見出し画像

Explaygroundと図書館の出会い 【Möbius Open Library Report Vol.1】

MOLプロジェクトの誕生

Möbius Open Library(メビウス・オープン・ライブラリー)は、図書館と知の未来について考えるラボとして、2019年の夏から活動を開始しています。誕生のきっかけは、大学図書館員の私(ななたん)が、Explaygroundのケンケン、フジムーと「図書館で何かオモシロイことをしようぜ!(つまり、エクスプレイしようぜ!)」と意気投合したことにありました。

最初に自己紹介させていただくと、ななたんは東京学芸大学の図書館に2019年4月に赴任したばかりの図書館員です。東京学芸大学ではMistletoe社と協働したExplaygroundというものがあるときいて、この活動にとても興味を持っていました。なぜなら、図書館が目指すところと非常に似ている気がしていたからです。Explaygroundは「遊び」を通じて学び、教育の世界で新しい価値を創造しようとしています。図書館も「本(広い意味では学術情報)」を通じて学びを支援し、新しい価値の創造に資する営みを行ってきました。今まで図書館がExplaygroundに関わっていなかったのは、図書館の活動が外からよく見えていなかったからなのかもしれません。大学の中で図書館を積極的に活用していただけるチャンスのように思えました。
Explaygroundと図書館の対話は、誰にとっても制約のない社会を目指している元ライターのケンケンと、Explaygroundのまとめ役で無類の読書家であるフジムー、そして大学図書館で本やデジタルな情報を通して図書館の未来を考えている私(ななたん)という異色の組み合わせで、slack上で始まりました。対話を重ねるごとに私の感覚は確信に変わります。「図書館は本のあるExplaygroundであり、Explaygroundは本のない図書館である。これは一緒に活動しない手はない」と。ケンケンも自身のブログに「様々な体験をパッケージできるテクノロジーが生み出されている。時間や空間をパッケージしたり、人の反応や心の動きまでもが記録できるようになってきている時代において、さらにそれらを未来に残していくための記録の方法と、それを読み解く方法には、どのようなものが考えられるのか。そして、さらにそれらが組み合わさり、新たな知の体系が生み出されていくような環境を提供する、創発を促す図書館とは、どのような仕組みなのか。過去の集積ではなく、未来を生み出していく場所。もはや、図書館という言葉では収まりきらない。もしかすると、それこそがまさにExplaygroundなのかもしれない。」と書いてくれています。

画像4


「知の循環」を再構築するコンセプト

活動コンセプトはお互いの図書館イメージや理想像をすり合わせる中で深まりました。ケンケンとフジムーには、過去の膨大な知の集積地としての図書館への期待があり、教育の総本山として「教育」に関する本を求めて全国から人々が集まってくる図書館という理想像を思い描いていました。が、大学図書館界で長く働いてきた私は、大学の研究が大きくデジタルシフトしている中で、紙の本だけの図書館では過去の古びた知の集積地となり、このままでは図書館そのものが過去の遺物になってしまうのではないか、という危機感を持っていました。過去と未来を結びつけるものは何か、未来に想いを馳せ、かつ、自ら何かを作り出す活動として何ができるか、図書館の未来を考えるということは人類の知的活動のあり方を考えることではないか、新しい知の形としてコンテナとコンテンツの関係を考えたほうがいいのではないか、図書館の本質って何なんだ、、、といった議論の末に、“「知の循環」の再構築”を目指すというMöbius Open Libraryの基本コンセプトは生み出されました。略してMOLといいます。

画像2

メビウスの輪は、図書館の輪と学び・学術の輪がつながる無限の「知の循環」を表しています。大学図書館には過去から蓄積された膨大な知の集積があり、それらは紙の本という形で受け継がれてきています。図書館の仕事は、それを収集し、整理し、保存し、提供することにあります。図書館から提供された知は、人々によって吸収され、活用され、そして、探求の成果として、新しい知が創出され、発信されます。図書館はそれを、また収集し、整理し、保存し、提供するという、知の循環を担ってきました。しかし、今日、知の形は大きく変化しています。古くは手紙という形で交換されていた論文は、雑誌に収録され、さらに電子ジャーナルへと変化しました。さらにウェブ上でオープンにアクセスできる論文も登場し、知の循環に大きな変化をもたらしています。新しい技術は知をさらに多様なものに変えていくことでしょう。その中で、図書館と学びや学術をつなぐ「知の循環」はどのように変化するのか、どのように知を集積し、どのような場所で、どのような人が関わることで、人々の学びと研究が深まっていくのか、それら全体を見渡し、開かれた世界を思い描きながら、「知の循環」の再構築を目指すというのがMöbius Open Libraryです。

MOLプロジェクトのキックオフ

MOLのコンセプトが固まったところで、MOLのような新しい活動には若い図書館員にこそ関与してもらいたいと考え、希望者には参加してもらうことにしました。ちょび、そす、ミカンの3名の仲間を加えて開催したのが2019年9月17日のMOL Vol.1のイベントExplayground Bar Vol. 14 【図書館と知の未来】です。
https://www.facebook.com/events/1161100824091251/

画像4

画像5

この日のイベントは、大学図書館の見学会から始まりました。地下書庫から始まって、1階ラーニングコモンズ、2~3階書架を案内。特に書庫の貴重資料(往来物や絵双六)については、現物を見ながら詳しい解説がありました。次に、図書館併設のnote cafeに移動して、図書館員3名から自分の仕事や考えていることをプレゼンテーションしてもらい、参加者全員でディスカッション。利用者への声がけはどれくらいが望ましいかといった疑問から出発して読書履歴データの活用へ、書架に並んだ背表紙の画像からVR空間でのサービスを発想する、デジタルだけになったら図書館員は不要なのかという不安に対してはコンシェルジュとしての役割への期待、教育大学の資料への期待や場所としての図書館の魅力など、ディスカッションの話題は様々に発展していきます。
この初回イベントの経験は、図書館の中の人と外の人がオープンに対話し、外からの刺激をもらって中の人達が考え始める良い機会となりました。そんなキックオフイベントを経て、新しいプロジェクトの検討が始まります。次の展開は次回レポートします。(文責:ななたん)

【Explayground URL】 https://explayground.com/



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?