日吉の彼
今日は用があって日吉で降りた。
降りるとすぐに、日吉キャンパスが見える。
彼は、日吉に通っているのに、強烈な学歴コンプレックスの持ち主だった。
共通の友人曰く、彼は「私と似ているけど私よりも変な子」らしい。
私と彼は、初対面ではあるが、とある大学の文化祭に一緒に行くことになった。初対面だけど、SNSでは繋がっていたから、なんだか変な感じだ。Twitterではあんなにリプを飛ばし合うのに、実際は全然話さない。私だから?
はじめこそ、日吉に行く代わりに他の大学で授業を受けていた彼だが、哲学を専攻しはじめた彼はイキイキし始めた。
彼にはもともとその素質があったが、彼こそ哲学的ゾンビなんじゃないか?と思うぐらい、実態がなくなっていった。
3年生になると、就活やらで、周りがバタバタし始めた。
それに呼応するように、彼の引き篭もり体質はどんどん増していった。
人から聞いた噂だが、出席日数が足りなくて留年もしたらしい。
彼はどうしてるんだろう?
そんなことを考える暇がないくらい、私も一生懸命だった。
社会人になってふと彼のことを思い出したきっかけは、Facebookの投稿だった。
珍しく彼が投稿をしていたから目をひいた。
彼は、とある大学に入院することが分かった。
文末には「元気です」という一文があり、安心した。
周りと同じ道を歩もうとしたかどうかは分からないが、そこに「要らない」と彼の身体が素直に反応していることが羨ましかった。
私は周りの一部として、流れにのっていただけだったから。
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