しかしやはりアーカイブ映像をフルに収益化出来ないというのはネックでしょう。

逆に言えば映像配信についてガッチリ固めている新日本が国内団体1強として君臨しているのは自明の理かもしれませんね。

5.コロナの影響による未来

こうした映像配信前提(興行<映像配信)になると、興行における試合の組み方もかわるかもしれません。これまではビッグマッチであれば休憩時間含めて4時間程度の開催時間を見込んでいました。多くの観客を集めるにはインパクトの強いカードを沢山組む必要があるということです。

しかし映像配信の比重が高まると、それだけの長時間ユーザーを視聴させるのは難しいでしょう。実際に私もAbemaでノア中継(特に6.14と21)を見ていて「ライトユーザーの集中力持つのか?」という疑問はありました。興行としては2時間あたりが連続視聴のデッドラインかと思います。

また各試合も、これまでの「メインは30分超が当たり前」から、ネット動画視聴に適した時間(15〜20分程度)に収まるような形に移行するかもしれません。1.チケット収入で「設営費を考えるとこれからは2days興行が増えるのでは?」と書きました。おそらくですが、配信視聴に耐えうる興行形式と経費面を考えると4時間ビッグマッチから2時間の2days興行という形も増加すると思います。

新型コロナウイルスによって大きな変革を迫られたプロレス界ですが、戦後から時代に応じて変化して生き残った力があります。ファンとしてはどんな形であれ、これからもプロレス興行が続いてくれることを切に願っております。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?