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私の推薦図書『江戸を造った男』

今回紹介させていただくのは、歴史小説の大家、伊東潤氏による歴史小説です。

河村瑞賢

を中心とした人々が、明暦の大火後、江戸の町の再建、治水事業、鉱山開発、航路開拓と、江戸幕府全盛期の礎を築いていくまでの波乱万丈を描いています。

教科書ではたった数行取り上げられるだけですが、河村瑞賢の功績により天下泰平の世が盤石なものとなり、日本は世界史上まれにみる長期の平和を謳歌したとすら言えます。それほどの大人物なのです。
しかし、彼はあくまでも幕府の裏方として、目先の欲ではなくそのはるか先の「大欲」を満たすため、数々の難題に挑んでいきます。

ここで描かれているのは、河村瑞賢の大局観、行動力、何より人としての「大きさ」です。
彼は、目先の金銭欲や名声欲といったものを超越した「大欲」を見ています。
それは、「人々のために尽くし、お天道様に恥じない仕事をすれば、いずれ自分には天地の運気が味方する」という信念です。

彼の信念と、それに引き寄せられた人々が織りなす社会の大変革を、伊東氏の卓越した描写力で描ききっています。
何より過度に目を引き付けるような表現の誇張もなく、歴史的な経緯を細かく考証した上で、人々の心情をつぶさに描いているその手腕は素晴らしいものがあります。読んでいて、その情景が目に浮かぶようです。

「リーダー」とは何か、という問いと同時に、「国を造る」とはどのようなことか、そして「生きる」とは何か。そこまで考えさせられます。

目先の利害に追われ、百年の計を見失い、汲々とする現代社会に生きる人たちに、生きる意味とは何かを改めて問うために是非読んでほしいと思います。

内容を細かく書いてしまうとネタバレになるので、紹介はこれくらいで…。
江戸時代の歴史に関心がある方、経済史に興味がある方、生き方に迷っている方、全ての方にお勧めします。


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