見出し画像

図書館の使命と目標を策定する【Möbius Open Library Report Vol.15】

 Moebius Open Library(メビウス・オープン・ライブラリー:略称MOL)は東京学芸大Explayground推進機構のラボの一つとして、図書館と知の未来について考える活動を行っています。「『知の循環』の再構築」を掲げ、2019年から活動を続けてきました。母体となっている東京学芸大学附属図書館では、2022年から2027年の「東京学芸大学附属図書館の使命と目標」(以下、「使命と目標」)を発表したので、今回はその背景を書いておこうと思います。

「使命と目標」の概要

「使命と目標」は東京学芸大学附属図書館の公式ホームページで公開しています。短い文章ですので、ぜひ、読んでみてください。

運営方針・理念「東京学芸大学附属図書館の使命と目標~デジタル社会の教育を支える「知の循環」の再構築~」
https://lib.u-gakugei.ac.jp/about/vision

東京学芸大学の基本的な目標として、「高い知識と教養を備えた創造力・実践力に富む有為の教育者を養成すること」という、教育系大学としての目的を述べた上で、東京学芸大学附属図書館の使命として、質の高い学術情報の提供と教育研究及び学生の学修を支援する拠点の一つとして機能すること、さらに地域社会や世界に向けて成果の発信をすることを謳っています。その上で、東京学芸大学附属図書館の目標として、学術情報基盤の整備、学生の学修を支援する拠点の一つとして機能、教育現場、地域及び国際社会に貢献の3項目について、具体的な目標を定めました。
特に注目してもらいたいのが、その使命に「デジタル化が一層進展する社会において、蔵書を超えた知識や情報の共有の取組みを進めるとともに、新たな知を紡ぐ場を提供し、「知の循環」を再構築していく必要がある。」と書き込んでいることです。まさしくMOLのコンセプトである「知の循環」というキーワードが採用されています。

MOLのコンセプト

このMOLレポートでもVol.1で詳しく書きましたが、MOLでは、図書館という知を蓄えて整理する仕組みと、知を取り込んで新しい知を生み出す学びの活動の間をメビウスの輪のように循環していく姿を描いたコンセプトマップによって、図書館と学びの未来形を模索しています。

画像1

Explaygroundのラボ活動は、大学図書館の「仕事」として与えられたことをするのではなく、図書館職員の中でも手を挙げた人が自由参加の形で集まり、自発的に活動を行っています。Misletoe Japan合同会社の方々やその時々にテーマに関心のある方々が集まるフラットで非公式な組織です。そんなMOLのコンセプトが、大学図書館の公式な「使命と目標」に採用されたのは、この2年半の活動の一つの成果ともいえるでしょう。

議論の過程

私(ななたん)はこの改訂案策定の事務局でしたので、ここに至る過程を少しだけ書いておきます。この「使命と目標」は2016~2021の改訂版になっています。2021年3月の学術情報会議(部局長の先生方が参加する大学の図書館を運営するための会議)で、次期の「使命と目標」の検討が始まり、委員の先生方がこれからの図書館の在り方について意見交換してくださいました。いつもの会議と違って、どの先生からも各専門分野の見地から深く示唆に富む意見をいただく機会となりました。
それを受けて、図書館職員全員が「夏休みの宿題」として自分たちの図書館の未来を考えることにしました。ちょうど6月末に全国の国立大学の図書館が加盟する協会でも「国立大学図書館協会ビジョン2025」が発表されたこともあり、これを読みこんで、自分の仕事を見つめなおし、未来に思いをはせる機会としました。大きなエクセル表に全員の意見を集約してみると、図書館職員の中ではMOLのコンセプトである「知の循環」に強い支持が得られていたことがわかりました。
図書館職員全員の意見を学術情報会議の先生方にも読んでいただいた上で、10月の学術情報会議で最終案の検討です。紙の蔵書の良さやリアルな場所の役割も十分に理解した上で、「デジタル」という言葉をどこまで前に押し出すのかといった議論がなされた結果、キャッチフレーズとして、”デジタル社会の教育を支える「知の循環」の再構築”を掲げることになりました。MOLで模索してきたことが、公式な場で理解を得られた瞬間でした。

図書館の未来に向けて

さて、2022年からの目標を掲げた私たちは、これからも「知の循環」の再構築に向けて、大学図書館としてもMOLとしてもさらに一層の活動を続けていきます。2022年は良き未来を切り開く年にしたいものです。(文責:ななたん)

【これまでのMOL Report(抜粋)】
No.1 Explaygroundと図書館の出会い
No.6 知の創出・発信を試行錯誤する
No.10 図書館の検索とブラウジングを考える
No.12 MOLの成果を発表する
No.14 オンライン読書ルーム担当者交流会

【Explayground URL】 https://explayground.com/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?