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花束を君に。



金曜日です。
あっという間だったな、この一週間。

今日は、形なき魂の葬りと花束を手向けるというちょっと重めの話です。

先週、久々の友達に誘われてランチに行った。
久々だったんで、元気だった?から始まって
「私は元気だけど、、、」
と2人で一瞬間が空いて、
「サト(17年連れ添った愛犬パグ)が死んじゃってさ。」
というと、
「そうなんだ。。うちも父が亡くなって、、、」
となり、
「いつ?」
「うちは9月」
「うちも9月」
という話になった。

私は、自分から、一つ二つ、サトの話をしたけど、友達は聞役で、自分からお父さんの話をする事はなかった。

誰かに聞いてほしかったり、話しても良い段階なら、きっと、自分から言うと思うけど、自分で話したくない、もしくは、話せない状態なら話さないだろうしと思い、こちらからは何も聞かなかった。

私も、家族や身近な友達、こちらのnoteなんかには、サトへの思いを吐露しているけど、サトの散歩でほぼ毎日会っていた斜向かいのおばあちゃんや、たまに顔を合わせるおとなりさんには、サトの死を今も話せないでいた。

もしかして、、、と思われているだろうけど、どんな顔して話していいかわからない。

そのうち、どんな顔して話したら正解なのか、数こなして掴んできたら、そんときゃ、言えばいいか、ここは無理しないでいこう、くらいに思ってる。

友達とは、そのまま、数ヶ月以内の再会を誓って別れた。

以前お父さんが病気になられた話までは聞いていて、よくなれば良いねという話もしていた。

帰ってから夕飯を作りながら、ずっと考えてた。

私は彼女にお父さんの事、話す猶予も与えず、間髪入れず話をしていたかな。

つい、誰かが無理して話さなきゃという雰囲気になる余白が苦手でずっと話し続けるのが私の悪い癖。

ほんとは少しボールを投げたほうが話しやすかったのかもしれない。

話したかったかな。

どちらにしても、はいそうですか、と流せる話じゃない。

そこで、私は、彼女の許可を得てご実家にお花を送らせて頂いた。
簡単な手紙を添えて。

サトが亡くなって直後、息子と同級生の斜め向かいに住む野球ユニフォームくんには、うちのおしゃべり息子が語り、いち早く訃報が伝わった。

その夕方に、野球ユニフォームくんのお姉ちゃんが、小さな花束を持ってきてくれて、一筋涙を流してくれた。

あの子を火葬して遺骨として戻ってきた我が家は、しんと静まり返っていた。
そして、行く前に私は、サトに関するありとあらゆる機器や用品を全て片付けていた。

荒々しい息遣いの前夜は、酸素高濃度機の機械音が鳴り響き、紙オムツや薬、水や食べ物が部屋に散乱していた。

あの子が、けなげに最後の力を振り絞るために用意したもので溢れかえった部屋の中で、私たち家族は神聖な時を迎えた。

そして、亡くなって早々先ず私がやったのは、あの子の生前の痕跡を跡形もなく消すことだった。

高価な車椅子も、買いたての食器も、半年しか使っていないカートも、使いやすくて肌触りの良い紙おむつも一番底値で買えるところを探して集めた、まだ使える数々を躊躇うことなく捨てた。

「モウツカワナイカラ」

これがその理由の全てだった。

苦しさと愛しみと祈りと共に向き合ったモノたちは何もなくなり、ただの伽藍堂のようなリビングにサトには不似合いな絢爛豪華な遺骨入れがひとつ。

そこに頂いた花が飾られた。

仏事を小さい頃から大事にしてきた家で育った夫は、
「花は水と一緒なんだと。」
と昔言っていた。

わたしは、形なき魂の葬りを、何かの宗教的な慣習に囚われて、慣習だけが思いとかけ離れ一人歩きするくらいなら、囚われず、自由に向き合いたい時に向き合おうと、仏具を置くことを避けていて、サトのそれも用意するつもりはなかった。

あの子の遺骨の横に花を飾る。

不思議とそれだけで、あの子への終わることのない愛が伝わるような気がした。

生前、あの子を支えたモノたちはもういらない。

もうあの子はいないから。

だけど、あの子の形がなくなって私の中での思いの欠片になった時に、あの子の死と向き合う為の対象物としての何かは必要で、それを彩る花という存在に、初めて癒しというものを得たような気がした。

そうか、亡くなった時は、花を手向けるんだ。
世の習わしには理由があるんだな。

しばし、世の習わしに従いましょう。

サトが亡くなって、もうすぐ3ヶ月。
あれから、いくひとかがサトに花を持ってきてくれた。そして、私も亡くなってから、一度も絶やさず、花を手向けている。

花は、大事なもの失くして、もう2度と新しい写真が加わることのない、明日が訪れることのない虚無となった私の心の一部をやさしく彩る。

花を送った友達から、LINEでメッセージが届いた。

お母さんが花をとても喜んでいたこと。
お母さんもお父さんが亡くなってから一度も花を欠かしたことがないこと。

花束を君に贈ろう
愛しい人 愛しい人
どんな言葉並べても
君を讃えるには足りないから
今日は贈ろう 涙色の花束を君に

作詞作曲 Utada Hikaru


後日、彼女のお母さんから、丁寧なお手紙と自家製のトマトソースが送られてきた。
料理上手な友達のルーツが知れたような、やさしくて本格的なお味に家族揃って舌鼓😊

🍎水曜ちゃんから、いただいたワインを空けて、いただきました😄
あーおいしかった💕

それではまた金曜日にー。

by金曜日の転寝

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