#41 本読みました 『街を変える小さな店 京都のはしっこ、個人店に学ぶこれからの商いのかたち。』
こんばんは こんにちは おはようございます
なんだかジメジメ感がハンパなく、もうすでに梅雨の空気になってきているこの頃ですが、緊急事態宣言中でも全く変わらずお仕事に行くので正直我が家は何も変わっていない生活です。
なので読書の時間をたっぷりとれるというわけでもなく、たしか今年のはじめに毎月何か本屋に関する本を読むと言っていたのに、結局2ヶ月に1冊ペースになってしまっていることをお許しください。
今月はこちらの本を読みました。
『街を変える小さな店 京都の端っこ、個人店に学ぶこれからの商いのかたち。』堀部篤史 京阪神エルマガジン社
この本もきっとご存知の方が多いと思いますが、有名な京都の書店「恵文社一乗寺店」で長年店長を勤めていらした堀部篤史さんの著書です。
現在は恵文社をおやめになって、誠光社という個人書店をやはり京都でされています。
恵文社一乗寺店をご存知ない方がもしかしたらいらっしゃるかもしれないので(かくいうわたしも行ったことはない)、少し説明しておくと、まだ本屋は配本まかせの時代でどこも似たり寄ったりの品揃えだった時に、独自のセレクトが面白い書店としてかなり前から突出して有名だったそうです。
この本にも経緯が書かれていてかなり面白いのですが、どうもスタッフは誰も書店の流通に関しての知識がなく、各棚担当が自由に自分の好みの棚を作り上げていたようです。
途中で店長が変わり、しっかりしたノウハウを教えてもらい売れ筋ぐらいは入れないとと当時大ブームだった『ハリー・ポッター』を置いてみたところ全く売れなかったというのは有名な逸話です。
そんな伝説とも言える京都「恵文社一乗寺店」で長年店長を勤めてらした方の視点はやはり他とはひとあじ違っていました。
堀部さんが興味を持った小さな店にスポットを当てて、そこの店主に話を聞いているんですが、面白かったのは全く業種にはこだわりなく個人でこだわりつつやっている小さい店というだけで、いろんな店に話を聞きに行っているところ。
アンティークショップや、喫茶店、自転車レンタルの店、レコード屋などです。
全く違う形態の店ですが、共通していたのはどこもみんな売り上げを得るためにどうしたらいいかというところは特に重要視していないというところでした。
京都の恵文社がある地区は特別な空気がありそうで(京都自体他とは違う独自の文化がある土地ですが)、特に横のつながりが重視されるところのようでした。
その場所で当時、新しく店を開いた独立系の本屋「ガケ書房」の山下賢二さんも当初は横のつながりをそこまで意識していなかったけど、ここはそれではやっていけないと言われて即スタイルを変えたとこの本の中でも仰っています。
そういう横のつながりを大切にしながら長年生き残ってきた小さな店に共通してあるのは、自分のスタイルを客によって変えないというところ。
長年接客業に携わっているとどうしても視点が売り上げに行きがちで、何か新しい試みをやってみても反応がなければダメだったと切り捨ててしまいがちです。
でもここに出てくる店主の人たちはみんな自分がいいと思うからやる。ただそれだけという感じ。
それをいいと思うお客さんが自然についてきて、地域の店主たちの横のつながりと、その店を愛して通うお客さんたちによってずっと支えられていくという本当にシンプルなシステム。
その中でとても印象に残った言葉があって
京都の名物喫茶店「ほんやら堂」の方にインタビューした時の感想として書かれていたのですが
常連客というのは、店の運営を左右する株主にもどこか似ている。株主の影響力が強すぎると、いつのまにか店は私物化され、排他的になってしまう。
確かに、地元の家族経営の居酒屋とか、喫茶店とかもう毎日同じ人しかいなくて、一見さんはとても入れる空気じゃない店っていっぱいある。
あれってまさにこれだなって思う。
別に誰が入ってもいいはずの店なのに、勇気を出して入ろうものならものすごい痛い視線を店主にまでぶつけられてしまうっていう。
店が小さければ小さいほどこういうことが起こると思います。
大事なのはバランスなのかもしれません。
常連客はもちろん大切にしながらも意見を丸呑みにしないこと。
自分の納得する店というところを崩さないことが重要なんだなと思いました。
それから『ぼくにとっては後ろが前なんです……』
と話すアンティーク店の店主も面白かった。
これはインターネットによって急速に情報が共有され、誰にとっても物の価値が均一化してしまった現代のこの状況はまさに退化であるという意味なんですね。
売り手の美意識も買い手の美意識もそれぞれ。であるからこそお互いに刺激しながら美意識を育てていけた。
でも今は全てが数値化されて最安値、スピード重視の世界。
「ぼちぼち」やってきた昔ながらの業態は、競争によって淘汰されつつある。このままでは、美意識やこだわりのような数値化できないものは、忘れ去られてしまう。
本当にそうで、わたしもついインターネットで買い物してると送料無料とか、最短で着くとかいう文字に踊らされてるし、それ以外のところはちゃんと読んでもいなかったりして、ふと気付いてみれば貧しい買い物だと思う。
そしてネットショッピングをし始めると、次から次へあれもこれも買ってしまうことってないですか?
手軽だから買えちゃうっていうのもあるけど、多分自分の頭がその買い物に満足してないんだと思いました。
それって本当に無意味な浪費だよなぁって思った。
便利なことは間違いないけれど、それしかなくなってしまったら本当に薄っぺらい人間、世の中になっていくというのがわかってちょっとぞっとしました。
この本に出てくる店は今はもうない店も多くて、「三月書房」なんて一度行ってみたかったのだけどかなわないままだったし、「ガケ書房」も今は「ホホホ座」と名前を変えて移転しているし、他にも多分もうないお店がありそうで、現在の京都一乗寺近辺はまた雰囲気が変わってそうだけど、わたしにとってはとても読んでよかった本でした。
京都と道志村では環境は全く違うんだけど、小さい店を維持していくというところで視点の持ち方はとても参考になったかなと思います。
さぁちょっと来月は道志村で色々作業しないとまずいので、もし緊急事態宣言が延長されても、ちょっと不要不急ではなく必要事項ということで行ってきたいと思っています。感染対策は万全に。
それにしても五輪は本当に開催なのかね。
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