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スナックキズツキで一曲歌いたい テレ東深夜の優しい名作ドラマ 何食べ、チェリまほ

心についてしまった傷は、さして大きくはないけど、
いつもより少しだけ痛くなっちゃった時に、
そのスナックの看板は目に留まるようです。

原作は益田ミリさんの漫画ですが、
原作は未読なのでドラマの感想。

カウンターだけ、昔の喫茶店のようなインテリアのスナック。
スナックキズツキのママ、トウコは原田知世さんが演じてます。

素朴なのに、品が良くて、近くにいてもなぜか遠くにいる感じがする人。
永遠の「時をかける少女」、素敵な50代の女性。

このスナック、お酒はナシ。
でもドリンクはとっても丁寧に作ってくれて、アイスコーヒーだって当然豆を挽くところから。

りんごジュースなら
丁寧にりんごをすりおろしてギュッとしぼって、
グラスに入れる氷もそれを凍らしたもの。

ココアは粉を鍋でゆっくり炒って香りを立てて、だからちょっと時間かかる。

料理も一品だけ出てくる。

じっくり煮込んだミネストローネや、オニオングラタンスープ、出来たてだから温かいまま食べるシュークリーム、などなど。

丁寧に作る手間を見てるだけで、お客はなんだか嬉しくなれる。
丁寧に丁寧に、なんて、大人になるとそうしてもらう機会ないかもしれない。

そう気づいた時にふと寂しさが込み上げてきてしまう。

「今日もおつかさん」

トウコの言葉はちょっとぶっきらぼうだけど、優しいトーンだから、その分距離を近くしてくれる。

カウンターに出されたドリンクは、一口飲むと、きっと嫌なことも全部吹っ飛んじゃうくらい美味しそう。

現れるお客は一話につき一人だけど、
それぞれ、一人一人、
お互いどこかで出会った人たち。

コールセンターでクレーマーを対処したユミ、
ユミのいるコールセンターへ家具のクレームを入れたよしみ、
バスでよしみに寄りかかって寝てしまった武雄、
上司の武雄や恋人であるユミに塩対応してしまった潤、
バイトをしているコンビニのお客さんの潤に恋している希美。
店員のよしみに、おばさん根性で商品のとりかえを頼んでしまった香保、、、などなど。

ちょっとしたことに傷ついて、
スナックにたどり着いたお客さんは、
知らぬ間に誰かを傷つけてしまってもいる。

世の中、持ちつ持たれつ。
そういうことだって知ってるから、文句なんてそんなに言っちゃいけないと、
いつも賢明に生きている普通の人たち。

傷ついている。でも言葉にするとおこがましい気がするから、ちょっと言いづらい。
トウコに作ってもらった丁寧な味がその心底に触れた時に、
やっぱり傷が疼き出す。

「何、歌う?」
スナックですから、飲みが進んで身の上話をしたら、次は歌うのです。

歌と言っても即興で歌う自分の歌。
大事なのはヘタでもいいから、気持ちよく歌うこと。

時にはギター、簡易ピアノ、アコーディオン、タップダンスで、トウコは伴奏と合いの手をいれる。ハッキリ言ってみんな音痴。

劇的な出来事はどこにもなくて、どこか間抜け。
テレ東らしい、誰も不快にならないドラマ。

テレ東の深夜ドラマにまた名作が生まれてしまったよ。
テレ東深夜ドラマには温かいストーリーが多い。丁寧に世界観が作られていて、何よりストーリーに合った役者さんが演じている。

12月の映画の日、
劇場版「昨日何食べた?」を観にいきました。
これもテレ東の深夜ドラマ。

原作を読んだのは15年くらい前で、
まさかベテラン俳優の二人がドラマ化をするとは思ってなかった。ありがたやー。

でもこの日、私は内臓が疲弊してました。連日用事が重なって昼食を抜かしていたら、胃酸でやられたのか、内臓が絶不調。食欲不振。
やたらに風が強い日で、映画館に行くまでのビル風に、お腹に力が入らなくて、なかなか前に進まない。

やっとのことでスクリーンの前に滑り込んだのは、上映開始15秒前。セーフ。

いつもの2人のおかしなやり取りを楽しく観てたら、睡魔が。。。お腹が疲れてるから、暖かいとこにきたら眠くなりました。寝ちゃダメーと思ってたけど、そういう時ほど落ちますね。

ふと目を開けると、映画館のスクリーンいっぱいのケンジ(内野聖陽さん)の幸せそうな顔。 
たまに寝落ちするも、ストーリーは繋がっていたので、きっとほんの数秒寝てただけ、なはず。
シロさん(西島秀俊さん)とケンジの愛の物語に、
たまに館内から起こる笑い声。
ほのぼのとした映画鑑賞。
場内が暗くなってから席に滑り込んだので気づいてなかったけど、
映画が終わって明るくなったら、
まわりは見事に中年から高年の女性ばかりで、なんだかそれも面白くて、
マスクの下、ニヤニヤしながら出口へ向かいました。
同志よ。

それともう一つ、
昨年の秋のテレ東深夜ドラマ、
「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」も、来春映画化されることが決定。


内向的で30年間彼女なしの会社員 安達が、30歳の誕生日から触れた人の心を読めるようになり、満員のエレベーターで一緒になった会社一イケメンの黒沢が、実は自分への恋心でいっぱいであることを知ってしまう物語。

ちょうど一年前に放送していたのですが、各回放送の一週間が待ち遠しかった。これもとても優しい物語。主演の赤楚衛二さんと町田啓太さんが役柄にピッタンコでした。

役者さんがその物語とリンクした時に生まれるマンパワーが私は好きなのです。

ではまた木曜日に!

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